言葉を大事にする壇蜜さんが“今となっては見慣れすぎて見過ごしがちだが、よく考えると奥深い言葉”を「今更言葉」と名付けて考察。【今更言葉で、イマをサラッと】
最終回 お気を付けて
「さようなら」「バイバイ」「さらばだ」等々、さよならを表現する言葉は非常に多く、多岐にわたって使われている。なかにはかしこまりすぎたり、逆に軟派すぎたりもするので、たくさんある分使い方には注意したいものだ。相手と場所と境遇をよく吟味して使わないと、ゴキゲンを損ねてしまうだろう。
せっかく挨拶したのに何だか気まずい…なんてなりたくない。そんなわけで私がよく使うのは「お気を付けて」。
相手の去り際に「お気を付けて」、席を立ちおいとまするときに相手に「お気を付けてどうぞ」。さようならの代わりだが、大抵これで「何て失礼な!」というトラブルにはならない。
自分の去り際は「ごきげんよう」にしている。万能でNOトラブルを保障するとは豪語できないのだが、「失礼じゃなくて?」的なムードには幸いながら見舞われにくいことはお伝えしておく。
最近では「お疲れ様」一つとっても「目上の人にどうなの? それ」という議論がわき出ていて落ち着かない。結局解決しないような気もするのでいっそ違う言葉で応戦することにした。
一方では「言葉の昔からの意味に囚われず、現代的に広い見解を持ちましょう」なんて言われているので、ちょっとした矛盾を感じるのは私だけだろうか。
「お疲れ様全人類に使って大丈夫ムード」推進派としては「広げよう! だれにでも使える労いワード」として今後も草の根運動を続けていきたい。
さよならだのバイバイだの別れの言葉について話してきたが、この連載も今回で終わる。雑誌が月刊誌でなくなってしまうので、ヤダヤダ続けたい辞めない〜とジタバタもできない。今回はいったん終わり。
また何処かで会えることを願い、お別れの挨拶をしたためた。本に触れていれば、いつかはまた会えるような気がしてならない。これまで培ってきた私たちの縁はきっと再会のチャンスをくれるだろう。それまで、お気を付けて。あれこれ物騒な社会でも、気を付けていれば、きっとまた会える。ありがとう。