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TIMELESSPERSON

2026.05.20

脚本家・生方美久が自ら語る。7月スタートのドラマのキーワードは‟フィルター”

令和の清少納言を目指すべく、独り言のようなエッセイを脚本家・生方美久さんがお届け。生方さんが紡ぐ文章のあたたかさに酔いしれて。【脚本家・生方美久のぽかぽかひとりごと】

‟共感”はおもしろいのか

7月スタートのTBS金曜ドラマ『Tシャツが乾くまで』、脚本を担当しています。

いつかのエッセイで、連ドラをふたつ並行して執筆していたことについて書きましたが、ひとつはこちらです。珍しいみたいですが、民放連ドラでも放送前に脚本ができあがっていることがあるのです。情報解禁後に「お忙しいときにすみません! 執筆がんばってください!」とお仕事の連絡に一言添えてくださる方がたくさんいましたが、大丈夫です! 元気です! なんならここ最近は久しぶりにのほほんとできる日がありました。またすぐ忙しくなりそうなので、今のうちに羽を伸ばします。(魂が天使なので)

夫婦や家族、名前の付けにくい人間関係についてのヒューマンドラマです。要素としてはミステリーでもあり、ラブストーリーでもあります。ここだけのナイショ話ですが、キーワードは【フィルター】です。便利な家電には全部フィルターがありますね。お掃除がめんどくさいです。

テレビドラマは共感されないといけないとよく聞きますが、ギリギリのところで抗ったつもりです。共感できなくていい作品だと思うので、人間観察のつもりで毎週おたのしみください。この視聴者共感第一主義の時代でも、地道にコツコツとおかしな人たちの物語を紡いでいきたいです。

とはいえとっても怖い。理解(共感)してもらえない可能性が高いとわかっていながら、そんな作品を世に放つこと。怖くてたまりません。けど、テレビドラマがだいすきなので、共感重視のドラマばかりになることのほうが寂しい。ささやかに、でも胸を張って、どうにか気を確かに、トレンドに抗い続けようと思っています!

昨年の春、TBS様からとあるテーマ(放送前に明示するとバイアスがかかりそうなので伏せます)で執筆を依頼され、むずかしー!書ける自信ないー!と思いながらも、脚本の腕を上げるためにはきっと必要な試練だ……と腹を括り、夫婦や結婚についてのリサーチから始めました。こういうちょっと特殊な夫婦たちの話を独身のうちに書けたのは良い機会でした。

自ら書こうと思い立つことはなかったテーマです。脚本家としてはまだ若手と名乗れる今、この脚本が書けたのは苦しくも良い経験でした。TBS様ありがとうございました。制作はケイファクトリー様です。千葉Pと宮川Pに大変お世話になりました。情報解禁時の千葉さんのコメントがとても的を射ていました。そういう感情を追っていくドラマです。コメント全文はホームページでご確認お願いください♡(千葉さんへのハードルを上げる♡)

まだ主演とスタッフしか発表されていませんし、ミステリー要素があるので内容については多くを語らないでおきます。演出は土井監督、そして塚本監督も。いちファンとして映像になるのがたのしみすぎます。そして! 主演は蒼井優さん。蒼井さんへの想いはいつか数万字かけて語らせていただきます。中学生のときからいちばんすきな俳優さんです。写真集も持っています(照)。

ということで、今回お話しするのはドラマの裏話ではなく、リサーチしていたときに思ったことです。

毎度のことながら、未知の領域についてリサーチをすると、最終的に「人間の価値観は様々」という結論に着地する。なんで結婚した!? と思わざるを得ない人たちもいれば、何年たっても妻ちゃんが世界一すき~! みたいな人もちゃんといる。おもしろい。

結婚しなくても幸せになれるこの時代に、私は、あなたと結婚したいのです(byゼクシィ)。話題になったこのコピー。令和です。お上手。この「結婚しなくても幸せになれるこの時代」の部分、ほんとにその通り。だからこそ、結婚したいという思いを冷笑していいものにしてはいけない。

リサーチを重ねていると、恋愛や結婚、出産に焦る人を冷笑・嘲笑する場面によく出くわした。「結婚なんて良いものじゃないゾ(笑)」と語るのが既婚者の嗜みみたいな空気もよく感じた。「結婚するか? 別れるか?」みたいなテーマで結婚適齢期(死語?)のカップルを映す配信番組がSNSでバズっていたし、『ザ・ノンフィクション』で結婚相談所を訪れた人に密着した回はとても話題になっていた。どちらでも「そこまでして結婚したいのかよ(笑)」という感想が散見された。

「生方さんは結婚したくない人だよね?」と言われたことがある。否定すると、「意外」だと言われた。「結婚したほうがいいよ!」も「結婚したくないよね?」も、相手の考えを無視して投げつけた時点で同じだけデリカシーのない発言だ。

「結婚なんかしたくないんだよね」という価値観を主張する人はやや強気な態度をとり、「まだ相手がいないけどいつか結婚したいんだよね」という人は、なぜか恥ずかしそうに、照れくさそうに、申し訳なさそうにする。どちらも間違っていないのに。ただの将来の希望でしかないのに。

逆に、女性の友人がこんな経験をしていた。その子は結婚・出産の希望はなく恋人を見つけるためにマッチングアプリを使っていた。プロフィールにその旨を明記しているにも関わらず、結婚願望がある男性からイイネが付くことがあるそう。いざメッセージをしてみると「なぜ結婚したくないのか」「子供がいたら楽しいと思いませんか」などと質問されたそう。

いやいや、他あたりなよ。

当然、友人はその男性と交際することはなかった。やはり人の価値観とは様々で、女性は結婚や出産をしたいものだと信じて止まない人もいる。その友人はモテるので、「俺は結婚願望があるが、あわよくばこの子と付き合いたい……!」と思わせてしまったのかもしれない。いやいや、他あたって!!

もしくは、本当に不思議でならなかったのかもしれない。俺は結婚がしたい、どうして君は違うの?と。

結婚しなくても幸せになれるこの時代。コピーライティングセンスを皆無にしたら、結婚してもしなくてもどっちでもいい時代ってことだ。

なぜ人は、社会は、〈どっちでもいい〉を許容できないのか。多様性という言葉が流行り始めて何年もたつのに、この国では苗字は統一させ、性別は違っていないと結婚ができない。〈どっちでもいい〉が苦手な人が多い。これはこう、あれはああ、と決めてくれないと不安になってしまう。だから、自分のなかであり得ない選択や価値観と対面したとき、まず拒絶反応を示してしまう。テレビドラマが視聴者共感第一主義になっているのも、そういうことなのかもしれない。

共感性を重視し、夫婦あるあるを描くのであれば、「結婚から数年たって恋愛感情などすでに消え失せ、離婚する理由もないから一緒に暮らしているだけ」みたいなところを突くべきかもしれない。なんだけど、どうしても設定に“あるある”を使うことにおもしろさを見出せなかった。細かい会話の温度感には“あるある”を意識しているが、主人公の女性は結婚から数年たっても恋愛感情のままに夫が大好きという設定にしてある。特殊なのかもしれない。

結婚したら恋心なんて~という意見は当然あるだろうけど、それでいいと思った。何年たっても妻ちゃんが世界一すき~!が案外いることのほうが、共感性よりも「おもしろい」と思ってしまった。

これは共感しなくていいドラマなんだ!と、ご自身と画面の間に現実を隔てるフィルターを挟んだうえでご鑑賞いただけますと幸いです。

生方美久(うぶかたみく)
1993年、群馬県出身。大学卒業後、医療機関で助産師、看護師として働きながら、2018年春ごろから独学で脚本を執筆。’23年10月期の連続ドラマ「いちばんすきな花」、’24年7月期の連続ドラマ「海のはじまり」全話脚本を担当。そして’26年7月からTBS金曜ドラマ『Tシャツが乾くまで』がスタート。

TEXT=生方美久

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