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TIMELESSPERSON

2024.02.29

2024年、脚本家・生方美久は「最強運勢らしい」

令和の清少納言を目指すべく、独り言のようなエッセイを脚本家・生方美久さんがお届け。生方さんが紡ぐ文章のあたたかさに酔いしれて。【脚本家・生方美久のぽかぽかひとりごと】

生方美久

最強運勢

2024年のわたしは最強運勢らしい。年明けのとあるテレビ番組で、星座と血液型の組み合わせ、全48通りの運勢ランキングが発表された。毎年恒例のやつらしい。放送の数日後、SNSでその話題が流れてきたので「ふーん。とりあえず確認しとくかな」という感じでランキングを見た。

1位が牡牛座のA型だった。

牡牛座のA型……わたし!!! 牡牛座のA型!!!!!! こういうの大抵半分よりちょっと下の微妙な順位とりがちなのに! 1位!!! さすがに1位はテンション上がる。

星座だけの12通りとか、なんなら血液型の4通りとか、それはさすがに人類の分類さぼりすぎ……この世に12種類や4種類の運勢しかないわけないじゃん……と思ってしまうが、48通りまで増えるとなんだかグッと期待できるしシンプルにめっちゃうれしい。やったね。浜ちゃんが同じ牡牛座のA型らしい。お互いいろいろあるけど前向いてこうな。良い年にしような。

ちなみに年末年始は体調を崩したうえに、書かねばならぬ原稿がドドッと押し寄せたタイミングだったので、全然最強じゃなかった。ただ書いて、薬飲んで、寝て、書いて、鼻かんで、寝て、書いて、書いて、書いて、鼻かんで、薬飲んで、書いた。こんなスタートダッシュのどこが最強運勢なんだ……と思うが、体調が回復し、原稿もなんとか提出できたということはこっから超最強運勢の幕開けということ、だと、思う、たぶんきっと。

そんなこんなで、またせっせと次の原稿を書いていた1月中旬。また別のテレビ番組で、今度は干支と生まれ月の組み合わせ、全144通りの運勢ランキングが発表されていた。

うわぁ、144通りて……やめてよ、最近1/48になって浮かれたばっかりなのに……もっとレベル高いの作らないでよ……なんなの干支とか持ち出しちゃってさ……血液型でいいよ……これで酉年5月生まれが100位以下だったら今年の運勢どっちなん? ダウンタウンを信じるか、くりぃむしちゅーを信じるか、って話になってくる……とりあえず上から順に見てこうかな……1位、酉年5月生まれ。……酉年5月生まれ!!!!!!

え!え!上田さん!!!! 1位です!!ダウンタウンからも!くりぃむしちゅーからも! 1位をいただきました!!!!!!! こんなんなんぼあってもいいですからね!!!! うれしいを通り越してちょっと引く!!!!!!!!!

うれしいを通り越してちょっと引いた直後、「これエッセイに書こ~」と思った。前回、前々回とちょっとガチめの仕事にまつわる話をしてしまったので、次は緩やかで軽やかである種どーでもいい話をしたかった。だから超ちょうどいい。「運勢が良いらしい!」という話題は程よくどーでもよく、でも当事者としては結構うれしいやつ。超ちょうどいい。2つの運勢ランキング、わたしにエッセイのネタをありがとう。酉年・5月生まれ・牡牛座・A型にわたしを産んでくれたお母さん、ありがとう。ただ、ここまでくると来年の運勢がめっちゃ怖い。

が、わたしはその来年への恐怖を払拭するカードを持っている。ちょうど一年くらい前、友人とちゃんとした(?)占いに行ったときに判明した最強運勢の話。わたしは9歳~29歳が天中殺なんだそう。天中殺っていうのは、超簡単に言うと最低運勢ってことらしいのです。誰もが全員、人生のうち連続した20年間の天中殺があるそう。わたしはそれを去年ようやく脱したのです(去年の5月で30歳になった)。小学校3年生で始まり、10代20代という普通だったらキラッキラで人生ピークみたいな美しい期間をほぼ天中殺で過ごしたのです。占い師さんに「あなた天中殺が9~29歳ね」って言われたとき自分でも「わたしっぽい!」って笑ってしまいましたよ。

一緒に行った友人の天中殺はこれから訪れるらしい。『いちばんすきな花』を観たその友人が「教室移動が嫌って思ったことなかった」って言ってたのは、学生の期間に天中殺じゃなかったからだ。納得。天中殺真っ只中に学生だったわたし、学校嫌いに決まってるよ! 学校が社会のすべてだったんだから! そんなわけで、早いうちに天中殺を突破したおかげで(つらい学生生活を送ることになったが)30歳からは死ぬまで最強なわけだ。なんかいろいろ繋がってきたな。やっぱ今年最強な気がしてきたな!

そんな最強運勢の2024年も、もう一ヵ月半が過ぎた。今年(に入ってからここまで)を振り返ってみると……うん。もちろん良いこともあったけど、まぁいきなり体調崩してるし、ひたすら原稿書いててこれといって何か特別なことが起きたわけでもない。常に次回作への不安でメンタルはぐっちゃぐちゃである。

よくよく考えたら一年って365日……今年は366日もあるわけで、毎日毎日ハッピーなわけがない。心配性の自分はハッピーが続きすぎると逆に不安になりハッピーが薄まるという悲しい性である。トータルで素敵な一年になることを目指そう。次回作への不安が達成感に変わるよう、今日も地道に生きよう。どれだけ占い師やテレビ番組に「最強運勢だよ!」と言われたところで、パソコンに向かわずして脚本が仕上がるわけがない。結局は自分の行動や判断で運勢を引き寄せるしかない。

酉年・5月生まれ・牡牛座・A型のそこのお前、パソコンに向かえ。寝るな。書け。本当に今年が最強かどうかわかるのは、それからだ。

生方美久(うぶかたみく)
1993年、群馬県出身。大学卒業後、医療機関で助産師、看護師として働きながら、2018年春ごろから独学で脚本を執筆。’23年10月期の連続ドラマ「いちばんすきな花」の全話脚本を担当。

TEXT=生方美久

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