男女問わず、どこか惹かれてしまう人間的な魅力がある、いわゆる“元ヤン”ことかつて“やんちゃ”をしていた方々。神崎恵さんが憧れを抱く“元ヤン”の魅力とは…?【連載「Megumi’s Mirror」】
ヤンキーになってみたかった
先日、なぜだか突然、不良の話になったとき、「不良漫画と言えば、紡木たく先生の『ホットロード』! いや、あれはもう、青春そのもの。不朽の名作だよね!」と、同世代のライターさんと大いに盛り上がりました。と、その横で、ぽかーん、とする20代アシスタント。
「え、え? もしかして、『ホットロード』知らないの? ヤンキー漫画の名作だよ!」
「知りません。私たち世代のヤンキー漫画と言えば、『東京卍リベンジャーズ』かと」
愕然とする昭和生まれの私たち。そうね、そうよね。『ホットロード』は1980年代の名作。そりゃ、知らないか。改めて痛感する、ジェネレーションギャップ。
ちょっとだけ『ホットロード』の解説をすると、母親との確執を抱える14歳の少女と、地元の暴走族に属する少年との純愛漫画。’86年から別冊マーガレットで連載されました。あまりにもリアルな10代の目線や言葉が、紡木たく先生の繊細なタッチの絵と相まって、同世代の自分に刺さりまくり、当時はもちろん、今読み返しても心震える名作です。
特に、主人公の女の子・和希が、自分の居場所を探すなかで、暴走族の少年・ハルヤマと出会い、無免許でバイクに乗ったり、化粧を覚えたりと、だんだんと危険な道に惹かれていく過程は、いけないことだとわかっていつつも、目が離せませんでした。
何より、いわゆるヤンキーのハルヤマは、ケンカはするし、悪いこともするけれど、まっすぐで、情に厚くて、筋を通す男。そして、和希のことを心底大切に想っています。優等生でもなく、もちろんヤンキーでもない私は、そんな彼らが生きる世界に強烈に憧れたのだと思います。
そういえば最近、ある人に「神崎さんは、ヤンキーマインドが足りない」と言われてドキッとしました。
「もっと奔放で、自分勝手でいいんじゃない? 何でも先回りしすぎ、考えすぎ、配慮しすぎ。みんながみんな、オラオラなヤンキーじゃないけれど、時には、周囲を振り回す奔放さや大胆さを持って、オラオラしちゃっていいんじゃない? 嫌われたっていいじゃん。一回、本気でヤンキーやってみなよ。義理人情に厚くて、徹底的に筋を通すところや、いざというときの腹のくくり方は、ヤンキー以上なんだから」と。
あぁ、なんだか泣きそうになってしまう。あまりにも、的確すぎて。
拭いきれないワルな雰囲気と、すっと相手の懐に入ってしまう憎めないキャラクター。強引で、厚かましさもあるけれど、奔放で自由、情に厚くて、義理堅い。さまざまな業界の最前線で活躍されている人たちのなかで、いわゆる“元ヤン”と呼ばれる人たちは少なくありません。男女問わず、どこか惹かれてしまう人間的な魅力があります。
一方私は、強く見られることもあるかもしれないけれど、意外と行動する前に考えすぎるタイプ。先回りして配慮しすぎるあまり、周りと噛み合わなくて、誤解されることもしばしば。だから結局、一匹狼になってしまいます。
ゆえに、「神崎さんは、孤高の武士」なんて言われることも。
ヤンキーというより、武士、か。
そんな自分も嫌いじゃないけれど、もしかしたら今、私に必要なのはヤンキーマインドなのかもしれません。昔も今も、ヤンキーへの憧れは変わらないのね、と改めて思った次第。久しぶりに『ホットロード』、読み返してみようかな。