日々言葉について思考を巡らせている書画家・夏生嵐彩の連載「言葉の森」。日本語の新しい側面を発見しながら、一緒に探険してみましょう。
こんにちは。各地で金木犀やコスモスが咲き始めて、すっかり秋めいてきましたね。
ところで、皆さんは「秋」の語源をご存知でしょうか。
中国から漢字を輸入する以前の「やまとことば」を紐解くと、漢字で意味が区別される前の日本語の意外な一面にふれることができます。今回はそんな「やまとことば」の素敵な一例を紹介したいと思います。
「あき」という音のイメージと意味
「実りの秋」と言われるくらい、秋は収穫の季節です。十分に満足な量が満ち足りていることから「充足する」の意味で「あき(飽き)」と名付けられたと言われています。
飽きる!? そんなネガティブな言葉からきたの?と驚いたかもしれませんが、もともと「あき(飽き)」という言葉は、良い面と悪い面、どちらも含んでいます。
「満ち足りている」という良い面と、そこから「十分すぎてもう要らない」という悪い面。今日私たちが使っている「飽きる」という言葉は後者の方が一般的ですが、実際は充分満足している意味が先にあって、いっぱいだから「もう必要ない」のマイナスの意味が生じたのですね!
やまとことば「あき」の意味
「あき」という言葉には、ほかにもたくさんの仲間があります。
・「あきらか(明らか)」→「あける」
すべてがはっきりとして、疑う余地のない様を「あきらか」といいますよね。これも「十分である」という「あき」のイメージから来ています。
そして、埋まっていたものをどかして、十分な空間をつくることを「あける」といいます。
また、暗く覆っていたものが完全になくなって、明らかになることを「夜があける」といいます。
これだけでも「あき」の言葉にたくさんの広がりがあることがわかります。
・「あきらめ(諦め)」
こちらも一見マイナスな意味のようですが「あき(飽き)」の意味が変化した場合と同じです。物事を明らかにするように十分な努力をし、これ以上はできないというところまでやっておしまいにする。それが「あきらめる」の意味です。
「あきらめる」は本来、「もういいや!」とネガティブな感情で投げ出すという意味ではなかったのです。人によって「もう十分」と思う基準が違うために、中途半端な努力で「これで十分なはず」と投げ出すことも「あきらめる」と言うようになったのでしょうね。
いかがでしたか? 漢字で考えるとまったく意味の違う言葉でも、「やまとことば」で日本語の意味を知ると、新たな気づきがあります。
ちなみに春は芽吹きの季節。植物の芽がパンパンに「はる(張る)」から来ているとか。「はる」の音にも色んな意味が隠されていそうですね、調べてみたら面白いかもしれません。
美文字のポイント
秋をかっこよく書いてみたい! 美文字のポイントは3つ!
1. 始めのはらいの方向は、真横に向かうイメージで。斜めの角度が付きすぎると変なすき間ができてかっこ悪く見えます。
2. 「へん」はいつでも左:右=2:1! 「へん2:1」の法則で、「つくり」の空間を圧迫しないようにしましょう。
3. 火の上のチョンチョンの向きを変えるだけで劇的ビフォーアフターです。線対称に書かないようにしましょう。左の点=縦、右の点=真横のイメージです。
3つのポイントに注意して、挑戦してみてください。それではまた。
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