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TIMELESSPERSON

2025.05.20

「死なないための人間ドック」に脚本家・生方美久は一言申したい!

令和の清少納言を目指すべく、独り言のようなエッセイを脚本家・生方美久さんがお届け。生方さんが紡ぐ文章のあたたかさに酔いしれて。【脚本家・生方美久のぽかぽかひとりごと】

貧しい人から殺すな

半年ほど前のこと。人生で初めて、人間ドックを受けた。夏に連ドラを終え、少しゆっくりするつもりが予定通りには事が進まず、なぜか延々とバタバタしていた。ジタバタする足をむりやり止め、スマホのメモ機能の「落ち着いたらやることリスト」に目をやる。一番上に書かれていたのは、人間ドック。うーん。落ち着いたらかぁ、この調子だと死ぬまで人間ドックに行けない気がするなぁ。死なないための人間ドックなのになぁ。

ということで、とりあえず予約をした。健康より優先すべき仕事なんぞない。もう一回言いますよ。健康より優先すべき仕事なんぞ、ない!!!!

フリーランスの友人には特に人間ドック行けー人間ドック行けーと言いまくっている。実際受けてみて思ったけど、この「フリーランスの人間、人間ドック行かない問題」の要因は時間じゃない。お金だ。10万円以上もかかってしまった。脳ドックもしたかったけどできてなくて、それでも10万オーバー。フリーランスの若者にこれは厳しい。厳しすぎる。しかも、税理士さんに確認したが経費に計上できないそうです。身体あっての仕事でしょうが! せめて経費にさせてよ! いや、健康維持費みたいな感じで国から10万円支給して! いや、人間ドックを無償で義務化して! 無理ですよね~~~。残酷すぎ。国よ、フリーランスの健康を守って。

ブーブー言っても国はいつも我々にガン無視きめて、税金を払ってないときだけ「はいはいはいはいはい未納ですよ未納未納未納!!!oh!no!!!!minou!!no!!!! 脱税、ダメ、ゼッタイ。ハヤク、カネ、ダセ。」って文書で追い詰めるんだ。やべぇ国に生まれ落ちてしまいましたね。仕方ない。自分の身は自分で守れってことで。自腹キメ込んで全身を片っ端から検査してもらいました。年に1回受けるのが理想だと言われてますが、毎年決まった時期に休みが取れるとは限らない。次が2年後や3年後になってしまうかもしれない。そう思い、とりあえず一日で受けられるものをザーッと洗い浚い診てもらうことにした。

極度の心配性なもので、前日から震えていた。というのも、大腸カメラ(おしりの穴からカメラぶっ挿すやつ)があったので、前日からの準備や注意が必要なのです。消化に悪いもの食べちゃダメだし、19時までにご飯を済ませてその後は絶食。決まった時間に不慣れな方法で下剤を飲まないといけない。つまり腸の中をきれいにしないといけないんですね。下痢でお腹痛いときって絶対神様にお願いしますね。神様も「また下痢か~い。お願いされたとて~」って思ってそう。なんなんだろねあれ。神様お願いします。もう一生下痢になりたくありません。

案内通りに食事を済ませ、下剤を飲み、腸を綺麗にし、十分な睡眠をとり、いざクリニックへ。身長体重を測ったり、視力や聴力を測ったり、レントゲンを撮ったり、心電図を録ったり、鼻からカメラを入れたり、おしりからカメラを入れたり、おっぱいを上下左右に潰されたり、眼球に風を浴びせたり、血を採られたり。

「次こちらのお部屋どうぞ~」「仰向けで横になってくださ~い」「あ、下着すべて外してくださいね~」「あはは~くすぐったいですよね~もう少し我慢で~す」「チクッとしま~す(針が皮膚を貫く)」

あんなに初対面の他人に服従する時間、他にないですよね。

自分も職業でいうとあっち側を経験しているので、ちょっと疑問があっても「いやでもわたしがここで流れを止めると看護師さんやりにくいかもしれん……」「わかってないってバレるのなんか恥ずかしい……」と思って従っちゃうんですよね。で、「これは何を見てるんですっけ……?」と後から聞く。元医療従事者のくせにそのほうがよっぽど恥だ。

一か月くらいして結果が出た。要精密検査となった項目があった。二つの診療科の受診が必要だった。さっさと行って安心したい。そんなタイミングで人生初のインフルエンザになった。わぁ、初めてなったぁ、こんなときにぃ、うわぁ。昨年末のことです。どっかにチラッと書いたな。M-1の翌日に陽性反応が出ました。いやいやほんと優勝してなくてよかった。相方とマネージャーに迷惑かけるところでした。くるまさんおかえりなさい。

年を越す前にインフルエンザをやっつけ、体調は元に戻りました。新年早々に精密検査が必要となった項目の受診を済ませ、その結果も出た。とりあえず、すぐに治療が必要な体の不具合はありませんでした。経過観察してね~とか、気をつけてね~とかいうものはあれこれありましたが。ひとまずよかった。

残念なことに健康とはちょっと不仲な人生。手術や入院、通院の経験はたぶん人並みより多い。だからこそ人間ドック行かなきゃ! という思考になるから、それはそれでいいんだけど。

初めて行ったクリニックだったけど、施設も検査着も綺麗だし、受付の方も看護師さんもみんな優しくて丁寧。緊張してたけど安心できた。事前の案内や下剤は郵送で届くし、結果はデータで届くので、クリニックに足を運ぶのは当日の一回だけ。効率よくて助かる。人間ドックを検討している友人知人たち、一報くれたらご紹介します。

そんな素敵なクリニックだとは知らず、震えてお粥を食べていた人間ドック前日に話を戻します。ドラマの視聴者の方から、とあるメッセージが届きました。『海のはじまり』を観て、初めて子宮頸がんの検診に行ったそう。その検査の際に別の病気が見つかり、手術することが決まったと。無症状だったそうで、「ドラマのおかげで病気が見つかりました」と感謝の旨がつづられていました。よかった。病気はないのがいちばんだけど、あるなら少しでも早く見つかるのがいちばんです。まさかそんな連絡が人間ドック前日に届くとは。ないのがいちばんだけど、あるなら早いほうがいい。より一層そう思えて、意気揚々とお尻にカメラをぶっ挿されに行けました。

ドラマや映画で病気を扱うのは難しい。誤解を招きやすいし、妄想や憶測で勝手なことを言われたりもする。だけど、彼女の病気が見つかるきっかけになったのなら、書いた価値があったなと思えるようになった。無事に手術を終えていますように。その後も健やかで穏やかに過ごせていますように。

半年経った今になって人間ドックのことをここに記そうと思ったのは、この連絡を思い出したから。これを読んで「そっかぁ、人間ドック、行っとくかぁ」と思う人がいるかもしれないと思ったから。自分の身は自分でとは言うけど、こういう形で健康を支え合っていきましょう。頸がん検診は自治体からお知らせがあるはずなのでチェックしてください。無償のところもあります。会社員の人は会社で義務的に健康診断を受けることがほとんどだと思います。しかしフリーランスのあなた! 人間ドック、行ってください! お国は金銭的支援よろしく! 健康じゃない国民が増えると医療費かさむぞ! 働けないと納税できないぞ! わたしがようやく人間ドックを受けようと思えたのも金銭的余裕ができたからです。お金がないときは体調悪くたって病院行くの躊躇するんだよ。貧しい人から殺すな。

生方美久(うぶかたみく)
1993年、群馬県出身。大学卒業後、医療機関で助産師、看護師として働きながら、2018年春ごろから独学で脚本を執筆。’23年10月期の連続ドラマ「いちばんすきな花」、’24年7月期の連続ドラマ「海のはじまり」全話脚本を担当。

TEXT=生方美久

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