女性医療ジャーナリストの増田美加さんによる連載。人生の基礎になる“健やかな体”を手に入れるための最新知識をお届けします。※2021年2月4日更新(最新情報に基づき加筆・修正しました)
生理周期(月経周期)が安定していないという悩みは、生理痛と合わせ、どの年代の女性にも多いもの。今回は、生理不順はなぜ起こるのか、そして生理はどこまで乱れると心配すべきなのか、受診の目安などについてお伝えします。
なぜ生理周期は乱れるの?
私たち女性の生理のリズムは、とてもデリケートです。ちょっとした疲れやストレスが原因で、すぐに不規則になります。
たとえば、引っ越し、転勤、異動、ハードワークなどによってストレスがかかると(自分ではストレスと認識していなくても)、生理周期が乱れたり、生理が止まったりします。また、過度な運動や過激なダイエットもストレスとなり、生理周期は乱れます。
ストレスが生理周期に影響を及ぼす理由は、脳の仕組みにあります。卵巣で排卵を起こし、生理の指令を出している脳の視床下部、下垂体は、ホルモンの分泌を促す中枢としてだけでなく、実は感情や自律神経系の中枢としても働いているのです。そのため、ストレスなどで脳がダメージを受けると、ホルモンの分泌にも影響が出てしまいます。ホルモンバランスが崩れて脳からの指令が順調にいかないために、卵巣の機能が低下して、正常に排卵が起こらないことがあります。正常な排卵が起こらないと、生理周期も乱れます。
どこまでが正常の範囲内?
生理の周期や期間は、人によってさまざまですし、毎月一定間隔で来るとも限りません。ですから多少のばらつきがあっても不順かなと心配することはありません。
目安としては、生理初日から次の生理が始まる前までの日数が、25日〜38日の間であれば正常範囲と覚えておくとよいでしょう。
また、ちょっとしたストレスや体調しだいで変化するので、自分の普段の周期から6日以内の変動は、異常ではなく、正常範囲と考えてよいと言われています。
一時的に生理の周期が乱れても、ストレスが解消したあと、体調が戻れば生理も安定することが多いので、しばらく様子をみても大丈夫です。
24日以内、39日以上の生理間隔だったら?
生理周期が24日以内の場合を頻発月経(ひんぱつげっけい)と言います。原因として、一見、生理が来ているように見えて実は見せかけの出血という、無排卵が挙げられます。もうひとつは黄体機能不全です。排卵後に卵胞から分泌される黄体ホルモンが十分でないため、排卵してから次の生理が始まるまでの期間が10日以内と短くなり、子宮内膜がうまく育たない状態です。
また逆に、39日以上で3か月未満のものを、稀発月経(きはつげっけい)と言います。無排卵、または遅延排卵の可能性があります。遅延排卵は、生理が始まってから排卵するまでの期間が普通より長い状態です。遅延排卵でも妊娠できる人もいますが、卵子の質に影響するため、生理が正常な人に比べて妊娠率は低くなります。
3か月以上の生理が来ないと続発性無月経と呼びます。ホルモンバランスの乱れが原因で起こることが多いですが、子宮や卵巣など女性器の病気にも注意が必要です。
生理がなかなか来ない場合、どうすれば?
【3か月以内に次の生理が来てその後は順調な場合】心配しすぎなくてもOK。ただし、すぐに妊娠を望むなら検査を
妊娠の可能性があれば、妊娠検査キットでチェックしましょう。生理が毎月来ないと不安ではありますが、一時的に乱れても、3か月以内に生理が来て、その後は元に戻るならあまり心配しすぎなくていいでしょう。
「どうしても心配」という人は、婦人科を受診しましょう。排卵誘発剤で生理を起こすか、低用量ピルでホルモンバランスを保つ治療をすることが多いです。
また、すぐに妊娠を望んでいる人は、排卵回数が少なく、妊娠のチャンスが減るわけですから、月1回は排卵を起こすように、病院で排卵誘発剤などの不妊治療をしてもいいかもしれません。
【3か月以上空いている場合】すぐに婦人科を受診して
注意したいのは、20歳以上で3か月以上、生理の間隔が空いている場合。妊娠の可能性がないとなると、無月経のケースが多いのです。
妊娠していないのに長期間、生理が来ないのは、卵巣の機能が低下し、排卵が起こっていない証拠です。当然、脳の視床下部下垂体からの指令も乱れ、女性ホルモンの分泌も低下します。卵巣機能の低下は、体のさまざまな機能に悪影響を及ぼします。生理不順というだけでなく、冷える、疲れる、肌が荒れる、精神的に不安定になるなどの症状があらわれ、体調全般が悪くなるのです。
また無月経の多くは、強いストレス、過激な運動、無理なダイエットによって起こりますが、まれに下垂体や甲状腺、卵巣、子宮などの病気が隠れている可能性もあります。また、閉経はまだまだ先なのに、30代や40代前半で、閉経してしまう早発閉経というケースもまれにあります。卵巣が老化し機能が低下、若くても閉経と同じ状態になってしまいます。その場合は、女性ホルモンの分泌が減少してしまうので、ホルモンを補充する治療を行います。
いずれにせよ病気は放っておいても治らないため、すぐに婦人科を受診し医師に相談、検査を受け、治療につなげましょう。放置する期間が長引けば長引くほど、治療にも時間がかかります。
婦人科を受診するときは、最終月経はいつで、何日間続いたか、生理痛などの痛みはあるか、生理の出血量は多いか少なめかなどを振り返っておくとよいでしょう。普段から基礎体温を測っているいる人は基礎体温表を持参します。
まずは無理なダイエットをしない、アスリートのような激しい運動を継続し過ぎない、ストレスはこまめに解消する、などの改善を心がけて生理周期の安定を目指しましょう。そして気になったときにはすぐに婦人科を受診するようにしてください。
増田美加の記事をもっと読む。