染色を中心に自然素材や廃材を使った作品制作を行う現代美術家・山本愛子さん。染色と旅を通じて得た、ささやかな気付きをつづる。今回は、森林で見つけたキノコの魅力にまつわるお話。【連載「植物と私が語るとき」】
私たちはキノコに支えられている
森を歩くと、青緑色の木片が地面に落ちているのを見かけることがあります。日本各地の森林によくあるもので、私もたまに見かけていましたが、実はこれが「緑青腐菌(ロクショウグサレキン)」というキノコの一種だということを最近知りました。
このキノコは木を腐朽させる力があり、木の内部まで翡翠のような青緑色に変色させます。その色素は染料としても使われ、美しい青色に染まるそうです。私も森の中を探して集めてみたので、この夏に染色実験をしてみようと思っています。
キノコは動物でも植物でもないミステリアスな存在。時に病気や死を引き起こす怖い側面もありますが、同時に私たちの生活に欠かせない存在でもあります。
キノコは枯れ木や動物の死骸を腐らせ分解し、水と二酸化炭素に戻してくれます。そして、菌糸と呼ばれる管状の細胞を通じて、水分や栄養を地中から森全体に循環してくれているのです。そう知ると、この世界は見えないものに支えられているのだなぁと感謝の念を抱きます。
余談ですが、キノコは冷凍すると旨味や栄養価がアップします。実践し始めてから、確実に生活の質が上がったのでとってもオススメ。
食べ物、染料、森散策の鑑賞…どんどんキノコの魅力にハマりそうな予感!
山本愛子(やまもとあいこ)
1991年神奈川県生まれ。東京藝術大学大学院先端芸術表現科修了。自身が畑で育てた植物や外から収集した植物を用いて染料を作り、土着性や記憶の在り処を主題とした作品を制作している。