仕事や日常生活で生じる迷いや課題に、より良い答えを見つけるためには、まず「自分を知る」ことが大事。保健学博士の島田恭子さんが「自分を知ること」=「自分のトリセツ」の作り方をナビゲート。自身のトリセツを手に入れて、ウェルビーイングにいこう! 【連載「自分学 わたしのトリセツ」】
vol.5 声を上げて、笑っていますか?
“笑う門には福きたる”ってことわざがありますよね。「笑いの絶えない人の家には、自然と福がやってくる」という意味。転じて「心配や落ち込むことがあっても、ポジティブに楽観的にいこう」というときに使われます。実はこれ、科学的に証明された事実なんです。今回は“笑い”をテーマに、自分なりの幸せを叶えるヒントをお伝えします。
笑うと長生きする
驚くべき日本の研究があります。40歳以上の2万人を8年間追跡した調査で、声を出して笑う回数が月1回以下の人は、週1回以上の人に比べ、死亡率がなんと2倍近く、介護率も高まることが分かったのです。つまり、日ごろからよく笑う中高年は、笑いが少ない人に比べて、介護を受ける必要性が低く、長生きする可能性があるということ。
これにはいろんな理由があり、ひとつはホルモン効果です。笑うと脳では、オキシトシン(信頼を深める)やドパミン(ハッピーホルモン)、エンドルフィン(高揚感)などの神経伝達物質が分泌されます。逆にコルチゾール(ストレスをつかさどる)は減少する。まさにホルモンカクテル。笑いの効果恐るべし。どんな高価なサプリメントよりも効き目がありそう!
笑えない?ならば受け身でOK
この素晴らしいホルモン効果を味わえるのは、本人だけにとどまりません。笑いに触れた相手の脳内でも、同様に良い変化が起こっています。なんと、笑っている動画や声を聴くだけでも良いのです。だから「私、ユーモアとは無縁の性格だし」とか「落ち込んでいて、そんな気になれない」というあなたも大丈夫。身近にあるお笑いや、爆笑系の映画、本、漫画…なんでもOKです。
楽しい会社の方が業績がいい!?
笑いの効果にいち早く気づき、仕事に活かしている人や企業も多いようです。一見おふざけが過ぎるような、笑いの要素を取り入れて、会社の生産性が飛躍的に上がった研究結果もあります。ユーモアを尊ぶアメリカでは、プロのコメディアンを経営戦略チームに加え、社長のスピーチに活かすことも。確かにユーモアあるスピーチや経営戦略は、好印象かつ記憶に残りやすいですよね。
これまでの研究で「笑いやユーモアは、“創造力”や“人との絆”を深め、“レジリエンス(心の回復力)”を高める」ことがわかっています。ぜひ次の週末は、抱腹絶倒コメディを観て、あなたの心をあたためてみませんか。
大平哲也:笑いと身体心理的健康・疾病との関連についての近年の研究動向-2010年~2020年の観察研究、介入研究を中心に-.笑い学研究.27(1):3-18, 2020.
執筆者/保健学博士・島田恭子(しまだきょうこ)
医学や心理学のためになる知見を、女性の幸せに役立てたいと活動中。東京大学大学院でこころの予防医学を学び、保健学博士となる。一般社団法人ココロバランス研究所代表。
https://customer-harassment.org/
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