私たちの身の回りには読めそうで読めない漢字や、聞いたことはあっても書き方や使いどころのわからない言葉で溢れています。連載「言葉の森」では、日々言葉について思考を巡らせている書画家・夏生嵐彩が、“言葉の森”の探険途中で見つけた面白い要素をピックアップ。一緒に日本語の新しい側面を発見しながら、言葉の森を探険してみましょう。(編集部)
色の字源
こんにちは。秋もすっかり深まり、紅葉の季節となりましたね。
この時期の時候のあいさつに「錦秋の候」というものがあります。「錦秋」とは木々が紅葉している様子を表しています。「錦」はきれいな布の意味だけでなく「色とりどりで美しいさま」をあらわすときに使えます。今日は紅葉にちなんで、たくさんの色の字源についてお話していきましょう。
赤
まずは紅葉の赤色から。赤は大と火とを組み合わせた形です。「大」は人が手足を広げている形で、「赤」はその下に火をくべている様子です。
え・・・怖くない・・・?
実はこれ、穢(けが)れを祓い清める儀礼で、特に懲罰としての穢れを払う方法なのです。火や水のお祭りって世界中である気がしますが、ずっと昔からお清めとして使われていたのですね。
白
怖さで言ったらこちらも負けていません。白は「白骨化した頭蓋骨の形」です。
えーーー! 白いものならもっとあるでしょ! 雲とか! 綿とか! なんであえてガイコツを選んだの?! 昔の人!(困惑)
どうやら、すぐれた首長の頭骨にはすぐれた呪力(霊の力)があるとされていたらしく、魔除けなどのために、偉大な指導者や討ち取った敵の首長の頭はドクロとして保存していたらしいのです。
これから皆さんは白いものを見るたびに、純粋できれいな色だなぁと思うより先に「頭骨の色だな」という不思議なものの見方ができるようになりましたね。よかった。
黒
白といえば「黒」。黒は柬(かん)と火とを組み合わせた形です。「柬」は嚢(ふくろ)の中に物がある形で、その下に火を合わせて、ふくろの中のものを焦がして黒くする・黒い粉末状の煤(すす)にすることを示していました。
ちなみに書道で使う墨は、その煤を集めて土で固めて作っていたので「墨」という字の形なのですよ!
青
土といえば、土に関係の深い「青」という字。青の上部はもともと「生」で、下部は「丹」という字で成り立っていました。
「生」は植物の生え出る形で、草のあおい色をあらわしています。青の「セイ」という音もここから来ています。
「丹」とは硫黄を含む土石のことで、絵の具の材料でした。その丹を採掘する井戸の形が「丹」なのです。
たまに純粋にその色と素材が字源になっていてくれていると安心しますね・・・。白の由来との差がありすぎです(笑)。
黄
青の反対色、黄色の由来は何でしょう? 「黄」には2つの成り立ちがあります。諸説あるということではなく時代によって少し違うという感じです。
ひとつは、腰につける革帯に吊り下げた玉の形で、そのあめ色の輝きが黄色とされたこと。もうひとつは、さらに時代をさかのぼり、甲骨文の時代は「火矢の形」を表わしていて、その火の光から黄色の意味となっています。
どちらにしても、物の輝きを表わしていたようですね。「光の色」を字で表そうとするなんておしゃれだなぁと感じる私です。
その光の色「黄」は五行説で中央の色とされ、古代の中国では「君子の色」の位にたとえて、宮殿の門のことを「黄門」と言っていました。
いかがでしたか? 色の字源を知ると、意外でちょっと怖いものや、色と合わさる熟語のイメージが分かりやすくなったものなど、さまざまあって面白いですね。その他の色について皆さんも調べてみてください!
植物が由来となっているものなど、まだまだ面白いものがたくさん出てくるはずです。そもそも「色」という字の由来はなんでしょう・・・? ヒントは、「ク」も「巴」も人の形を表わしています! あ~ら。お色気がありますこと。お盛んで何よりなカップルですな!
それではまた次回の文字探検でお会いしましょう。
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