本当は興味津々なのに、決して踏み出せない――芸人 紺野ぶるまさんの自分観察。【連載「奥歯に女が詰まってる」】
素直になることでなにかを失った女

気分が乗らないときにSNSをみていると、胸がざわつくときがある。
楽しそうにしている人をみつけたときだ。
そこで思い出すのが、自分のコントである。10年近く前に作った、中華街にいそうな強めな口調の占い師のコント。ざわついた気持ちを抱いたとき、私は決まってこのコントにそれを落とし込んでいた。
年は? 21歳? モデル? 見たことないよ!
家は? 実家? 一人? 一人はどこ? 代々木?
はい、カードでてます。
あんた人の金でゴルフしてるだろ、してるでしょ!
人の金で食べたシャインマスカットをインスタにあげるのやめて!
仕事運? モデルやめて医療事務の資格取るのが吉!
つまりは偏見ネタである。相変わらず今も偏見は多少ある。
しかしネタにすることはない。
何せ、気づいてしまった。
私は、めちゃくちゃゴルフをしてみたいのだ。
できるなら人の金で、だ。いや、絶対に人の金で、だ。もちろん誰もお金をくれないからまだしてないのだ。
キラキラしてるインスタ投稿をみると「ん〜香ばしいですね〜」とメモして、いじる私。
いじられるのはこの人たち、として、自分のメンツを保っていたのだと思う。
このネタには他にK-POP、シャインマスカットなどが出てくるのだが、シャインマスカットを好きになり始めた頃から偏見を持つことを諦め始めた。
「ああ、私こういうの食べてみたかったんだ…」と自覚してしまったからだ。
グルテンフリー、ピラティスやパーソナルジム(からの#今日のワークアウト)、アロマを焚きながら瞑想、10年経った今、すべて大好きなのだ。
手を出さなかった時期より、網羅した今、体が軽い軽い! 寝起き快適! 人をいじろうなんて気はほとんどおきないくらい快適!
アサイーボウルも流行ってすぐ食べに行けるほどに、私はアップデートした。家でもよく作っている。だって本当に美味しいから。
「インフルエンサーさんっていろいろ教えてくれるいい人だったんだ(もちろんみんながみんなじゃないけど!)」
…となれば、気分を変えたいようなとき、方法は簡単である。SNSを見ていて「かっこつけちゃって」とちょっと胸がざわつくものを片っ端からやってみたらいいのだ。
目下、最近の私が始めたのは「砂糖をデーツシロップに変えること」「ミニマリスト」だ。
どちらもやってよかった。自分の心に素直になれている実に心地よい時間。
しかし肝心のネタはてんで進まない。
斜に構える以外での表現方法をまだ知らないのだ。芸人としては終わっている。
「そんなんだったら医療事務の資格とれ!」と占い師に言われてしまいそうである。
最後に
自分の気持ちに素直になった今とかけまして
芸人としての自分と解きます。
その心はどちらも瞑想(迷走)してるでしょう。
紺野ぶるま(こんのぶるま)
1986年9月30日生まれ。松竹芸能所属。著書に『下ネタ論』『「中退女子」の生き方 腐った蜜柑が芸人になった話』『特等席とトマトと満月と』がある。
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