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MYSELFウェルネス

2024.11.23

「カスハラ」するタイプ、しないタイプ?その違いにはある法則があった

“わたしの心地よさ”を基準に行動することが、ウェルビーイングに生きるカギになる。そのために、もっと自分自身を知る=自分のトリセツを手に入れませんか? 保健学博士の島田恭子さんがナビゲート。【連載「自分学 わたしのトリセツ」vol.22】

ゴキゲンに生きる方法

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今年の流行語大賞にもノミネートされた「カスタマーハラスメント」=通称カスハラ。実は私、この数年、カスハラに関する研究や対応アドバイスにかかわってきました。ですので今回は、「カスハラしてしまうフキゲンな人」の調査研究を通してわかった、「ゴキゲンに生きる方法」を、お伝えしようと思います。

もともと「はたらく人のこころのケア」を専門に、研究やアドバイスをしていました。国内外のデータを見ていると、あることに気づいたんです。
 
——「ナース・介護士さんなど、誰かの援助を行うお仕事や、店員さん・駅員さんなど、サービス業や対人援助職の方々、メンタル悪いなぁ…、燃え尽き症候群(バーンアウト)すごく多いな…」ということ。
 
調べてみると、その理由の1つが、「感情的負担」であるとわかりました。それは、働く時間が長いとか、仕事内容に不満がある、とかではなく、人とのかかわりで、自分の感情をゆさぶるようなストレスがかかる、ということです。

——たとえば攻撃的なお客さんにも、いつも笑顔で接しなくてはいけなかったり。
——理不尽な患者さんの要求も、快く受け入れたり。

キモチとは裏腹な笑顔を続け、自分の感情を押し殺し、我慢を続けて対応する。これがいわゆる「感情労働」といわれるものです。

カスハラに苦しむ方々の実録を見ると、胸が痛くなるような暴言や態度、過剰な要求が溢れていて、とてもとても感情的負担の高い方々がいる様子がうかがえます。

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トレンドワード「カスハラ」のデータから導き出された、2つのフキゲンのタイプ、今度は逆に、カスハラする人たちに注目してみましょう。イライラ、ガミガミ、理不尽な要求、無理難題を言って、対応する方やまわりにフキゲンをまき散らしてますね。フキゲンハラスメント=通称フキハラ、って言葉も出てきているくらいです。

彼らの言葉や態度を、たくさんのデータで分析してみると…。「カスハラする人たちにも、タイプがある」ことがわかってきました。
たとえば、
——「オレをバカにするのか? オレ様のいうことを聞け!」などと、自分が相手より上であることを自己主張するようなタイプ。または、
——「正しいのは私よ!」と、ゆがんだ正義感を振りかざすようなタイプ。
単にガミガミと言ったり、理不尽な要求をしているようにみえても、その裏にはいくつもの心理的な特徴が潜んでいるんです。

そう。私たちの”フキゲン”には実はタイプがあるんですね。ここでは2つ、詳しく紹介しておきましょう。

カスハラのデータから導き出された、フキゲンのタイプ

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1.「オレ様のほうが偉いんだ!」タイプ
このタイプの方は、モノゴトの価値基準がいつも、”上か下か”にあります。
——「いま、目の前にいる相手は、自分より上なのか下なのか?」
——「自分は果たして、相手に勝っているのか、負けているのか?」
つねにそんな視点で相手を見て、モノゴトを判断します。いわゆる「マウンティング」ですね。

人を上か下かで見るくせがついているので、たとえばお店などで、ちょっとそっけなくされたり、丁重に扱われないと、「なんだよ、オレ様はおまえらより偉いんだぞ!」といった言動をして、困らせてしまうわけです。お店で、偉いも偉くないも、ないのにね。

このようにモノゴトの評価基準が”上か下か”、だと、とってもイライラします。なぜなら、誰かに会うたびに、常に”上か下か”、”勝ってるか負けてるか”のマウンティングをしなきゃならないからです(無人島にいればしなくてすみますが)。そして自分より上だと思う人に会うと、敗北感を感じます。だからいつも必要以上に「自分は偉いんだ」と、見せつけ続けて生きています。必要以上に相手を威圧するのもそのためです。いやぁ、疲れますね…。競争社会で人と比べられ、評価されてきた人ほど、そんな風に思ってしまうのは、仕方のないことかもしれません。

2.「正しいのは私よ!」タイプ
このタイプの方は、モノゴトの価値基準がいつも、”善か悪か”にあります。
——「これはこうするべきなのに、なんでみんな守らないの!?
——「これは間違っている、私が正してあげなくては」
そんな正義感をもって生きています。

とはいえその善悪のモノサシは、つねに客観的…というわけではなく、時として厳しすぎたりするので、相手はたまったものではありません。

ところが当人からすると、そのモノサシでまわりが正しく、善でないと、もう許せません。自分の善悪の基準で判断していますから、相手やまわりが善でないと、イライラします。正そうとします。マジメで完璧主義な人ほど、このタイプが多いでしょう。

こうしてみてみると、お店や病院などでフキゲンを撒き散らしている人たちは、なんとも窮屈で、ネガティブなキモチをかかえて、生きているのかもしれません。

以前の連載で、怒っている人は困っている人、とご紹介しましたが、まさにカスハラする人たちは、本当はそんな自分のスタイルに、困っているのかも知れませんね。

それでは、こんなカスハラタイプを反面教師に、どんな基準でいれば、”いい感じでキゲンよく”、いられるのでしょうか?

ゴキゲンな人の法則

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これまでご紹介してきた、フキゲンな人たち。その真反対にいる”ゴキゲンな人たち”は、一体どんなモノサシで生きているんでしょうか? 少なくとも、”上か下か”でもなく、”善か悪か”でもないのは、確かですね!

とてもとてもカンタンな言葉にしてしまうと…。
——それは、自分なりにステキに生きているかどうかです。
まさにこの連載でテーマとなっている自分軸、ですね。

先ほど出てきた2つのフキゲンタイプはどちらも、自分なりに、ではなく、社会的に上か下か?、もしくは世の中的に善か悪か?でした。

自分がステキであろうとする…ある意味“勝手な”自分基準です。でも、自分がステキでいようとすると、フキゲンを撒き散らしたりしないですよね。自分がステキでいたいから、カスハラなんてそんなカッコ悪いことしたくない。

逆にお店の人を思いやったり、「ありがとう」とココロを込めてお礼を言ったりするでしょう。自分がステキかどうかを基準にすると、人に優しくできます。人に優しくできると、まわりからも好かれ、優しくされます。 

——自分がステキでいたいから、人を傷つけることなんかしない。
——自分がステキでいたいから、困っている人を見つけたら駆け寄っていきたい。
——自分がステキでいたいから、少し勇気をだして、席を譲ってみよう。
——自分がステキでいたいから、声に出して挨拶してみる。
——自分がステキでいたいから、まわりのひとには、笑顔で接したい。
——自分がステキでいたいから、人をねたんだり、うらやんだりするのはやめておこう。
ひとりよがりかもしれないけれど、やったらキモチよくなることばかり。いいじゃありませんか。

私たち一人ひとりが、自分のステキ!を基準に、みんながゴキゲンな生き方をすれば、この世にカスハラなんか、なくなるでしょう。カスハラで苦しむ人たちがいなくなれば、ゴキゲンの輪はもっともっとひろがるでしょう。

この連載を読んでくださった皆さん。ご一緒に、「みんながステキでゴキゲンな社会づくり」していきましょうよ。

参考文献
・カスタマーハラスメントの現状と今後の課題~「カスハラ三重苦」からの脱却~(2024) 島田恭子
・【調査情報デジタル】TBSメディア総研 https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/1461331?display=1
・Zapf, D. (2002). Emotion work and psychological wellbeing: A review of the literature and some conceptual considerations. Human Resource Management Review, 12, 237-268.
・島田恭子・桐生正幸(2022) 組織資産を増やすカスタマーハラスメント対策 : ポジティブ・メンタルヘルスに着目して—特集 仕切り直しのカスタマーハラスメント対策 リスクマネジメントTODAY 25, 2, 6-9
・桐生正幸・島田恭子(2020a)「悪質クレーム対策(迷惑行為) アンケート調査 分析結果 迷惑行為被害によるストレス対処 及び悪質クレーム行為の明確化について」https://uazensen.jp/wp-content/uploads/2021/06/2ac702ad21dcbbc237388a89dadb2a50.pdf
・島田恭子・桐生正幸・染矢瑞枝(2021) 接客担当者のカスタマーハラスメント体験と組織の対策の有無との関連~心身への影響に着目して~ 28, 58 日本行動医学会学術総会 

島田恭子(しまだきょうこ)
予防医学者・保健学博士。医学や心理学の知見を、女性のウェルビーイングに役立てたいと活動中。(社)ココロバランス研究所代表。
https://customer-harassment.org/kyokoshimada/

TEXT=島田恭子

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