ひとり旅は自分をリセットさせてくれるかけがえのない時間。これまでの旅の経験から、考えたことや感じたこと、学んできたことを綴る連載『ひとり旅×松本まりか=THINK CLEARLY』。
恐怖心が消えて、未知の世界に
私は新たな趣味を見つけてしまいました。それは、スキューバダイビング。初心者向けのオープンウォーターのライセンスは10年ほど前に取得したものの、潜りに行くことはほとんどありませんでした。それがつい最近、再開したのです。
先日のまとまったお休みでは、5日間映画館に通い映画三昧の日々を過ごしました。そして休暇の最後にどうしても自然に触れたいと思いました。きれいな海が見たい! 青いきれいな海と言えば沖縄。直感で決めたら即行動するのが私。映画館を梯子する合間に、インターネットで宿や航空券を懸命にチェックしましたが、2日後の出発は直近すぎて宿は空いてないし、航空券も海外に行けそうなほど高額に。「グアムやサイパンにしたほうがいい?」「海外は(新型コロナウィルスの)陰性証明も必要だし、準備が間に合わない」「この休みを逃したら、私の夏が終わってしまう!」と、散々行き先に迷っていたところ、沖縄よりも手軽な場所に最高のダイビングスポットを見つけることができました。
長年潜らなかったのは理由のひとつに、海への恐怖心が残っていたというのがありました。ところが、今回すばらしいインストラクターの先生に出会い、その恐怖心が不思議と消えてしまいました。潜る技術も上達し、アドバンスのライセンスまで取ってしまいました(笑)。
ダイビングの魅力はひと言では言えません。まず潜って海中から海面ごしに空を見上げたときの感動。ブルーグリーンの世界のなか、キラキラと輝く光のカーテンが差し込み、オーロラのようにゆったりと揺れています。眼下には色とりどりの珊瑚、その間をカラフルな魚たちが群れをなして泳いで行きます。日常と切り離された別世界です。
飛行機に初めて乗ったとき、高度が上がるとともに街がしだいに小さくなっていき、自分たちの普段いる場所がまるで違って見えて感激しました。海の中もそれと同じくらいの衝撃の景色でした。
水中では、水面と並行に体を保つよう、中性浮力を身につけないといけません。そのコツをつかむと、空を飛んでいるような感覚になれます。レギュレーターをくわえ、タンクから終始空気が送られますから、普通に呼吸ができます。もちろん、一歩間違えば危険を伴うレジャー。でも、その恐怖と感動が同居しているところにも冒険心がそそられます。
ダイビングの旅はひとりで行く予定でしたが、出発前に、たまたま連絡をくれた友達に「来る?」と思わず誘ってみたら、「1泊なら」と快諾、途中で合流してくれました。私は休暇後に控えた撮影の7冊の台本を読まねばならず、資料を大量に持ち込んでいました。友達もまた仕事を抱えており、同じ部屋でそれぞれ仕事をしながら、ときどきおしゃべりする。それは、昔、友達と一緒にファミレスで試験勉強をしたときのような感覚。ひとり旅派の私ですが、誰かと時間を共有するのも楽しいなと改めて思いました。
旅も、本や映画の世界も、世の中には素晴らしいもの、美しいものがあふれています。それらすべてを見知っておきたいのに、一生をかけても時間が全然足りません(笑)。ダイビングは、ゴルフと同じ生涯スポーツ、何歳になってもできるのだそうです。休みができたらさっと潜りに。ダイビングとはこれから長いお付き合いになる予感がしています。
Marika’s Memories/別世界へ
松本まりか(まつもとまりか)
女優。ドラマ『ホリデイラブ』の井筒里奈役で一躍注目を集める。映画『ぜんぶ、ボクのせい』が公開中。映画『夜、鳥たちが啼く』が12月9日公開予定。2023年に放送予定の大河ドラマ『どうする家康』に出演予定。
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