ミシュランガイドでも持続可能なガストロノミーに対してグリーンスターを授与するなど、サスティナブルに注目が集まる近年。セント レジス ホテル 大阪では魅力溢れるサステナブルダイニングを不定期で開催。(ライター/和多亜希)
サステナブルな食事をいただくと気づく食の豊かさ
サステナブルな食事というと、地産地消、オーガニック、旬の食材を使うことが良く知られているが、食材を使い切ることはもちろん、廃棄食材や規格外食材を使ったり、認証済の原材料を使ったりすることも重要とされている。これはイタリア発祥のスローフードと考え方が似ているように感じる。スローフードはその土地の食文化を守ることを目的とし、「おいしく健康的で、環境に負荷を与えず、生産者が正当に評価される食文化を目指す社会運動」(日本スローフード協会)。その土地ならではの豊かな食材を生かした料理をいただくことがサステナビリティ(持続可能な社会)への配慮と考えるのであれば、そんな素晴らしいことはない。
セントレジス大阪で始まったサステナブルダイニング
セント レジス ホテル 大阪のイタリアンレストラン「ラ ベデュータ」では数年前からオーガニック認証のオリーブオイルや、地産地消食材、これまで食用されなかった経産牛の使用など、サステナブルに積極的。そんなレストランが、オーガニックシャンパンで名高い「テルモン」とコラボレーションディナーを開催。さらに持続可能な食の未来実現に向けた「リレーションフィッシュ」のメンバーである大阪の懐石料理「雲鶴」ともコラボレーション。サステナブルな食の提供への歩みを進めている。
サステナブルに取り組む「テルモン」の新たな試み
有機栽培のブドウからのみ作られるシャンパーニュ「テルモン」。テルモンの環境への配慮は栽培方法だけでなく、木箱包装撤廃やリサイクルガラスによるボトルの使用、輸送方法にまで積極的にサステナブルに取り組んできた。さらに今年、ボトルの廃棄を減らす取り組みを実施したばかりでなく、史上最軽量ボトルへの切り替えを開始。軽量ボトルへの変更によって、ガラス量削減による環境負荷の軽減に加え、輸送燃料も削減できるという。
コラボレーションディナーはシェフの創意工夫に満ちている
8月に開催されたコラボレーションディナーでは、「雲鶴」より前菜、煮物椀、焼き物、お菓子、「ラ ベデュータ」よりアンティパスト、セコンドピアット、ドルチェが提供され、6種類のテルモンのシャンパーニュとマリアージュされた。テルモンのシャンパーニュと合わせるために、「ラ ベデュータ」の吉田シェフは、ソースを軽く仕上げ、ハーブの香りや、トリュフなどのキノコの繊細なニュアンスを損なわないように調理したという。
厳選した食材もサステナブルな観点からチョイス
前菜メニュー「5種の海藻とともに」では、海藻を使うことは海の環境改善に繋がるという。スジアオノリやトサカノリ、肉質で弾力があるミリン、希少なスーナ、海苔に、未利用魚のアイゴをはじめ、水質や衛生管理を徹底して養殖で育てたチョウザメ(キャビア)やクルマエビなどの厳選食材を合わせて。徹底したサステナビリティが感じられた一皿。
焼き物メニューの「大瀬戸伊佐木 照り焼き 無花果」では和歌山で養殖されたイサキを使用。大瀬戸水産の養殖の魚は国内初のJASを取得。天然魚が産卵した卵の稚魚を生簀で育て、魚の数を極力減らしてストレスを軽減。カタクチイワシから作られる魚粉飼料を減らして海洋資源だけに頼らない養殖を目指す。魚粉を減らすことで養殖魚特有の脂っこさや臭みなどを感じないうえ、脂は乗っていても身はしっとりしている。
セコンドピアットの「経産牛フィレのナポリ風ジェノベーゼ 射手矢農園 泉州たまねぎ」では出産経験をした経産牛を使用。肉の脂質が少ないためにエシャロットやニンニクと共に旨味を煮含ませることで、噛むとコクと深みのある味わいに。射手矢農産の泉州たまねぎは皮を香ばしく炒ってパウダー状にするという技法で皮まで使用している。
ドルチェの「ボネ ヴァローナチョコレートと柑橘のジェラート」で使われたチョコレートは、生産者と共に行うカカオ栽培&ガストロノミーの持続可能な発展を目指すフランスの「ヴァローナ」を使用。トリノ名物のチョコレート菓子に仕上げている。ジェラートは大阪産の河内晩柑の皮を使用。
気候変動など地球が危機的な状況において食糧危機が危ぶまれるなか、食に対する意識を高めたい人にとって、サステナブルダイニングほど刺激的な場所はないかもしれない。特別メニューが味わえ、メニューの詳細な説明を受けることもできる貴重な機会だ。