まだまだ暑さが弱まる様子はなく、冷房による室内外の寒暖差で夏風邪の一種である「ヘルパンギーナ」が増え、新型コロナウイルスの感染者も増加し「第11波」ともいわれている今。夏も感染症対策は重要! 感染症予防としての腸活について、国立消化器・内視鏡クリニック院長の吉汲祐加子(よしくみゆかこ)先生に教えていただきました。
免疫細胞の約7割は、腸に生息している?!
今回お話を伺った吉汲祐加子先生は国立消化器・内視鏡クリニック院長でありクリニックでは、通常の消化器外来のほかに、腸内フローラ検査や腸内洗浄をはじめとした自由診療も行っている‟腸内環境”のスペシャリスト。
「記録的な猛暑日が続いて、食欲低下や睡眠の質の低下、心身の疲労が蓄積して、今後も夏風邪の増加が懸念されます。今後も酷暑が予想されるので、夏風邪を予防にするには『腸』の調子を整えて免疫力を維持する必要があります。近年の研究で、腸が免疫においても重要な役割を果たす器官であることが明らかになっています。免疫システムを担う免疫細胞の約7割は、腸に生息しているともいわれているのです」と先生はおっしゃいます。
夏風邪とは?なぜ夏に風邪をひくのか
夏風邪は、主にウイルス性の感染症が原因となることが多く、一般的な症状には、喉の痛み、発熱、頭痛、倦怠感など。夏に風邪をひきやすい理由としては――
・冷房による急激な温度変化
・夏バテによる体力低下
・冷たい飲み物や食べ物の摂り過ぎ
・睡眠不足や不規則な生活リズム
これらが重なって、体の抵抗力が弱まり、ウイルスに感染しやすくなるそう。となると‟免疫力を高めておく”ことが大切になり、‟腸内環境を整えること”が効果的。というのも体内の免疫細胞の約7割が腸に存在しており、腸は単なる消化器官ではなく、健康を守る重要な免疫器官でもあるから。
夏は腸が脱水状態で腸内環境の悪化が心配される
免疫力のために腸内環境を整えておくことが重要な一方で、夏は汗によって腸内の水分も不足しがちだそう。腸内の水分が不足するとことで便通が悪くなる=便秘になりやすく、便秘で悪玉菌が増えることで腸内環境が悪化する…という負のスパイラルに陥るのです。
腸内環境を整えるには‟発酵性食物繊維”を
腸内環境を整え、健やかな便通を導くには食物繊維!と聞いたことがあるはず。そして量よりも‟発酵性食物繊維”の摂取の重要性が注目されているそう。というのも、発酵性食物繊維をエサにした腸内細菌が作る有用成分・酪酸が、腸内環境を整えたり、腸の蠕動運動をサポートして便通を改善することもわかっているとか。さらに最近の研究では多く摂ることで免疫細胞が活性化したり、腸内細菌が作る酪酸も免疫を活性することがわかってきたそう。
発酵性食物繊維含有No.1は‟小麦ブランシリアル”
具体的に‟発酵性食物繊維”はどんな食材に含まれているかというと…ごぼう、バナナ、ジャガイモといった野菜、果物の他、穀物の‟押麦(大麦)めし”‟小麦全粒粉パン”‟玄米ごはん”‟オートミール”そしてもっとも多いのが‟小麦ブランシリアル”。小麦ブランとは小麦の外皮で、小麦の粒のなかでも、発酵性食物繊維が豊富な部分。研究でも小麦ブランを摂取することで、酪酸菌を増加させ、腸内環境を改善し、便通解消に繋がることが分かっています。
夏風邪を寄せ付けないためにもライフスタイル、食生活に合わせて小麦ブランを含む食材を選んでみる。そして腸内環境を整え、免疫力をアップさせて、この夏を乗り切っていきましょう!