言葉を大事にする壇蜜さんが“今となっては見慣れすぎて見過ごしがちだが、よく考えると奥深い言葉”を「今更言葉」と名付けて考察。【今更言葉で、イマをサラッと】
その68 まあまあ、なかなか
「〇〇はどうだった?」や「〇〇は元気?」「最近〇〇の調子は?」などの質問に対し、「まあまあ」と答えることは多いと思う。絶好調です! 最高です!とは言えない、もしくは伝えにくいなと判断した際に使われがちだ。
まあまあかな、まあまあです、と言うと相手も「そうか、まあまあか」と受け入れてくれる。そこから会話が弾むことも、そのまま何となく終わることもある。私も「体調は?」と聞かれたら、「まあまあ生きてます」と言うことが増えたような気がする。年のせいかもしれない。
「まあまあ」って便利だな…と感じてはいた。しかし、最近「まあまあだけど『ちょっと会話相手との距離』を感じるかもなぁ」と意識し始めた。簡単な表現ほど相手に冷たいヤツと思われる…「まあまあ」はその代表格かもしれない、と。
感想を聞いて「普通」や「ぼちぼち」も言われたらそれ以上は踏み込みにくい。普通って個人差があるしなぁ、ぼちぼちは良い悪いどっちより?などの疑問が浮かび上がるが、それ以上「普通?」「ぼちぼち?」と聞き返したり掘り下げたりするのは遠慮してしまう。普通、まあまあ、ぼちぼち…使い過ぎには注意したい。いずれも「こちらの期待に充分応えているわけではないが、とりあえずは満たされました」感しか伝わらないだろう。まあまあのレストラン、普通の宿泊施設、ぼちぼちな商売…ややネガティブな印象を抱かせるような気がしてならないのだ。
どう?と聞かれてネガティブな感じを持たせたくはない。しかし、文句なし!とまではいかない…そんな時は「なかなか」を使うのがいい。なかなかの〇〇だった、調子はなかなか良い感じ、などと言えばちょいポジティブに伝えることができる。応用として「〇〇だったけど、〇〇なところもあってなかなかでした」とネガティブ→ポジティブ→なかなかで締める、そんな手法もある。
言葉には魂が宿る…ネガティブな言葉は自分に返ってきてしまうかもしれない。どうせ使うなら相手にも敬意を払った言葉を選びたいものだ。まあまあ、普通、ぼちぼちが悪いわけではないが、使いすぎて麻痺しそうな感覚にご用心。「なかなか」プラスちょっとした情報を加えて、会話だけでも爽やかに。こんなご時世&季節だから。