少し前に引っ越ししたという、神崎恵さん。物件選びから荷物の整理…引っ越しは疲れるけれど、いい機会でもあったと気づいたそう。【連載「Megumi’s Mirror」】
引っ越しは疲れるけれど
ご存知の通り、私は占いや吉日を気にしないタイプなので、家相や方位にこだわることなく、物件も内見したのは3軒だけ。引っ越し日も、大安や一粒万倍日などではなく、自分の仕事や子供たちの都合で決めました。
物件を選ぶにあたってこだわったことといえば、日当たりと抜けの良さでしょうか。明るい光が差し込むことと、風や“気”がすうっと通っていくような抜け感がある空間、という条件を不動産会社の方に伝え、実際に行ってみて、入った瞬間、「あ、なんかいい! 迎え入れてくれているのかも…」と直感した家に決めました。
それともうひとつ、人との相性も決め手でした。担当してくださった営業の方や、偶然お会いした近隣の方。「なんかこの人、いいなぁ」。そんな直感的な相性も大切にしました。
それにしても、引っ越しって、なんであんなに疲れるんでしょうか。
あれを捨てて、これを残して。今日はクローゼットの中を整理して、明日はキッチン周りをやろう。なんて思っているうちに、あっという間に引っ越し日が迫ってくる。結局、全部段ボールに詰めてとりあえず新居へ。今日こそは整理整頓しよう、と思いつつ、いつまでたっても段ボールは片付かない…。
そんな話をしていたら、友人が「ものを捨てるとか選ぶって、“決断する”ことでしょう? 決断には、膨大なエネルギーを使うんだって。だから、歳をとると、だんだんものが捨てられなくなるのは、消費できるエネルギーが減ってきているかららしいよ」と。
確かに。決断するって、パワーをものすごく使います。引っ越しは、物件選びから始まって、整理整頓、取捨選択など、決断の連続。なるほど、疲れるわけです。
仕事柄、化粧品や美容関係のものが多いのは仕方ないとしても、驚いたのは洋服たち。「あなたたち、どこから出てきたんですか!?」と思わず叫んでしまうほど溜まっていた洋服を、これを機に一度、断捨離することにしました。とはいえ、自分ひとりでやると、「これ、あんまり着てないけど好きなんだよなぁ」「いつか着るかもしれないからやっぱりとっておこう」と、まったく捨てられない。
そこで、プロの手を借りることにしました。信頼するスタイリストさんふたりと私、3人で「いる/いらない」を判断。結果、私の元から離れることになった洋服やバッグ、靴たちは、フリーマーケットに出店したり、かわいく着てくださる方へお譲りしたり。
改めて、残った洋服たちを眺めると、そこには、いっときのときめきに心奪われることなく、長く愛して大切に着続けてきたもの、私が変化しても静かに寄り添ってくれたものたちが並んでいました。
「これからもずっとそばに居て、一緒に歳をとっていこう」。そんな、愛しい気持ちがあふれてくるとともに、ものが少なくなったクローゼットの心地よさに浸る私。
歳を重ねるにつれ、ものや経験、知識や人間関係など、いろいろなものを身につけ、人はどんどん身重になっていくけれど、時には立ち止まって、思い切り身軽になってみるのもいいかもしれない。
何を選び、何を捨て、何と一緒に、何を育んでいくのか。決断するパワーと、研ぎ澄まされた直感力が必要だけれど、引っ越しは、その力が衰えていないかを知るいいチャンスといえます。あまりにも大変すぎて、しょっちゅうするのは勘弁ですが(笑)、引っ越しは、そんなことを考える素敵な機会でもありました。