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MYSELFウェルネス

2024.12.23

ココロの距離、保てていますか?対人関係で悩まないために知っておきたいこと

“わたしの心地よさ”を基準に行動することが、ウェルビーイングに生きるカギになる。そのために、もっと自分自身を知る=自分のトリセツを手に入れませんか? 保健学博士の島田恭子さんがナビゲート。【連載「自分学 わたしのトリセツ」vol.23】

対人関係の距離感、あなたはどのタイプ?

自分学

突然ですが質問です。
あなたは3つのうちどのタイプ?

A:「人からの頼みは、とりあえず断らない」
「あの人苦手なんだけど…、誘われるとなかなか断りにくいのよね」
「誰かに期待されたら、とことん頑張ってしまう」
「自分も余裕ないんだけど…、ついつい人に合わせてしまう」

B:「人のために自分の時間を割くつもりはない」
「お誘いは、基本断る!」
「できることはあるけど…、別に手伝いたくない」

C:「自分の余力があるならお手伝いする」
「お願いを断ることはあるけど、そんなに強い罪悪感は感じない」
「私はここからはできないけど、ここまではできるから手伝う」

自分学

これは私たちの対人関係上の距離感についての質問です。

Aのタイプを選んだあなたは…
優しくて、人の役に立つことをうれしいと感じられる人です。周りの人のために何かをしたいと感じられることはとってもステキなこと。ですが時として期待に応えるために自分を犠牲にしたり、尽くしすぎたりすることがあるかもしれません。また一生懸命やってあげるだけに、それに応じた感謝や関心を得られないと、怒りや悲しみを感じることも。
たとえば「パートナーに尽くしすぎて、挙句の果てに捨てられてしまう」「子どもに過干渉といわれる」「なんだかいつもまわりの人より仕事を頼まれがち」という方は、このタイプかもしれません。

Bのタイプを選んだあなたは…
自分以外のものとの距離感をとりすぎるタイプです。もしかしたら昔、信じていた誰かに裏切られたり、大切な人に見捨てられたと感じた経験が、あなたに人との距離をとらせているのかもしれません。今まわりにいる誰かがあなたと交流を持ちたいと望んでいても、あなたとの距離が遠すぎてそれが叶わない状態です。そうすると人間的な交流が減り、孤独な状態になったり、助けてほしいときにサポートを得ることができません。

Cのタイプを選んだあなたは…
どんな相手とも適度な距離をとることができるあなた。たとえ立場が上の人や、攻撃的な相手であっても、その距離感をきちんとキープできるから、対人関係上のストレスが少ないタイプです。「自分の余力があればサポートする」「自分が無理をするくらいなら断る」といったように、人と適度な距離感を保てるからこそ、相手ではなく自分の状況を基準に、かかわりを決めていくことができます。

適度な心理的距離の保ち方

コロナ禍で「ソーシャルディスタンス(社会的距離)」という言葉が広がりました。それに対して私はこれを「心理的距離(Psychological Distance)」と名付けています。いわゆる相手との”ココロの距離感”ですね。

今見てきたタイプでいうと、Cが、最適なココロの距離感をとれそうです。ところが、日本女性で圧倒的に多いのは実は、Aタイプさんなんです。また精神科クリニックや心療内科に通う、気分・不安障害の女性たちの多くも、このタイプだと感じています。

その根底にあるのは、この連載のテーマでもある”自分軸”にもかかわっています。自分の状況や思いより、相手を優先し忖度してしまう。「期待に応えるために自分を犠牲にして」という言葉が象徴的です。
Cさんの「自分のできる範囲で」とか「自分に余裕があるときは」といった、「自分」が主語となっているのとは逆の状況ですね。

それではどうやったら私たちは、Cのタイプに近づけるのでしょうか。そこでヒントとなるのが「対人関係のマッピング」というやり方です。

自分学

私たちのまわりにはさまざまな対人関係があります。この図の中心にいる白い人が自分だとすると、一番濃いオレンジのところが「第1層」、次の薄いオレンジが「第2層」、そのまた薄いピンクが「第3層」となっていきます。それぞれの層は薄い膜で隔たれているイメージです。
それぞれに入るのは、
第1層:親・こども、きょうだいなどの家族、パートナーや恋人、親友など
第2層:親戚、友達、仲の良い近所の人など
第3層:知り合いレベルの友達、職場の人間関係、家族の友達(ママ友)など
といった感じ。
(※職場で知り合った人が親友になったりパートナーになったり、という場合は第3層→第1層に移動します)

こうして見てみると当たり前のようですが、私たちは往々にしてこのココロの距離感を、間違えてしまうことがあるんです。

たとえば、上司や顧客からのハラスメントや、ママ友からの嫌がらせに悩んでいるような場合。本来であればその人たちは自分にとって第3層の人たちですから、そこで何をいわれようと、薄い膜の向こうの向こうの向こう側で、なんか言ってるな、くらいに思えばいいのです。でも恐怖や不安から、ついついココロの距離感を忘れ、その人たちを濃いオレンジの層の中に入れてしまうんですね。そうするとどうでもいい(失礼)彼らの言動が、必要以上に自分に大きく影響してしまう、というわけなんです。

また、第1層にいる人達を、さらに中心にいる自分の中に入れてしまう場合も要注意です。たとえば、自分の大事な子どもやパートナーを大事に思うあまり、自分の体の一部のように所有物化してしまうような場合です。たとえ親であってもパートナーであっても、自分とは別人格。人を所有物化していいはずはなく、れっきとした別人格として、適度なココロの距離感をもって接する必要があります。でもついそこを忘れて自分の中に入れてしまうと、相手は窮屈に感じ、せっかく大事に扱っているのに「過干渉」とか「重い」と言われてしまいかねません。第1層にいる大事な人であっても、決して自分の中には入れないということが、とても大切です。

私たちがまわりの人と接するとき、Cのタイプのように、遠すぎず、近すぎず、適度な距離感を保つためには…? このマッピングの法則をもとに、いま接している相手とのココロの距離感を意識すること。これができると自分を見失うことなく、相手に翻弄されることなく、心地よい関係が築けるようになりますよ。

島田恭子(しまだきょうこ)
予防医学者・保健学博士。医学や心理学の知見を、女性のウェルビーイングに役立てたいと活動中。(社)ココロバランス研究所代表。
https://customer-harassment.org/kyokoshimada/

TEXT=島田恭子

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