伝統と技術、デザイン力のあるプロダクト、日本人の感性が活きたアートや音楽などの文化、日本食や銘品の数々…。世界に誇るニッポンのうつくしさを伝承する中川政七商店に、プロジェクトへの熱い想いを伺った。
すべてはビジョン実現のため
中川政七商店は麻織物の卸問屋として奈良に創業し、現在は「日本の工芸を元気にする!」というビジョンのもと、日本の工芸をベースとした生活雑貨の製造小売業を展開するほか、産地支援事業や教育事業を手掛けている。2021年4月にはまちづくりの拠点として複合商業施設「鹿猿狐ビルヂング」を創業地に開業した。
工芸の復活には、ものづくりだけでなく、それらを生み出す産地自体が活性化することが必要不可欠である。そのために自らが産地へ人を呼び込む、「産業観光」のモデルケースになることを目標としたオープンだった。「鹿猿狐ビルヂング」では、祖業である麻のものづくりに触れられるワークショップをはじめ、旗艦店の「中川政七商店 奈良本店」、スペシャルティコーヒー店「猿田彦珈琲」、すき焼きレストラン「㐂つね」、コワーキングスペース「JIRIN」など、触れ、学び、味わえるさまざまなコンテンツが用意されている。ものづくりとともに、人がわざわざ足を運びたいと思う要素を作る。奈良という地から日本の工芸を元気にしたいという、中川政七商店の強い決意と願いを感じるプロジェクトだ。
自分の気持ちを大切に、自分で選び、暮らしを調える。その暮らしのなかで育まれる心地よい選択こそ、中川政七商店として提供していきたい価値だという。工芸は日本の風土と人々が積み重ねた工夫が詰まっているからこそ、現代に生きる私たちの肌と心にもなじむ心地よさがあるはずだ。日本の工芸が百年先もあるように、中川政七商店はこれからも全国の作り手とともにものづくりをし、産地を守り続けていく。
中川政七商店が誇るニッポンの銘品
花ふきん
奈良時代より前に伝わった蚊帳に使われる目の粗い薄織物は、奈良の一大産業であったものの、時代とともに需要が減少。吸水性や速乾性に優れた蚊帳の本質を捉え、現代の暮らしへ寄り添うふきんへと生まれ変わった。
耐熱硝子の多用急須 根竹
ひとつの器をさまざまな用途に使う、「一器多用」の知恵から生まれた急須。急須本体、蓋、茶漉し、つるとすべてのパーツが違う場所で作られながらも、デザイナーとものづくりメーカーが試行錯誤を繰り返した美しい佇まいの逸品。
更麻
麻は綿に比べて糸が硬いため、通常ならインナーにするのが難しい素材。長い歴史のなかで麻と向き合ってきた中川政七商店ならではの、インナーを作りたいという想いから誕生。吸水速乾性に優れており、さらりとした着心地。
現在進行中の注目プロジェクト
この秋デビューの新たなものづくり「くらしの工藝布」
かつての日本人は生活のなかで多くの時間を費やし、自然から糸を作り、色を染め、さまざまな工夫をしながら暮らしに必要な布を作ってきた。古くからある工芸の技法に向き合い、今の生活に解釈し、工芸の在り方を探求する中川政七商店がスポットライトを当てるのが「布」。11月より発売を予定するのは「刺し子」「裂織」2種類の技法を使ったインテリア商品。かけらさえも大切にされてきた布を使用した家具が、現代では失われてしまった暮らし方、生き方を教えてくれるはず。
中川政七商店
1716年に奈良で創業。日本の工芸を主軸に全国各地約800の作り手とともに生み出した生活雑貨を、約60の直営店や EC販売する。
https://www.nakagawa-masashichi.jp/shop/default.aspx