太陽の「燦燦」に対して、月の光を表す言葉と、その意味や使い方をご存じですか? 連載「言葉の森」では、日々、日本語について思考を巡らせている書画家・夏生嵐彩が、“言葉の森”の探険途中で見つけた面白い要素をご紹介。一緒に日本語の新しい側面を発見しながら、言葉の森を探険してみましょう。
太陽は燦燦。月の光を表す言葉と漢字は?
すっかり肌寒くなって秋本番になってきましたね。夏は「燦々と照る太陽の季節」であるのに対し、秋と言えば「月の季節」。中秋は過ぎましたが、月が冴えわたる気持ちのいい気候になりました。
ところで、太陽が鮮やかに輝く様子を表す言葉が「燦燦(さんさん)」ならば月が光る様子を何というかご存知でしょうか。
正解は「皓皓」。読み方は「コウコウ」です。
でもコウコウと聞くと「煌煌」の字の方が先に頭に浮かびますよね? 「煌」という字。「煌」は、元は王の儀礼の器にある玉がきらきらと輝く様子をあらわしていて、意味としては物が明るくきらめく様子を表すときに使います。
対して「皓」は「白い」という意味があり、「皓歯」(美しい歯)や「皓髪」(老人のこと)などの使い方をします。一般的には、白く清らかな皓潔の意味に用いる字ですが、それが転じて月の光を表すようになったようです。
「皓」と「煌」以外にも月の光を表す漢字がある!?
ここからがややこしい話なのですが・・・
「皓」とは別に、もともと「月の光」の専字のように使われていた漢字があります。
それが「皎」という字です。こちらも読み方は「コウ」。同じく「月出て皎(コウ)たり」などという使い方をします。ややこしいなあ・・・。
しかも、これがまた「白くあかるい」という意味もあったりして「皎皎たる白い馬」という使い方もして、皎潔なものもあらわすようですよ。(皓と何が違うん!?って思いましたわ・・・)
成り立ちの順番は辞典にも載っておらずわかりませんが、おそらく
1. 白い→白くてきれい→月の光・・・皓
2. 月の光→白い→白くてきれい・・・皎
なんじゃないかな?と思います。
いずれにしてもほぼ同じ意味&読みの漢字で「白く清らかに光る“月”」を昔から表していた類語のようです。
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太陽の光を表す漢字
そしていきなりですが皆さん。わたくし、冒頭にシレっとウソをつきました。
太陽には「燦燦」を使うと。
もちろん使います、用法としては。
ただ、鮮麗に輝いているものにはみな「燦燦」を使えるんです。そりゃぁ愛だって燦々しますよ。
燦燦の使い方はさまざまで、太陽に対してだけではないのですね。
でも考えてもみて下さい。
「月の光」だけにこんなに似た文字で2種類もあるくらいなのだから太陽にだって「燦燦」以外にきっとあるはずでは?と思いませんか?
あるんです!! それが「皦」という字!
「皦」・・・読み:キョウ 意味:白い、あきらか、きよい
ってこれもかーい!! 白って! 清いって! もうなんでこんなに全部一緒なのに漢字変えるの?って思えてならない。
ただ、この字が「皓」や「皎」と違う点は「皦皦」というように字を重ねて、明るく光り輝く様子をあらわす用法・例文を辞典や資料から見つけられなかったことです。(使うこともあるのかもしれませんが・・・)
なので類語にはなるかもしれませんが、「燦燦」の代わりには使えなさそうですね。
(仕方ないので引き続き太陽には燦燦としてもらいましょう)
よく使われるのが、「皦日(キョウジツ)のごとき」(意味:心が太陽のように白く潔白)という形で、辞典によると古代中国でも天を指さしながら宣誓、誓約のときに用いたようです。
どちらかというと色の抜けきった(漂白されたような)白で潔白・純白・明解さを表していたようです。明るく光り輝く、とは少し違った意味・表現になりますね。
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白の裏話
ああ・・・ここまで「白」の話をすると、白ってもともと「ドクロ」の形を表してるって知ってました? 怖いでしょ面白いでしょ、みたいな話になってしまいそう。
このコーナー、「言葉の森」というよりもはや沼です、沼。
日本語について考え出すときりがないですね。
色についてはまた来月話しましょうか・・・。(さすがに話が散らかり過ぎる)
▼漢字の字源や意味を知ろう!
美文字の秘訣
さて、それぞれの言葉の使い方や意味を理解していただたところですが、どの字もまったく常用漢字にないので、PCで打つのも一苦労でした。ということで、一番みなさんが使いそうな「燦」の字の書き方だけサラッと説明しましょうかね。(皓たちの立場よ)
火へん&火の書き方を解説!
火って難しいですよね・・・。クマの顔みたいになっちゃいません?
これ、最初の2個の点の向きを中心らへんにみんな集めようとするからクマ化するんですよ。
2個の点の向きは、
1. たて線
2. 1の真ん中をねらう!
このように書けばとても簡単にかっこ良く書けます。
燦の作りに関してはいつもの表を意識して、右上がりの横線の角度をそろえること。
そして、右はらいを長く書くと火とのバランスがとれます。
こんな画数の多い字、きれいに書けるわけないよ~!と諦めないで。漢字は分解すればどれもこれも似たようなパーツばかりでできています。私も「燦」なんて今日初めて書きましたよ(笑)。
それでは、また来月お会いしましょう!