さまざまな経験、体験をしてきた作詞家 小竹正人さんのGINGER WEB連載。豊富なキャリアを通して、今だからわかったこと、気付いたこと、そして身の回りに起きた出来事をここだけに綴っていきます。【連載/小竹正人の『泥の舟を漕いできました』】
第40回「1日に3度も若さが沁みた」

皆さんは「ガサガサ」を知っているだろうか?
川の中の水草のあたりや海の岩陰なんかにおもむろに網を突っ込み、ガサガサと動かして、そこに隠れている小さな水中生物をつかまえること。これが一部で大流行している。
私はまったく知らなかったのだが、ある日YouTubeを見ていたら、いきなりこのガサガサの動画が流れてきて、何十ものガサガサ動画をみじろぎもせず一晩中見てしまった。おそらく、心身ともにものすごーく疲れていたのだと思う。
ガサガサ動画漬けになった翌日、私はすぐに佐藤寛太(劇団EXILE)に電話した。
コロナ禍以降、やたらと山やら川やらへの興味を深め、ものすごく自然に詳しくなり、私にとっては「大自然先輩」の寛太。
電話して(しかもかなり久しぶりに)、何の挨拶も前説もなく「ガサガサがしたい」と私が一言つぶやいただけで、「やりましょう! 川でも海でもできます! 初心者は川ですね。穴場があります。〇〇あたりがいいですね。お供します! 行きましょう!(…以下省略)」とたたみかけられた。
私の熱量が10だとしたら、いつだって120くらいの熱量で食いついてくれる寛太。ずっと私が黙っていても、その間息つく暇もなく喋り続けてくれる寛太。たまに体にストローをぶっ刺されて、寛太にエネルギーを吸いとられているような錯覚に陥るが、気のせい気のせい。私がものすごーく元気なときに、是非とも寛太にガサガサに付き合ってもらおうと思う。寛太の若さが沁みた。ありがとう。
その日の夕方、藤原樹(THE RAMPAGE)がふらりと我が家に遊びに来た。
前回チラッと書いたが、おそらく人間より猫が好きな樹には、私が長期間家を留守にする際、合鍵を預けて我が家に泊まり込みで私の愛猫・空子の世話をしてもらったりしていた。
この日は、別に何の用事もないのに、ただ彼が我が家に来て、ただ一緒にテレビを見ながらずっーと喋って、腹が減ったのでウーバーで夕飯を頼んで、食べながらも食べ終わってもずっーと喋る、そんな日だった。
結局我が家に6時間近く滞在した樹。この人は、私の家を第二の実家だと思っている節が間違いなくある。無口だと思われているが結構喋る。しかし、それこそ猫のようにこじんまりと家にいるので、ひとりでいるときとさほど変わらぬ心持ちで一緒に過ごせるのが樹のいいところ。しかも、私がよくわかっていないスマホの機能を、ここぞとばかりに樹に教えてもらえるので助かる。これまた、樹の若さが沁みた。ありがとう。
で、眠くなったので、樹を追い返し、寝る準備をしようとしたところ、川村壱馬(THE RAMPAGE)からメッセージが来た。
「作曲にも初めて挑戦した来月リリースのソロ曲が完成しました。小竹さんに聴いていただけたら嬉しいなと思って連絡いたしました」と新曲が添付してあったので、すぐに聴く。眠気が吹っ飛ぶ位にいい曲だったし、すごく好きな歌詞だった。歌詞の中にグッとくるフレーズ、私には思いつかないようなフレーズがあったので、そこを絶賛したら、恐縮しながらも喜んでくれた壱馬。
壱馬は文章力に長けているので、メッセージのやりとりをしているとすごく楽しい。今年の私の誕生日にも、ありきたりな感じではなく、とても独特で素敵なメッセージを送ってくれて、誰からのメッセージよりも印象に残っている。昔から可愛がっている後輩が、いつの間にか開花した才能を意図せず見せつけてくれると、私は嬉しくて仕方がない。1日の終わりにまたまた壱馬の若さが沁みた。ありがとう。
さて、この寛太、樹、壱馬の3人に共通することがある。
彼らが10代の頃に、「生きていく上で、言葉を知り語彙力を磨くことがいかに重要か、本を読むことがいかに自分の糧になるか、知的好奇心がいかに自分を育てるか」を私は力説していたらしい。3人とも、それをものすごくよく覚えてくれている(当の私は覚えていないが)。そのせいか、この3人とは、相性がいいとか、性格が合うとかだけではなく、「言葉が合う」のである。だから会話が弾むし、文章の交換が楽しい。
気持ちの若さと体力の衰えのバランスがとれなくなってきている今の私にとって、大好きな後輩たちとの交流はどんな美容法よりも絶大な若返り効果がある。まるで心にボトックス注射を打ってもらっているような感じ。
ってことで、今の私はガサガサをやる日を心待ちにしている。Amazonでガサガサ用の網2本もすでにしっかり注文済みだ。
What I saw~今月のオフショット

ランペメンバーで、初めてサシ飯をしたのが川村壱馬。あれから10年経って、著しく成長しているのにもかかわらず、良いところは全く変わっていない壱馬。作詞した曲を歌ってもらうと、いつもその歌声と表現力に「参りました!」と感動します。

藤原樹と私は最近オレンジチキンにハマっています。何年間もしょっちょう一緒に食事をしているので、食べ物の好みがだんだん似てきている私たち。ちなみに樹は、かなり少食。しかも、飲みものは…夏でも常温を好みます。

昔から、寛太は買い物についてきたり、気づくと我が家にいたり、神出鬼没な犬みたいな存在。しかし、本の趣味が合うので、小説や漫画の情報交換ができる大切な後輩です。私は面白い本を読むと、ついつい寛太に連絡してしまいます。
小竹正人(おだけまさと)
作詞家。新潟県出身。EXILE、三代目J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE、E-girls、小泉今日子、中山美穂、中島美嘉など、多数のメジャーアーティストに詞を提供している。著書に『空に住む』『三角のオーロラ』(ともに講談社)、『あの日、あの曲、あの人は』(幻冬舎)、『ラウンドトリップ 往復書簡(共著・片寄涼太)』(新潮社)がある。