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TIMELESSPERSON

2025.05.31

作詞家・小竹正人。数十年ぶりに‟飴もなか”を食べて思春期の芽生えを思い出し、胸熱になる

さまざまな経験、体験をしてきた作詞家 小竹正人さんのGINGER WEB連載。豊富なキャリアを通して、今だからわかったこと、気付いたこと、そして身の回りに起きた出来事をここだけに綴っていきます。【連載/小竹正人の『泥の舟を漕いできました』】

第38回「飴もなかって知ってる?」


ピコ(9歳)に「おだちゃん、飴もなかって知ってる?」と聞かれた。
知ってるも何も、飴もなかは私の出身地の新潟県の銘菓で、パリパリの薄い皮の中にねっとりした水飴が入っているもなか。調べたら、昭和6年創業(約100年前)の老舗の和菓子屋の看板商品。
私が幼い頃に食べていた地方限定の素朴なお菓子(新潟以外で売っているのを見たことがない)を、なんで東京生まれ東京育ちのピコが知っているのか疑問に思い、逆に「えっ、ピコはどうして知っての?」と聞き返した。

なんでも、数多の有名インフルエンサーたちが飴もなかを半分に割ってびよーんと伸ばす動画をSNSで発信していて、「私の友達もみんな知ってるけど誰も食べたことがないの」とのこと。どうやらめちゃくちゃバズっていたらしい。
そうだった。飴もなかは半分に割って伸ばすと、水飴がびっくりするほど伸びてすごく綺麗に広がる。そして、その半透明の水飴の向こうの世界を見て楽しむのが醍醐味でもあった。

飴もなかで、私には忘れがたい強烈なエピソードがひとつある。
あれは私が小学生だった頃。学校帰りに通り掛かったバス停に高校生の男女が座っていた。私が彼らの前を横切る瞬間、男の方が、飴もなかをびよーんと伸ばし、隣に座る彼女に「あーんして」といって、彼女の口の中に水飴を入れたのだった。彼女は恥ずかしそうな顔をしながらも、あーんと口を開けて、水飴を口の中に入れ微笑んでいた。

私はそれまで、「あーん」というのは、大人が幼い子どもにやる行為だと信じて疑っていなかったので、若い男女がそれをやったことに度肝を抜かれた。恋愛真っ只中の甘い甘い飴もなか。
恋とは何なのか、全くわからなかったあの日。高校生カップルの飴もなかイチャイチャを目撃して、動悸とともに訪れたわずかな思春期の芽生え。きゅん。


あ、話が逸れた。幼い頃からあれがほしいこれがほしいといったことがないピコが、珍しく「食べてみたいなあ」とつぶやいたので、おせっかいな私は、すぐさま新潟に住む姉に電話して、「飴もなかって普通に買える?」と聞いた。
「突然大人気になって、いつも売り切れてる。お取り寄せもできない状態」とのこと。恐るべしインフルエンサーの影響力、恐るべし若者や子どもの拡散スピード。
「でも、早い時間にお店に行ったら、お1人様1箱限定で買えるみたいだから、明日行ってみる!」と姉が意気込んだ。そう、私も姉も、いいんだか悪いんだか、誰かが入手困難な何かを欲しがっていて、それを自分が入手できると知ったら、恥ずかしいくらいに張り切るタイプだ。しかも、ついこの間、私は姉にこれまた入手困難なクッキー(なんと2年待ち)を送ったばかりなので、姉はいつもに増して協力的で強火。


そんなこんなで姉から飴もなかが届いた。久しぶりに見た飴もなか。外箱には昔と変わらず、雪の中で蓑(みの)を着た少女が描かれていて、懐かしさのあまり涙ぐみそうになる(おおげさ)。しかもこのお菓子、添加物を使っていないし、皮は米粉だし、ひとつひとつがかなり小さい。こりゃあ、安心して子どもたちに食べさせてあげられる。
早速、ピコとピチャオ(5歳)は初めて、私は数十年ぶりに飴もなかを食べてみる。記憶にあるよりも、水飴が甘くなく、さっぱり。ピコとピチャオは口を揃えて「おいしい」と言いながら水飴が伸びる様を楽しんでいる。2人のこのワクワクした笑顔を見ると、幸せで天にも昇る気持ちになる私(はい、またまたおおげさ)。何よりも、私が子供の頃に食べていた地元の珍菓を、何十年も経て、東京生まれのこの子たちが嬉しそうに食べているという事実に胸熱(もういいって、おおげさ)。


目にも見えない速さでいろいろなものがアップデートされていき、古いものが容赦なく淘汰されていくこの時代を生きているからこそ、私は、昔ながらの懐かしいものにノスタルジーやロマンを感じてしまう。
まさに温故知新の飴もなか。相変わらず飴もなか強火スイッチが入ったままの姉が、これまた相変わらず「飴もなか食べさせ隊」の私に定期的に送ってくれるので、ピコやピチャオだけではなく、他の子どもたちにも飴もなかを配りまくっている私。就学前の子も小中学生も高校生も飴もなかの存在を知っている子が多いので、そりゃもう喜んでもらえる(親からしたら迷惑かもしれないが)。
ちなみに、飴もなかを渡す際に、飴もなかの歴史と現在のブーム状況の注釈を述べることを忘れない私は、「全日本恩着せがましい選手権」なるものがあったら、かなり上位に入賞する自信がある。

What I saw~今月のオフショット

岩田剛典に会った。ガンチ(私は昔から彼をこう呼ぶ)のスーパーキラースマイルは、人を救うくらいの治癒能力があると本気で思う。なんかこの人、発光していて(ホント)、パワースポットみたいな人なんです。

これが噂の「飴もなか」。令和の時代にこのパッケージ。ずっと変わらないものには、新参者が決して持てない気品と威厳が宿っていると思います。永遠にこの味とパッケージを守り続けてほしいと切に願う。

小竹正人(おだけまさと)
作詞家。新潟県出身。EXILE、三代目J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE、E-girls、小泉今日子、中山美穂、中島美嘉など、多数のメジャーアーティストに詞を提供している。著書に『空に住む』『三角のオーロラ』(ともに講談社)、『あの日、あの曲、あの人は』(幻冬舎)、『ラウンドトリップ 往復書簡(共著・片寄涼太)』(新潮社)がある。

TEXT=小竹正人

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