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TIMELESSPERSON

2024.06.20

月9「海のはじまり」の脚本家・生方美久の次回作は学園ドラマ!?

令和の清少納言を目指すべく、独り言のようなエッセイを脚本家・生方美久さんがお届け。生方さんが紡ぐ文章のあたたかさに酔いしれて。【脚本家・生方美久のぽかぽかひとりごと】

アンディやリリイが刺さった若者時代

TikTokで昔の曲に合わせて若者たちが踊っている。‟若者”という言葉を使うのは難しい。わたしみたいな30代はちょうど難しい。さすがにTikTokで踊らないし、平成文化にワクワクするけど、上の世代の人からしたら、我々が「最近の若者は」なんて語るのは鼻に付くようだ。そりゃそうだ。小学生のとき、中学生はとても大人で怖く見えたし、二十歳になったとき、十代の後輩に聞こえるように「二十歳超えると身体にガタが~」とわざと話したものだ。結局は、どんな環境で、どんな人から見たら、という基準があっての‟若者”なのだ。31歳のわたしは、脚本家という職業のなかでは若手だが、テレビドラマよりTikTokを観る現役高校生からしたら立派なババアだ。

31歳をババアだと思っていた高校生のわたしは、音楽がだいすきだった。ドラマや映画ももちろんすきだったが、なにより音楽だった。TikTokもInstagramもなかったが、当時は前略プロフィールやmixiというSNSの前身が流行っていて、学校の友人と上手くやれなかったわたしはこれらで音楽の趣味が合う友人をつくって一緒にライブに行ったりしていた。今のSNSと大して変わらない。当時も誹謗中傷が問題視されていたし、問題視されただけでまったく改善されなかった。今のSNSと、おんなじ。

そんな高校時代にすきになったバンドのひとつに、andymoriがいる。10年前に解散したが、その後もずっと不安定でふにゃふにゃな精神を支えてくれている。ボーカルの小山田壮平さんのソロも、その後結成したALというバンドのライブにもしつこく通っている。ふにゃふにゃなままでもいいか、と思える。

先日、Twitterのおすすめトレンドに「andymori」と出てきた。なんだ?と思っていくつか投稿を見てみると、「若者がTikTokでアンディの曲を踊っている」とのことだった。いやいや。嘘嘘。と思った。昔の曲がTikTokで流行るという文化は知っていたが、もっと昔の曲のイメージだった。昭和や平成初期の曲が令和に改めて流行るという印象だった。ねぇ若者、andymoriはちょっと最近すぎない?と思った。あと、‟改めて”流行るという印象。高校生のとき、アンディを聴いてたのはライブハウスに行くような子達で、大学時代に解散を惜しんでいたときも、多くの人とその悲しみを共有することはできなかった。その二年後のSMAP解散に比べたら、世の中的には小さな出来事に見えた。なのに、今?なんで?若者よ、なんで?

そもそもTikTokを観る習慣がないので、アンディを探しにいったときは目も耳もチカチカガヤガヤして単純にしんどかった。アンディより先に自分の老いと直面した。解散したときに勝る悲しみ。悲しみの果てに見つけた、アンディで踊る若者。たしかに踊ってた。『すごい速さ』という曲に簡単な振り付けをしている。自分の青春がまったくの別角度で消費されている。それが嫌というわけでも否定したいわけでもなかった。ただただ、時代が変われば、作品に触れる人の年齢や感覚も変わり、同じ人間が同じ作品をどう見るかさえ変わっていくいうことを実感した。

とても困る質問の一つに「一番すきな映画は何ですか?」というのがある。「その時の精神状態で変わります」というのが正直な答えだが、大人が仕事をするというのは、正直ではいられないということだ。なので、「映画をすきになったきっかけは『リリイ・シュシュのすべて』です」と若干質問意図をずらした答えをしている。2001年公開の岩井俊二監督作である。高校二年生のとき初めてこの映画を観た。あまりにもぶっ刺さってしまった。17歳のわたしの脳内はリリイや雄一、津田詩織と久野洋子でいっぱいになってしまった。チラッと前述した通り、学校という閉鎖空間に嫌気がさしていた時期で、音楽が逃げ場だった自分には、この救いようのない物語が圧倒的に希望だった。当時すきだった人にDVDを貸し、返って来た感想が「重いね」だけで、「は?」と思ったのも良い(良くない)思い出です。すきな男の子に薦める映画ではない。

いま観てもまったく色褪せていない素晴らしい映画。でも、あのぶっ刺さりようは、初めて観たあのとき、17歳で、学校がきらいで、音楽が逃げ場で、他のたくさんの映画にまだ触れる前だったからだろう。思い返せば、自分が大人になってからハマった学園ドラマはまだないかもしれない。「ごくせん」「野ブタ」「花男」「イケパラ」「Q10」なんかにこんなにも想いを馳せてしまうのは、きっとそれらを観たとき、自分も小学生~高校生だったからだ。若者の基準と一緒だ。どんな環境にいるどんな人が観るかで、作品の印象は変わる。

とはいえ30代の今聴いても、アンディの『teen’s』はしっかりと刺さる。そういうこともある。10代を思い返して刺さったり、今もそうだなぁと直接刺さったり。刺さったものをヒュッと抜いたとて、そこにできた穴は別の何かで埋まるわけじゃない。大人になってもトラウマは消えないのといっしょ。心の傷は一生癒えないのといっしょ。若者時代に確実に刺さった音楽も映画も一生ものだ。

学園ドラマがつくりたい。今TikTokで踊っている若者たちに刺さるテレビドラマがつくりたい。その子たちが31歳とかになったとき、「令和初期にやってた○○って連ドラがわたしたちの青春」とかなんとか言って、新たな若者たちから煙たがられてほしい。

生方美久(うぶかたみく)
1993年、群馬県出身。大学卒業後、医療機関で助産師、看護師として働きながら、2018年春ごろから独学で脚本を執筆。’23年10月期の連続ドラマ「いちばんすきな花」の全話脚本を担当。

TEXT=生方美久

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