長年ヨーロッパの個人が所蔵していた若冲の巻物「果蔬図巻(かそずかん)」が昨年日本へ里帰り。福田美術館の開館5周年に合わせて京都で初公開される。同時に、所蔵する若冲のほぼ全作品や若冲に所縁のある人物の作品も一挙公開!(ライター/和多亜希)
巧みな色使いや構成に見飽きることがない。若冲の魔力!
ニュアンスある色彩の野菜や果物が約3mの絹地に描かれた「果蔬図巻」は、どこを切り取って見ても美しい。レンコンやナス、クワイ、ミョウガ、ユズといった馴染みのある野菜や果物が、淡い色合いやグラデーションなどで瑞々しく描かれ、美しくもほのぼのする作品。
なかにはパッションフルーツやジャックフルーツ、ライチといった南国のフルーツも描かれていると推定されている。少し不格好なカタチや虫にかじられた葉っぱ、傷んでいる様子なども見て取れ、その際立つ画力に唸ってしまう。若冲70代の作品。
若冲の旅絵巻も同時公開。拓版画という、白と黒の世界
若冲の風景画に大典和尚が漢詩を添えた、2人合作の拓版画「乗興舟(じょうきょうしゅう)」。幅28㎝、長さ9mを超える大作で、京都の伏見から大阪の天満橋まで舟で川下りをした淀川沿いの光景が描かれている。白と黒の世界とはいえ、美しいぼかしやグラデーションは見応えがあり、大典和尚は詩の中でその場の音や色を表現しているという。旅の軌跡はパネルで解説されているので、絵と比較しながら鑑賞したい。
若冲の数々の作品に惚れ惚れ。ファン垂涎の作品揃い!
繊細で大胆な筆遣いや自由で遊び心に溢れた構図など、若冲の魅力は一言では言い表せない。若冲最初期の名作「蕪に双鶏図」から晩年の作品まで30点が一堂に展示され、圧巻だ。
曽我蕭白、円山応挙の作品も見応え十分
若冲と同時期に京都で活躍した、人気絵師の曾我蕭白、円山応挙の作品も展示。彼らは狩野派の手法を学んだ後にそれぞれ自らの表現を追求。二人の虎図が並んで展示されているコーナーもあり、比較しながら鑑賞できるのも面白い。