今年5月からポッドキャストの配信を始めた神崎恵さん。日常的にラジオを聞いている神崎さんが、声を通して伝えたいこととは?【連載「Megumi’s Mirror」】
声は口ほどにものを言う
ラジオが好きです。
朝起きて、家事や支度を済ませ、8時前には車に乗り込みます。仕事先へ向かう車内ではまず、J-WAVE「TOKYO MORNING RADIO」をオン。別所哲也さんの穏やかで優しい声に包まれて、やっと“私の朝”が始まるといっても過言ではありません。
何気なく聴きながら、ふと気になったニュースや心に残った言葉を、あとから自分で調べてみることも多々あります。
目から入ってくる情報は、その一瞬にすべてを賭けているくらい情報量が多くて(たとえ整理整頓されていたとしても)、時に、見たくないものまでも入ってきてしまいます。
これだけ情報があふれかえっている世の中で、耳から得る情報は、“私”の基準で、自分の意思で、聞き流したり調べたりできる。思いがけない出会いもあったりして、そこが好きなんです。
長い間、美容家という仕事を続けてきて、最近、自分の顔が邪魔だな、と思うことがあります。もちろん、メイクやヘアのこと、ファッションについてなど、自分の顔がひとつの情報源となってお伝えすべきことはたくさんあると思います。
でも、写真にしてもインスタグラムにしても、どうしてもビジュアルは、情報過多になってしまいがち。「知りたい」「聞きたい」と思う純粋な好奇心を、どこか、削いでしまっているような気がしていました。
そんななか、ずっと気になっていたのだが、「声で伝えると言うこと」でした。しかも、役に立つ情報をお届けする、ということではなくて、なんとなく構えずに聞けて、ゆるーく繋がれる。かしこまらず、出入りも自由! たわいもない話をしながら、くすっと笑って、へえっと驚いて、わかるーっと共感し合える…。
そんな場所や仲間をつくりたくて、5月からポッドキャストで配信を始めました。
番組名は『WONT(ウォント)』第1回を聞いていただくとわかりますが、「わたしのお名前、なんてーの?(WATASHINO ONAMAE NANTENO?)」の略語、造語です(笑)。
これまで、全力で、全速力で、息継ぎする間もなく隙間を埋めるように生きてきて、ふと、「あれ、私、だれだっけ?」と思う瞬間があって。そのたびに、一度立ち止まって、深呼吸して、とん、と句読点を打つように、「私は私だ」と思い出す時間が必要だなと痛感していました。『WONT』は、そんな時間、場所になるといいなと思って名付けました。
毎週水曜日の夜、友人でもあり、編集者でもある大森葉子さんとふたりで、人生から、友情や育児、キャリア、恋愛、時々美容の話など、ゆるーくおしゃべりしているので、ぜひ一度、覗いてみてください。
ポカリスエットは粉派か否か(部活時代、ポカリのパウダーを水に溶かして飲んでいましたよね?)、タマゴの賞味期限って結局いつなの?など、びっくりするほどくだらないネタを、えんえんと語っています(笑)。何を得るでもなく、肩の力を抜いて、ただ聞き流しながら、働きマンたちの疲れが少しでも取れたらいいなぁ、と思っています。
それにしても。改めて、声って不思議だと思います。「目は口ほどにものを言う」ということわざがありますが、声はさらに、目よりもその人の心情、本音が現れるような気がします。声のトーンや感情ののせ方、話す速度etc.。配信を自分で聞き返しながら、もっともっと“心地よい間”を上手に使えるようになりたい。そんなことを思っています。