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TIMELESSPERSON

2025.05.30

いとうあさこ「(大宮)エリーと私。とにかくよく飲んで、喋って、笑った 」

タレント・芸人として活躍するいとうあさこさんが日々のあれこれ、想いを綴るエッセイ。【連載「あぁ、だから一人はいやなんだ。】

いとしのエリー

大宮エリー。彼女との出会いは何だったかな。おそらく何かの番組で一緒になって。正直そこからどう喋ってどう仲良くなったのか覚えてないけど、気づいたら仲良くなっていた。お互い忙しくてなかなか時間が合わず、「これじゃあ一生会えない!」と、家が近かったのもあって、ホントにちょっとだけでも会って飲む“30分飲み”を唯一実現した貴重な相手。

2013年、MISIA「幸せをフォーエバー」MVの監督をしたエリー。“家族ってなんだろう?”から始まるこのMV。東山さんと吹石一恵さんが演じる新郎新婦の結婚式で、家族、友人、同僚など参列者たちがそれぞれの思い出と思いを嚙みしめていく、そんな作品。その撮影前日に「あさちゃん明日、横浜来られる?」の連絡が。どういう経緯か知らないですが、まさかの新婦の幼馴染役のご依頼。吹石さんの年齢を考えるとかなり無理がありますが、そこはエリーの頼み。行かせていただきました。そして出来上がった作品にはエリーの描く人間関係の強さ、温かさ、優しさが存分に詰まっていて。観るたび胸を掴まれ、号泣してしまう、とてもとても大好きなMV。

そんな彼女と今年1月にご飯した。体調もだいぶ悪そうだったけど、「赤ワインならいける」と言うので二人でチビチビ飲みながら、ちょっとお肉なんて食べたりしながら、いろんな話をした。春になったら、なんて話もしていた。4月17日、ふとエリーに「それにしても暑い寒い大変な春だねぇ」とLINEした。まったく既読にならず、これが虫の知らせと言うのか、なんだかめちゃくちゃドキドキした。そのLINEが動いたのが6日後の23日。パッと見えた文字。「大宮エリーのLINEから突然失礼…」。ああいう時って何故だか身体が固まってしまい、すぐに携帯を開けない。奇しくも5年前の同じ4月23日、岡江久美子さんのニュースが入ってきた時も同じ状態になったっけ。こうしてエリーが亡くなった事を知った。

さて。今日はここから始まった、連続“うっかり”バタバタ事件のお話を。

私は数日後のお通夜の為に、久しぶりに喪服を引っ張り出した。付いていたクリーニングのタグには2018年12月28日の文字。この間、お別れした方は何人もいるけれど、コロナ禍でお葬式などなかったのだ。7年半ぶりの喪服をドアの上にひっかけて、風を通しておく事にした。

お通夜当日になってスカートの裾がシワシワな事に気づく。奥からスチームアイロン引っ張り出した。これまた全然使ってなく、スイッチ入れてもウンともスンとも。水の量が少ないのかな? 足してみる。久々過ぎてスチームの穴にカルキとか詰まっちゃったかな? 拭いてみる。スイッチON、OFF繰り返したり。あらゆる可能性を試していると、急に本体からガンガンガンの爆音。え?爆発する? 急いでスイッチOFF。一旦諦めて、霧吹きでスカートに水をかけドライヤーを当ててみた。ただ近年のドライヤーは風が優しく、そんなに熱くならないから全然ダメ。ふと取説を見ると、さっきのガンガン音の例が載っている。しばらくガンガンさせておくとスチームが出る、とのこと。勇気出してスイッチON。ガンガンガンガン。怖いからちょっと離れて様子を見る。すると、シューーーーー。出た!出たよ! シワ伸ばし、無事完了。

そう言えばファスナーとか大丈夫かな? だって7年着てないですから。一度背中のファスナーをおろしてみる。固い。全然動かない。何回かやったら少しなめらかになるかと、ファスナーを上げ下げしてみた。でもスムーズにいかない。こんなに固いと一人では上げられない。…って言うか…入るのか? 一度着てみる。ワンピース型の喪服を着ている途中で、感覚的にわかった。入らない。ファスナーの固さとか関係なく、絶対に入らない。時計を見ると、家を出る時間まで2時間半。急いで一番近い百貨店へ。今日着る旨を伝え、とにかく入るもの、そして出来るだけシンプルなもの、とお願いした。私のボディを見たお姉さんは奥から13号と15号を持ってきた。見ると今やファスナーが前についている。なんとありがたい。まず13号から。前ファスナーのおかげで入るっちゃぁ入る。でも結構パンパン。たしか家にある喪服が13号か。ということで15号を着てみる。今の体型に、ジャスト。ジャストすぎて“今後”を考えると「また入らなくなる?」の不安が。「ちょっとキツそうじゃないですか?」「この辺り大丈夫ですかね?」など、お姉さんにいろいろ言ってみたけれど、一向に17号の話は出てこない。そうか、これが限界か。

あと家にある靴は24.5で、今25か25.5の私にはかなりキツキツ。ついでに聞いてみると、お作りは24.5までとのこと。これはもう仕方ない。家に戻ったら、1ミリでも足のサイズを短くする為に最大限爪を切って、指を折り曲げて履くとしよう。

帰り際ロフトがあったので、自宅にも不祝儀袋1枚ありましたが、アーティスト・大宮エリーのお通夜だから、とちょっとキレイな不祝儀袋を購入して帰宅。早速書こうと思ったら、今度は薄墨のインクが出ず。再び近所のコンビニへ。

ここまでもだいぶバタバタしていますが、本当のバタバタはここから。

お通夜は一人で伺いました。エリーちゃんの好きな音楽とお花に囲まれて、お別れをしました。ただ外に出ても、なんか帰る気になれず。誰かに「いとうさん」と声かけられないかな、なんて。話をしたかった。しばらくトイレ行ったり、斎場をウロウロしてみましたが、結局誰にも会えず、観念して斎場を出て少し歩いた。近くにちっちゃい公園があって、つつじがめちゃくちゃ咲いていて。花が好きだったエリーの事を考えながら、しばらくそこでぼんやりして、帰途についた。

家に着いて、今まで一度もこんな事なかったのですが、鍵がない。何度見ても、ない。レシートを見て、今降りたタクシーの会社に電話をした。「確認します。お待ちください」一旦電話を切る。他と電話中に連絡あったらいけないので、そのまま待った。15分後、「ない」でした。行きのタクシー会社にも電話。確認に時間がかかるのはわかったので、斎場にも連絡。届いてなかった。もう一度斎場行って探してみよう、と思っていたところ、マキシマム ザ ホルモン・ナヲさんからLINEが。なにやらナヲさんもすれ違いでお通夜に参列。同じくしばらく斎場付近をウロウロしていたよう。事情を話すと「まだ近くにいるから斎場見に行ってあげる!」と。ナヲさん、ありがとう。そこへ今度はタクシー会社から連絡。ありました、と。そっか。もう行きのタクシーで落としていたんだ。ただそれが三鷹の会社で。鍵はまだドライバーさんの手元だろうから、営業所に届くのは夜遅くか? 明朝一番に取りに行けばいい? 今夜はホテル泊? 大久保さん、いるかな? いろんな事を考えながら「どうしたらよいですか?」と伺うと、なんと「今ドライバーがお客様の乗車場所の近くにいます」と。乗車場所? つまり我が家の近く。「います!そこにいます!」すぐにナヲさんに電話。「本当にすいません!ありました!」そしてどちらからともなく「献杯、しませんか?」

私はタクシーを待っていたので、ナヲさんがウチの方に来てくださることに。私はマンション近くのベンチに座った。喪服の女がボーッと座っているのは目立つようで、やたら人に見られた。少しして目の前にタクシーが。優しきドライバーさんが鍵を持ってきてくださった。ああ、本当に感謝。そしてその後すぐ、ナヲさんも到着。まさかのナヲさん、翌日人間ドックだそうで。近所のお店で小一時間だけ飲むことに。

実はそもそもナヲさんと私をつないでくれたのがエリーだった。我々は元々面識はあったのですが、連絡先は知らず。それを何かのタイミングでナヲさんがエリーから私の連絡先を聞いてくれて、LINEが繋がったのです。しかもずっと飲みたいね、って言っていたけどなかなか合わず、実現出来てなかった。それがこのタイミングで。なんかもうこれ、鍵失くしたのも合わせて、見事にエリーに引き合わせてもらったね、と二人。もう一度、献杯。

昔、エリーの個展「My favorite resort」見に行った時、薄い白シャツ、ゆるズボン、つっかけで行ったら「リゾートがテーマだからその恰好だよね?」と言われたので、「いや、『愛していると言ってくれ』の時のトヨエツ」と返したら、ずっと笑ってた。ウチで飲んだ時は、怖がりで電気全開の私の部屋を見て「明るすぎない?」と間接照明の使い方を教えてくれた。とにかくよく飲んで、喋って、笑った。あと半年ちょっとで50歳だったのにな。そん時はまたお祝いするね。エリー、マイラブ。ありがとう

いとうあさこ

【本日の乾杯】
エビのすり身揚げ。大好きなタイ料理。それにしてもこれ、握りこぶしより大きい。なので半分に切って、だいぶ冷まして、大量のキャベツの千切りといただきます。飲み物はもちろんシンハー。

※この記事は幻冬舎plusからの転載です。

TEXT=いとうあさこ

COOPERATION=幻冬舎plus

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