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TIMELESSPERSON

2025.01.12

足元がふわふわするほどの興奮と快感を味わって…【紺野ぶるま】

本当は興味津々なのに、決して踏み出せない――芸人 紺野ぶるまさんの自分観察。【連載「奥歯に女が詰まってる」】

一千万円より価値あるものを知った女

紺野ぶるまエッセイ

先月、ここに書かせていただいた「女芸人No. 1決定戦 THE W」。そのあとすぐM-1があり、年も明け皆さんのなかの記憶はもうすっかり薄れてしまったかもしれないが、初めて準優勝できたし、せっかくなのでもうひと感想、お付き合いいただきたい。

何せ賞レース史上「過去一楽しかった」のである。

好きなネタをのびのびやり、思いのままにボケる。いつもは緊張してできない私が、本番でちゃんとできたのは初めてだった。

結果や賞金はもういいやと思っていたからだと思う。というか、直前であまりに緊張してうまくできなさそうだったので、そう思うことにしたのである。そしてうまいこと楽しむ方向にシフトできたと思う。

まるで学生時代の文化祭のようだった。

中退こそしたが、短い学生生活のなかで一度だけ経験したそれで、お化け屋敷をやった。準備の際の小道具集め、ワクワクしながら配置決めをして、本番ではお化け役をやった。無我夢中で教室を走り回り、来た人を「わ!」と驚かしては一人でケタケタ笑っていた。

自分たちが用意したものにリアクションがあるのが快感で、足元がふわふわするほど興奮していたのを覚えている。

収益や成績などのカセがあったらああはいかない。きっとあそこまでは楽しくなかっただろうと思う。もちろん目標は優勝だったので残念ではあるし、優勝賞金の一千万は実に大きい。老後に響く金額である。

しかしながら他の組の優勝が決まったときの私といえば「よっしゃ! 敗者コメントで面白いボケ一個ある!」だったのである。時間がなくカメラが回ってこないまま生放送が終わり「あ〜あ、出せなかった〜」ということに残念がっていた。

あの瞬間、自分にとって重要なのは一千万よりも、文化祭のあの「わ!」という快感なのだ、と知った。

負け惜しみに聞こえるかもしれないが、本音でそうなのである。

「悔しすぎて都合のいいように頭の中で処理してるだけだろ!」とも疑ったが、何度考思い返しても「うわ! 負けた! あれ何でだろう平気だ…あ! 腹に私が書いた下ネタ論が入ってるからだ」とスカートに挟んでた著書を出せなかった悔しさなのである。

すでに始まっているR-1予選。長くボケたいなら優勝しなければと思う所存である。

最後に

お化け屋敷とかけまして

学生時代と解きます。

その心はどちらも

化かしたり(馬鹿したり)する時間が楽しいでしょう。

紺野ぶるま(こんのぶるま)
1986年9月30日生まれ。松竹芸能所属。著書に『下ネタ論』『「中退女子」の生き方 腐った蜜柑が芸人になった話』『特等席とトマトと満月と』がある。
Instagram @buruma_konno
@burumakonno0930

TEXT=紺野ぶるま

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