本当は興味津々なのに、決して踏み出せない――芸人 紺野ぶるまさんの自分観察。【連載「奥歯に女が詰まってる」】
優勝しないといけない女

今年も来てしまった。
いや今年もこれた、と言いたい。
そして今年こそ仕留めてこの話はこれで最後にしたい。
女芸人No. 1を決める大会the Wの決勝の日を一週間後に控えている今日である。
この大会に関して、女だけで戦う意味や、レベル感については去年の私が吐露しているのでよろしければ、そちらもあわせて見ていただけたら嬉しい。
とにかく、4分に今の全てを注いでいるのでどうか見てやってほしい、本当に。
何せ9年間休まずエントリーしてきた。
一度もチャンスを逃したくない、という勿体無い精神で、お腹が少し大きいときも、産後骨盤がふわふわしているときも大きな荷物を持って会場に向かった。
なんでも笑ってくれるおじ様すら笑ってくれなくて、すぐに敗退して、出場したことを偉く後悔したこともあった。
9年間あってまだ優勝してないなんて、初年度の自分が聞いたらどう思うだろうか、「はあ?! きも!! なにしてんの?!」と怒った後に、なんだか「そんな気もしてたよ〜」と笑ってくれそうな気もする。
もちろん優勝はしたいが、優勝がこわいという本音もずっとある。
「優勝したのに売れてない」とか言われるくらいなら「優勝はしてないけど面白いよね」くらいがちょうどいいと思っているところがある。
ハードルを上げすぎないこと、これはお笑いの基本である。
どうも何かの優勝者です、と言ってから何かが始まるなんて震えてしまう。
だけども今年はどうも違う。
39歳、16年目なのである。最多出場なのである。
20代で一年目、初出場の子たちばかりのなかで、もう「自信ない」は誰も笑ってくれないし。それこそすべっている。
どんな立ち振る舞いがウケるだろうか、とりあえず、ポケットに「おいなりさん」を入れることだけは決めている。何かのボケに使えたらいいなあ。
決勝は13日の土曜日なので、この記事を読んでいただいている今は、少なくとも翌日以降ということになる。
優勝していなかったら、「おいなりさんとか言ってるからできないんだよ」だし、優勝していたらいろんな意味でアゲ〜↑な内容である。
最後に
最多出場とかけまして
定価で買って欲しい人ときます。
その心はどちらも
絶対まけられないでしょう。
紺野ぶるま(こんのぶるま)
1986年9月30日生まれ。松竹芸能所属。著書に『下ネタ論』『「中退女子」の生き方 腐った蜜柑が芸人になった話』などがある。
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