言葉を大事にする壇蜜さんが“今となっては見慣れすぎて見過ごしがちだが、よく考えると奥深い言葉”を「今更言葉」と名付けて考察。【今更言葉で、イマをサラッと】
その64 嫌な予感がするので
母には少し霊感がある。「通りたくない」「入りたくない」「居るのはいやだな」と思う場所に時々遭遇するという。私も幼い頃、旅先のとある場所(公園の一角だった記憶がある)で急に冷や汗をかき吐き気を催している母を見たことがある。どうもその場に漂う宜しくない何かを母がキャッチしてしまった模様。そのとき答え合わせはできなかったが、母が上記のように「いやだな」と感じた場所について後々詳細を聞く機会があったりすると、その場所はいわゆる「いわく付き」だった…というケースが多々あるようだ。
一方娘の私は霊感があるとか、予知が出来る訳ではなく、どちらかというと鈍感なタイプ。ご遺体と向き合う仕事をしていたが、ドッキリエピソードは持ち合わせていない。ちなみに心霊スポット巡りや肝試し的なことは苦手だ。興味本位でみだりに入り込んでは行けない領域がある、それは生きている者としてわきまえないと…と母から言われていたことが影響している。触らぬ神に…いや、触らぬ何かに祟りなし。
しかし、「予感がする」という意思表示は誰にでもする権利はあると思うし、言われた相手もちょっと察してあげる優しさがあってもいいと考えている。特別な力があってもなくても「嫌な予感がするので、〇〇してきます(又は〇〇してもいいですか?)」と前置きしたうえで、自分の用事を手短に済ませる時間をもらうのは、「ちょっと待って下さい!」と己の都合をねじ込む感じになるよりソフトに受け取られやすい。神妙な顔で、嫌な予感がするので、もう一回お手洗い行っておきます…嫌な予感がするので、一応お茶かお水を買ってきます…等々「いやいや、何だよ嫌な予感って」と切り返されたとしても、「嫌な予感が…」と呟けば突っ込まれ続けることもないだろう。
結果として当たっても外れても予感は予感。困った事態になり迷惑をかけるかもしれないことをあらかじめ予防しています的アクションは、用心深さ、慎重さのアピールにつながるので時々使うくらいなら「ロスタイムを作る奴だな」とは思われまい。未来に何が起こるかなんてわからない心理を使って、たまに使える非常時ワード。