女性医療ジャーナリストの増田美加さんによる連載。人生の基礎になる“健やかな体”を手に入れるための最新知識をお届けします。
生理の出血量(経血量)が多くて悩んでいませんか? ナプキンから漏れ出したり、ナプキンを換える頻度が多かったり・・・。でもこのくらいは正常なのか、それとも多すぎるのか、人と比べようがないので、わかりにくいと思います。また、生理(月経)の出血が多い人への救世主となっている「生理カップ」を知っていますか? 出血で悩んでいる人に「過多月経」の情報をお届けします。
正常な生理の出血量の目安は?
生理(月経)の出血(経血量)が多いと、「過多月経」の可能性があります。病気が隠れていることも考えられます。
生理の出血量は個人差が大きいですし、また同じ人でも、ホルモンの状態によって変化することもあります。今までとずっと変化がなければ、神経質になることはありませんが、今までより出血量がどんどん多くなってきたり、極端に少なくなってきた場合は、何かのサインかもしれません。
成人女性の目安は、1回の生理周期で20~140㎖くらいが平均的な出血量と言われています。量が多い生理開始1日目~3日目で、ナプキンを昼間2時間おきに換える程度であれば一般的です。
【正常な月経の目安】
月経周期日数:25日~38日
出血持続日数:3~7日間(平均5日間)
1周期の総経血量(総出血量):20~140㎖
これはあくまで目安です。子宮は、人によって大きさが違うので、量も違って当然です。経血量の異常は、生理周期や期間の異常ほど、はっきりとした定義がないのです。
過多月経かどうかチェックしてみましょう!
生理時の出血(経血量)が多くて、普段の生活に支障があるような場合を「過多月経」と言います。過多月経のおもな原因としては、ホルモン分泌の異常、子宮などの病気の可能性があります。
生理の出血量を見極めるときの目安として、気をつけるのは、まず生理の期間です。期間が長ければ、おのずと経血量も増えるわけです。
以上の項目に1つでも当てはまる症状があったら、過多月経の可能性が高いと考えられます。 婦人科を受診して相談しましょう。
経血量が急に変化した場合は、異常に気が付きやすいのですが、数年にわたって徐々にゆっくりと増加している場合は、自覚症状がないまま過ごしてしまうことがありますから注意が必要です。
過多月経だと何が怖い?
過多月経で怖いのは経血量が多いため「鉄欠乏性貧血」が起こっていることが多く、疲れやすい、めまい、立ちくらみなどの症状があります。貧血を放っておくと、体(特に心臓)に大きな負担がかかり、よくありません。また、ほかになんらかの病気が隠れていて、それが貧血の原因の場合もあります。
貧血の原因は、生理の可能性が高いことを知らない女性が3割もいる、という調査結果があります(※1)。特に、生理の出血が多い人は、要注意です。気付かないうちに貧血が進んでいる可能性があります。
貧血は、女性に多い血液の病気です。貧血では、症状がない人もいますし、めまいや疲れやすさなど、さまざまな不調が現れる人もいます。
貧血を甘くみてはいけません。実は心臓に負担がかかる怖い病気です。健康診断で貧血と言われたら、まずは医師に相談してください。
血液の成分であるヘモグロビンは、臓器へ酸素を運ぶトラックのようなもの。これが少なくなるのが貧血で、貧血になると各臓器への酸素の供給が減って、さまざまな症状が起こります。また、酸素の薄い血液で、全身に酸素を送ることになるため、心臓は心拍数を増やして、送り出す血液量を増やそうとします。そのため、心臓に負担がかかり、長い間放置すると心不全につながる恐れすらあるのです。 女性では、ヘモグロビン値がおよそ11g/dlより低値になると治療が必要と言われています。
生理の出血量が多い人は、貧血に悩んでいた!
出血量の多い過多月経症状のある女性は、貧血症状にも悩んでいるという調査もあります(※1)。
疲れやすい、体のだるさを感じる、めまいや立ちくらみ、動悸・息切れがする、頭痛や頭が重い感じがする、爪が弱い、割れやすい、脱毛、髪の毛が抜けて薄くなった、検診や人間ドックで貧血と指摘された、氷をバリバリと食べたくなる、脈が速い、味を感じにくい、料理の味が薄いと感じる・・・などの症状が貧血の人によくある症状です。
過多月経の女性は、このような貧血症状があると答えているのです。日常に潜むこのような症状、ないですか? もしあれば、貧血の可能性があります。貧血はゆっくり進行するため、体が慣れてしまい、平気で生活している女性が意外とたくさんいるのです。
貧血の相談はどこに行けばいいの?
まずは、婦人科と消化器科で相談をしてみましょう。
女性の貧血は、生理の量が多すぎること(過多月経)による貧血が約3分の1、次に消化管の出血による貧血が約5分の1といわれています(※2)。ですから、まずは婦人科を受診するのがよいのでは、といわれています。そのほかの原因としては、鉄の摂取不足、吸収障害や腎臓、血液の病気などがあります。
貧血の種類には、上記にあげた原因によって異なりますが、貧血の多くが体内の鉄が足りなくなることによって起こる「鉄欠乏性貧血」です。
婦人科を受診した場合、検査することは、子宮内膜増殖症、子宮体がん、帝王切開のあとによる過多月経、子宮筋腫、子宮内膜ポリープ、子宮腺筋症、ホルモンの異常などの有無がないかどうかを確認します。具体的には、内診や経腟超音波で診ます。
毎月、起こる生理による出血は、想像以上に多いのです。何らかの病気がなくても生理の量が多すぎて、貧血になっていないかを婦人科で調べます。
「生理の量が多いくらいで病気なの?」「少しくらい量が多いのは生理だからしかたない」と思い込んでいる人も多いかもしれません。でも、それが過多月経の症状なら、過多月経の背後には、女性特有の病気が潜んでいることが少なくありません。
もしも、過多月経なら婦人科で原因を調べて治療できます。過多月経でなければ、消化器内科を受診しましょう。
過多月経の救世主「生理カップ」って?
月経(生理)カップは、鈴のような形をしていて、タンポンと同じように腟内に挿入しておくと、生理の出血を受けて、溜めておいてくれます。ラテックス(ゴム)や医療用シリコーンなどの素材で作られています。カップに溜まった経血は、1日2〜3回程度、トイレで捨てて、月経カップは洗って繰り返し使えます。
使い捨て生理用品のナプキンやタンポンに代わり、繰り返し使える生理用品として海外ではかなり一般的。過多月経の女性の救世主となっています。使った女性たちの声には、
「以前は、おねしょシートやバスタオルを敷いたり、スパッツやパンツを重ねばきしたりして、完全防備の体制で寝ていましたが、月経(生理)カップを使うようになってから、その必要がなく快適にぐっすり眠れるようになりました」
「生理中は常に漏れないか不安で、1~2時間に1回はナプキンを替えにトイレに行く必要があったのですが、月経(生理)カップを使い出してその必要がなくなり、仕事に集中できます!」
「生理の多い日でも、白いパンツを躊躇なくはけるのがうれしい」など。
月経カップを取り替える回数は、出血量(経血量)にもよりますが、月経カップの容量が大きいものもありますので、自分に合ったものを選べます。月経カップの容量は、ブランドとサイズによって、18㎖くらい〜42㎖くらいまでとかなり幅があります。過多月経の人は、月経カップを使い慣れたころに、2つ目の月経カップとして容量の大きいカップを購入する人もいます。
ディーバカップ公式オンラインショップ
https://divacupjapan.com/
エヴァカップ公式オンラインショップ
https://integro.jp/
※1 女性のカラダと意識調査レポート(生理のミカタ)
※2 日本鉄バイオサイエンス学会(https://jbis.bio/archives/8-鉄欠乏性貧血の治療法)
※この記事は専門医チームによる監修を受けています。
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