“わたしの心地よさ”を基準に行動することが、ウェルビーイングに生きるカギになる。そのために、もっと自分自身を知る = 自分のトリセツを手に入れませんか? 保健学博士の島田恭子さんがナビゲート。今回は「ジョブ・クラフティング」について。【連載「自分学 わたしのトリセツ」】
vol.9「やりがいを感じていますか?」
先日、東京ディズニーランドに行きました。写真を撮る人だかりの真ん中に、白い制服のお掃除お兄さんが。水をつけたほうきで地面にミッキーの絵を描いています。みんな歓声。お兄さんも実に嬉しそう。夢の国では働いているキャストが皆、楽しそうに園内を巡回し、お客様と接している姿が印象的です。
“ジョブ・クラフティング”という言葉を聞いたことがありますか?
クラフティングは、“工作”とか“何かを作り出す”という意味。仕事を工作する、とは「やっている仕事を工夫し、やりがいを見出す仕事の仕方」となります。
前述のキャストもそうですし、ひところSNSで話題になった“踊る交通警備員”もそう。「駐車場で誘導する」仕事に、「踊るような大振りの誘導で、お客を楽しませる」というやりがいを見出した好事例でしょう(それでお客と売上が倍増という逸話付き)。事務職、営業、接客、対人援助職…どんな仕事であっても、何かを工夫し、やりがいを見出すことは可能だと言われています。
それではどんなふうに、今の仕事を工夫してみる?
ジョブ・クラフティングは、次の3つの観点から、仕事の中身をアップデートします。
ジョブ・クラフティングする3つの方法
・社会的な交流
美容師さんが髪を切りながら(←本来の業務)、お客様と会話を楽しむように、周りとの関わりで仕事に深みを持たせるような場合です。
・仕事の意義を広げる
清掃局の運転手さん。「ゴミを収集する仕事」ではなく、「世の中の美化や秩序に貢献している」と誇りを持って仕事するような場合です。
・仕事の内容に手を加える
営業事務のA子さん。暑い夏、営業先から帰るスタッフの疲れを癒せるよう、冷たいおしぼりを冷蔵庫に常備したらとても好評だった、というような場合です。
仕事には3種類あるといわれています。
1. お金(報酬)を目的とした労働としての仕事(Job)
2. 向上したい、よりステップアップするための仕事(Career)
3. 深い意義を感じ、自分のアイデンティティと深く結びつく天職(Calling)
このなかで、最も幸福度が高いのが、Callingの人たち。天職なんてなかなか見つけられない、と思いがちですが、ジョブ・クラフティングは、やりがいを見出し、JobやCareerをCallingにアップデートする手助けとなることが知られています。
仕事以外でもジョブ・クラフティングは応用できそう。実際に、“ライフ・クラフティング”の名で、「自分の人生を自ら工夫し工作していく」動きがはじまっています。たとえば家事や子育て、介護なども、“やるべき仕事”から“意義あるもの”へ。効率性を工夫したり、SNSで同じ仲間と交流したりと、アップデートする方策はたくさんありそう。せっかくやるなら楽しんで。クラフトマンシップで自分なりのやりがい、探してみませんか。
出典
●Wrzesniewski, A., & Dutton, J. E. (2001). Crafting a job: Revisioning employees as active crafters of their work. Academy of Management Review, 26(2), 179-201.
●Sakuraya, A., Shimazu, A., Imamura, K., Namba, K., & Kawakami, N. (2016). Effects of a job crafting intervention program on work engagement among Japanese employees: a pretest-posttest study. BMC Psychology, 4(1), 49.
島田恭子(しまだきょうこ)
医学や心理学のためになる知見を、女性のウェルビーイングに役立てたいと活動中。東京大学大学院でこころの予防医学を学び、保健学博士となる。一般社団法人ココロバランス研究所代表。
https://customer-harassment.org/kyokoshimada/