漢方薬を試したいと思っても、どうやって選べばいいかわからない…そんな方のために、今回は漢方薬の種類と選び方のポイントについて解説していきます。(漢方専門家/わたし漢方 さっち先生)
漢方薬の原料は?
漢方薬は数種類の生薬(しょうやく)からできています。
生薬とは、体質の改善や症状の緩和に効果が期待できる、自然界に存在する植物や鉱物といった産物に乾燥などの加工を施したもので、日本で常用されているものだけで約200種類も存在します。生薬は自然由来なので、野菜や果物などと同じように育った土地の気候や土壌の栄養、栽培方法などによって品質に大きな差が出ます。
生薬の一例
・大棗(タイソウ:ナツメの実を乾燥させたもの)
・麻黄(マオウ:麻黄の茎を乾燥させたもの)
・桂皮(ケイヒ:桂の樹皮を乾燥させたもの)
・葛根(カッコン:クズの根を乾燥させたもの)
・当帰(トウキ:当帰の根を湯通しして乾燥させたもの)など
生薬と漢方薬の違いは?
生薬を原料とし、それらを組み合わせて飲みやすいように形成したものが漢方薬です。いま私たちの身近にある漢方薬は長い歴史の中で日本人の身体や日本の気候に合わせて作り上げられてきました。たくさんの種類の生薬があり、この組み合わせの違いによってさまざまな効果を持つ漢方薬が作られます。
粉、煎じ薬、錠剤…おすすめは?
漢方薬は同じ名前でも粉や錠剤など形状が異なり、それぞれにメリット・デメリットがあります。期待したい効果やライフスタイルなどに合わせたものを選ぶのがおすすめです。
粉
香りや吸収効率の良さと手軽さのバランスが取れた形状です。ドラッグストアや通販などで販売されている種類も多く、医療施設等で処方されるものはほとんどがこの形状にあたります。
・散剤…乾燥させた生薬を粉末にしたもの
・エキス製剤…煎じ薬を煮詰めて顆粒にしたもの
煎じ薬
漢方薬の原料である生薬を煮出したもので、お茶のように飲用します。湯剤とも呼ばれ、生薬の力を最も引き出すことができる古来の姿に近い形状です。
処方によっては数十分から1時間程度煮出す必要があり、サッと飲みたい方には面倒であったり、香りや匂いも強めなので飲み慣れていないと苦手と感じる方も多いようです。
錠剤
手軽さに特化した形状で、粉薬が飲めないという方も服用できます。粉や煎じ薬と比べると種類が少なく、効果のひとつである味や香りなどは無いに等しいので、効き目としてはやや劣るとされています。
漢方薬局、市販、医師による処方…おすすめは?
漢方薬を購入する場所と聞くと、一番にイメージされるのはどこでしょうか? 漢方薬局の看板を目にしたことがあるという方だけでなく、ドラッグストアなどで手に入る市販のものや医療施設での処方をイメージする方も多いかもしれません。
漢方薬局
漢方薬局ではお悩みの自覚症状、顔色、話し方、舌の様子、普段の生活など様々な目線から体質を判断し、その方に合った処方を考えていきます。市販や保険適用のものと比べて種類も豊富で、より自分に合った漢方薬を見つけることができます。
同じ名前の漢方薬は、基本的に同じ生薬の組み合わせから作られていますが、自然由来の生薬は産地や季節によって含有成分が異なるため、効果の程度に違いが出ます。天然資源からできている生薬は保険適用にならないものもあるため、より品質の高いものを選びたい場合はやはり漢方を専門に取り扱っているところに相談するのがおすすめです。
ただ、どうしてもその分コストはかかります。一般的な漢方薬局では月に数万円程度かかるとされており、処方の内容によって金額が変わることもあります。近場に漢方薬局がなく通うこと自体が難しいという声も。
ドラッグストアや通販
最近ではドラッグストアや通販などで、手軽に購入することもできます。今すぐに体質をどうにかしたいわけではなく、急性症状に対応したい場合や常備薬として置いておきたい場合にも役立ちます。
しかし、市販のパッケージに書かれている症状はあくまで一般的な代表例でしかなく、本当にその漢方薬が自分に合っているのかどうかは手探りに近いことが多いです。
医師による処方
医師に相談したうえで保険適用で処方してもらえるので、前述の方法と比べて自己負担が最も安く済むことが多いのがメリット。特に持病等で通院している方や他の薬を飲んでいる方は飲み合わせなども重要なので、医師による処方以外の手段で漢方を手に入れる際にも必ず相談してください。
コストが抑えられる反面、保険適用の対象になっている漢方薬は限られています。
漢方薬選びのポイント
では、自分に合った漢方薬はどのようにして見つければ良いのでしょうか?
自分の体質にあっているものを使う
漢方薬は症状だけでなく体質を重視したアプローチを大事にします。パッケージに書かれている症状と自分の症状がマッチしても、体質に合っていなければうまく効果を発揮することができません。
体質はさまざまな考え方に基づいて総合的に判断されます。同じ冷え性を抱えている方でも、血流が悪くなっているタイプと水分代謝が悪くなっているタイプでは効果の出るアプローチは違ってきます。パッケージの症状や口コミだけで判断をせず、「自分の体質」にあった漢方薬を使うのが大切です。
▼あわせてチェック
飲み続けることが大事
特にお悩みが慢性的である場合には少なくとも数ヵ月の服用が必要です。漢方薬は毎日きちんと飲むことで効果を発揮します。忙しいのに毎朝煎じ薬を用意するのはなかなか難しいですよね。
服用がストレスになってしまうようでは本末転倒。1日に2回しか飲めない方は1日3回服用のタイプではなく2回のものを選ぶなど、漢方薬が自分の生活に合っているのか、習慣づけられるのかなど検討したうえではじめるのがおすすめ。
わからないなら専門家に頼ろう
安全性や高い効果を求めるのであれば自己判断で購入するのではなく、専門家のいる漢方薬局か医療機関へ相談するのがおすすめ。
漢方薬も医薬品なので、副作用がないわけではありません。正しく使えば心強い味方になってくれますが、飲み合わせやその時の体調などによっては効果が出ないだけではなく、体に良くない影響を与えてしまうこともあります。
持病がある方や体力がない方にはおすすめしない(効果が強すぎる)処方もありますし、自己判断で複数の処方を服用するのは成分が重複して副作用が出やすくなる危険も考えられます。自然由来の植物や鉱物を使っているため、食物アレルギーと同じように漢方薬の構成成分に対してアレルギーを起こすケースもあります。
飲む前の相談はもちろん、飲んでいて「いつもと違うな?」と思ったら必ず専門知識のある医師や薬剤師に相談するようにしてください。
自分に合った漢方を見つけたら
形状や購入方法など、特に便利になった世の中ではさまざまな選択肢があります。何を大切にするかは人によって違うので、最善の選択肢は異なります。自分の体質やライフスタイルに合った漢方薬の飲み方を見つけたら、早速体質改善を目指しましょう。
飲めば痩せる魔法の薬がないのと同じで、漢方薬も魔法ではありません。たとえば、冷えを改善するために漢方薬を飲んでいるのに薄着のままだったり、冷たいものをたくさん食べたり飲んだりすれば、なかなか効果は期待できません。生活習慣が乱れたままではせっかく飲んでいるお薬も無駄になってしまいます。
漢方薬を飲むことがゴールではないので、普段の生活で改善できるところがある方はひとつずつ見直して体質改善をしていきましょう!
執筆者/漢方専門家 さっち先生
LINEでいつでも相談・処方検討できる漢方薬専門店「わたし漢方」の漢方アドバイザー。「不調とともに生きる女性の毎日を快適にし、やりたいことに全力投球できる手助けがしたい」という想いをもとに、東洋医学に基づいた体質改善の秘訣や健康食の紹介、漢方を取り入れた養生法などを発信している。
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