仕事や日常生活で生じる迷いや課題に、より良い答えを見つけるためには、まず「自分を知る」ことが大事。保健学博士の島田恭子さんが「自分を知ること」=「自分のトリセツ」の作り方をナビゲート。今回は「情熱を感じるもの」についての考察。【連載「自分学 わたしのトリセツ」】
vol.7 情熱を感じるものは?
観ました! カズオ・イシグロの『生きる LIVING』。静かな感動を呼ぶ、いい映画でした…。
舞台はイギリス。ガンで余命半年と宣告された中年公務員が主人公。急に半年と言われても、残り時間の過ごし方がわからず途方に暮れます。「ミスター・ゾンビ」とあだ名をつけられていた、これまでの我が人生を振り返ったとき、生きていても死んでいるような毎日だったことに気付いたのです。「じゃあ残りの半年くらいは“本当に生きよう”じゃないの」ーーと心に誓います。そこではたと、自問するのです。「一体、“生きる”ってどういうこと?」と…。
その結果、彼が見つけた真の意味での、生きるとは…?
それはーー"ささやかでも情熱を傾けられることを見つけ、自分なりの満足を感じること"でした。まさにこの連載のテーマ「自分学」を、彼も人生の最終章で実践し始めるんですね。
私たちにはおそらく、この主人公よりも長い時間があるでしょう。だからこそ大切にしたい情熱…。ですが、その情熱を傾ける対象が「なかなか見つからない」という人も多いのではないでしょうか。そこで今回はそんなときのヒントを3つ、お伝えします。
1. あなたはヒト志向?それともモノ志向?
1つ目はあなたの志向が"ヒト"にあるか"モノ"にあるかを考えてみることです。たとえば、チームスポーツや友達とのおしゃべりを好むあなたは"ヒト"に志向があるでしょう。一方、ひとり静かに工作や読書するのが好き、という場合は、"モノ"に志向があるといえます。自分の志向性を知っていると、目の前に複数の選択肢があらわれたとき、より楽に判断しやすくなるでしょう。
2.「行動のたちつてと」
2つ目は、“ためしに、ちいさく、つてをたどって、とりあえず、始めてみること”です(私はこれを“行動のたちつてと”と呼んでいます)。「いろい考えてばっかりで、なかなか行動に移せない!」というお悩みは万国共通なもの。ですが、まずはためしに、ほんの少しだけ、始めてみませんか。3分でも、1ページでも、100円でも、1回でもやってみる。えいや、で始めてみると、意外にやれることに気付くでしょう。悶々と考えるより、まずは行動してみる。心理学的にも、考える(認知)より前に、まず一歩でも踏み出す(行動)ことの重要性が立証されています。友達に誘われたから、たまたまチラシを見かけたから(つて)、ためしにとりあえず、ちいさく始めてみませんか。
3. ある程度は続けてみる
3つ目は、一定期間、見つけたそれを続けてみることです。自分が情熱を持てるかどうかわかるのは、多くの場合、ある程度その良さを体感できてから(一目ぼれもありますが…)。まあまあ時間がかかります。人や内容によって長さは様々でしょうが、始めるときに「〇日は続けよう」と自分で決め、そこまで何とか続けてみるのがポイントです。
情熱を持てる何かが自分にあると、心にワクワクが増えます。そのワクワクは心のなかで連鎖して、他の行動のやる気スイッチを押し、毎日の生活にぐんぐん潤いが増えていきます。
ぜひ“情熱の見つけ方3つのヒント”を参考に、生活に人生に潤いを増やすべく、第一歩を踏み出してみませんか。
島田恭子(しまだきょうこ)
医学や心理学のためになる知見を、女性のウェルビーイングに役立てたいと活動中。東京大学大学院でこころの予防医学を学び、保健学博士となる。一般社団法人ココロバランス研究所代表。
https://customer-harassment.org/
Instagram @kokorobalance