女性医療ジャーナリストの増田美加さんによる連載。人生の基礎になる“健やかな体”を手に入れるための最新知識をお届けします。
生理(月経)って何だか知っていますか? 月1回出血があって大変だとか、面倒だとか、思っていませんか? なかには生理痛(月経痛)で苦しむ期間と思っている人もいるかもしれません。でも、生理(月経)のしくみを知ると、不調対策や予防にも役立てられます。この記事では、生理(月経)がどのように起こるかを紹介します。
生理の出血と一緒に出てくるものは何?
子宮の内側にある子宮内膜は、妊娠するととても厚くなり、胎盤の一部になります。胎児期の赤ちゃんを育てるフカフカのベッドです。毎月、子宮内膜に受精卵がやって来て、着床する準備をして待っています。
妊娠しなければ、このフカフカのベッドの子宮内膜は剥がれ落ち、血液と一緒に腟を通り、体の外に出てきます。これが生理(月経)です。 子宮内膜は、毎月、お掃除されて新しく入れ替わるのです。
生理(月経)は個人差がありますが、平均28日前後。多くの人は25~38日の周期で、生理の出血を繰り返します。このことを生理(月経)周期と言います。
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脳から卵巣に向けてあるホルモンが出ている!
生理(月経)は、女性の体内でいろいろなホルモンが正常に、かつ周期的に、分泌されることによって起こる自然の出血で、性周期と言います。
性周期は、脳の視床下部、脳下垂体から分泌されるホルモン、そしてその指令を受けて卵巣から分泌されるホルモンがお互いにコントロールし合うことによって、正常に繰り返されています。
脳と卵巣のネットワークによる女性ホルモンの流れは、次のような仕組みです。
視床下部から脳下垂体に分泌されるホルモンは、性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)です。これが脳下垂体を刺激します。その刺激によって、脳下垂体から卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体化ホルモン(LH)という2種類の性腺刺激ホルモンが分泌されます。
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生理は、脳と卵巣のネットワークで起こる出血!
この2つのホルモンは、血液の流れに乗って、卵巣に到達し、卵胞を刺激します。
卵胞刺激ホルモン(FSH)の刺激を受けて、卵巣のなかにある卵胞は、成熟し始めます。女性ホルモンのエストロゲン(卵胞ホルモン)が分泌するのは、このときです。
そして、このエストロゲンが子宮内膜に働きかけて、子宮内膜の細胞の増殖が開始されます! 子宮内膜は、受精卵のベッドを作るために、徐々に厚くなっていきます。この時期は、“増殖期”と呼ばれています。生理が終わり、排卵が起こるまでの間の時期です。
脳下垂体からの2つのホルモン、卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体化ホルモン(LH)は、卵巣のホルモン分泌をコントロールしていますが、同時に卵巣から分泌されるホルモンによっても、コントロールされています。
これをフィードバック機構といいます。排卵や生理などの女性の性周期は、脳と女性の性器を繋ぐホルモンのネットワークによって、正常の周期を保ちながら維持されているのです。
排卵が起こるのは、エストロゲンが脳に働きかけるから
卵巣から分泌されるエストロゲンは、脳下垂体に働きかけ、脳下垂体は一気に大量の黄体化ホルモンを分泌します。
この黄体化ホルモン(LH)の刺激で、卵巣では、“排卵”が起こります。排卵とは、卵胞の中にあった卵が、卵巣の外に飛び出すことを言います。排卵して、卵が飛び出した後の卵胞は、今度は“黄体”という組織に変わります。
黄体からは、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)という2つの女性ホルモンが分泌されます。プロゲステロンが分泌されると、子宮内膜は増殖するのを止め、受精卵が着床する準備状態に入ります。
妊娠すると、黄体はさらに大きくなって、大量のプロゲステロンを分泌します。
妊娠しなかったときには、黄体は少しずつ小さくなり、14日ほどで消えていきます。
それと同時に、エストロゲンとプロゲステロンの分泌も少なくなり、やがて子宮内膜がはがれ落ちて、出血が始まり生理が来ます。これが生理のサイクルです。
生理痛、PMS、生理不順、おりものの異常、排卵痛の仕組みを知れば・・・
このように、性周期が毎月、繰り返されているのが、20代から40代前半の女性で、この時期は妊娠・出産が可能な“性成熟期”と呼ばれています。性成熟期には、この性周期によって、さまざまな生理に関係する不調が起こるのです。
生理痛、PMS、生理不順、おりものの異常、排卵痛などなど。仕組みがわかれば、その不調が起こる理由や時期、期間もわかり、対策の仕方もわかります。
私たち女性の体は、妊娠に備えて毎月毎月、体の中を整えて待っているのです。妊娠しなかったときに、整えていた体をリセットして、子宮の中をきれいにする・・・これが生理。面倒でつらい側面に目が行きがちですが、こうして生理の仕組みをひもといてみると、体のあらゆる部位の見事な連携ぶりに改めて驚かされます。きちんと知ることが、自分の体を慈しむ第一歩になるはずです。
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※この記事は専門医チームによる監修を受けています。
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