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LIVING仕事

2024.03.24

大学生シングルマザー、アフリカで生理用ナプキン工場長になる

新しいことを始める、しかも遠いアフリカの地で。これは一人の女性が日本を離れ、思い描く夢に挑んでいるリアルストーリー。タンザニアで起業し、“生理用ナプキン工場長”となった菊池モアナさんが、現地で奮闘する日々を綴ります。【シリーズ/お仕事エッセイ

すべての命が祝福される社会をつくるために

菊池モアナ

はじめまして。アフリカのタンザニアという国で生理用ナプキン工場長をしている菊池モアナです。私は今、生理用ナプキンの製造・販売を通して、若年妊娠で退学した女の子たちが働ける場所を提供するとともに、貧困層の女の子たちに性教育と生理用ナプキンの無償配布を行なっています。

新卒2年目のときにタンザニアで立ち上げた会社の最初の事業である「LUNA sanitary products(ルナ サニタリー プロダクツ)」。月の女神の意味を持つLUNAという名前には、月明かりが優しく夜を照らすように、厳しい環境下にいる女の子たちの幸せと健康を優しく見守る存在でありたいとの想いが込められています。

満月のように満ち満ちているときもあれば、新月のようにひっそりと身を隠したくなるときもある。そんな人生を「まるごと愛していこう」というメッセージも込めてこの名前をつけました。

知りたいという気持ちに駆られ単身アフリカへ

遡ること7年前。
当時受けていた大学の授業で、「戦争や争いを解決する鍵になるのが教育である」という教えに深く共感したのを覚えています。しかし同時に、これまでSDGsなど様々な取り組みが世界中でなされているなかで、なぜ未だに学校に通えない子供がたくさん存在しているのだろうと疑問を持っていました。

菊池モアナ
調査地の子供たちと。

その原因を自分の目で見て、現地の人と直接話をするなかで知っていきたいと思い、大学を休学し単身でタンザニアの山奥の村に渡り、調査をすることにしました。調査は、何らかの事情があって退学してしまった子供たちのお家に住まわせてもらいながら、子供たちの生活環境や家族との関係性などを観察しながら行いました。

16歳でお母さんになったの女の子との出会い

学校の先生への聴き取り調査中に紹介されたある女の子との出会いが、私の人生を変えることになります。

彼女の名前はアナ(仮名)。当時16歳で、医者になりたいという夢を持つ中学2年生でした。私と彼女が出会ったのは、彼女が知人男性からのレイプにより双子の女の子を妊娠し、絶望から自殺を試みた直後でした。

菊池モアナのエッセイ
近くの池で汲んできた水で食器洗いをするアナ。

アナは幼い頃に父親を亡くし、出稼ぎに街へ行った母親は新しい旦那さんができて帰ってこなくなったため、細々と農業を営む祖母と二人暮らしをしていました。

祖母はアナの妊娠がわかると、自分では養うことができないからと、「お腹の子供の父親の実家に行きなさい」と言ったそうです。言われたとおり相手の実家に行ってみたものの、子供の父親は身を隠して遠くへ逃げてしまい、その両親からも「うちの息子の子供ではない」と追い出されてしまったと教えてくれました。

女の子たちを取り巻く過酷な現状

その後、若年妊娠の現状を詳しく調べていくなかでアナのような女の子たちが直面している、以下のような厳しい現実を知ることになりました。

1. 学生が妊娠すると、強制退学となり公立学校への復学禁止 ※2017年当時
2. 学生を妊娠させた男性は懲役30年
3. 宗教的にも法律的にも中絶禁止

このような厳しすぎる規則によって、女の子たちは中絶を選ぶこともできず、学歴も金銭支援もないシングルマザーにならざるを得ない状況に直面しています。

アナも上記の規則により、妊娠が発覚し間も無くして退学となってしまいました。身重の体で歩き回り、受け入れてくれる親戚を探しましたが、どこからも受け入れてもらうことができずに絶望から大量の薬を飲み自殺を試みました。

菊池モアナのエッセイ
アナと、アナが当時住んでいた家。

幸い一命を取り留め、その後は祖母に引き取られたといいます。涙ながらに一部始終を話してくれる彼女を目の前にして、私は言葉を無くしました。

一時的に金銭的なサポートや食料のサポートをしてあげることはできても、「彼女の人生を変えることはできない」。ーー調査をするという立場で、人の人生に立ち入らせてもらいながら、何もできなかった自分をとても不甲斐なく思い、悔しい気持ちを抱えて帰国したことを今も鮮明に覚えています。

母になるという選択

帰国後の私に、人生を変える大きな出来事が訪れます。
タンザニア人パートナーとの間に子供を授かっていることがわかり、人生最大の決断をすることになったのです。

出産をすれば、中学生のときから夢見ていた青年海外協力隊でボランティアをすることもできなくなります。大学を卒業できるのか、出産費用を貯められるのか、就職できるのか、人生どうなっていくのか、まだ大人になれていないのに子供を育てられるのだろうか…いろんな考えが頭を駆け巡りました。

菊池モアナのエッセイ
妊娠中散歩に来ていた浜辺からの景色。

「せっかく留学したのに、何のための努力だったの?」
「人生終わるよ」
「崖っぷちに向かう娘を止めないわけがない」

大切な友人や家族からは猛反対されました。

私のことを大切に思い、愛してくれているからこその言葉だと理解していましたが、命の誕生を大切な人たちに否定をされてしまうことは、人生のなかで最も辛くて、きつくて、苦しい時間でした。

自分の心に何度も何度も、どうしていきたいのか問いかけました。

「生むことを選んでも、生まないことを選んでも、どちらにせよ必ず後悔をするときは来る。どちらの後悔なら自分にとって前向きに捉えていけそうだろうか」

私は、出産をすることを選びました。
自分で決められるという選択肢があるということ自体、とても恵まれているのだと気が付きました。

優しさと愛を循環させていくために

そこから現在に至るまで、子育てと学業とお仕事の両立に悩んだり、うまくできない自分にイライラして子供に当たってしまって悔んだりする日々でしたが、本当にたくさんの人たちに助けてもらいながら、無事に大学を卒業し、国際協力の夢を追い続けることができています。

しかし、タンザニアで私が出会った女の子、アナには選択肢はありませんでした。

菊池アナのエッセイ
水汲みから帰宅するアナ。

授かった命を家族や周囲の人から祝福してもらえない孤独感を、彼女はひとりぼっちで乗り越え、学ぶことも奪われ、貧困のなかで苦しんでいました。

たくさんの人たちに助けてもらった分、次は私がアナのような志ある女の子たちをサポートしていきたいと強く思うようになり、今このお仕事をしています。このお仕事を通して、望まぬ妊娠をしてもまずは授かった命に対して「おめでとう」と、そして「大変になると思うけど一緒に頑張ろう」と言ってあげられる社会を作っていきたいと思っています。

菊池モアナのエッセイ
性教育の授業を実施した学校の生徒たちと。

この連載では、私の経験から感じたことや考えたことを織り交ぜながら、現在のお仕事についてご紹介していきます。次回から、出産後からソーシャルビジネスを起業するに至ったストーリーを詳細に書いていきたいと思います。

菊池モアナ

菊池モアナ(きくちもあな)

Borderless Tanzania Limited 代表取締役社長。1995年生まれ。神奈川県藤沢市出身の28歳。タンザニアMIXの5歳の男の子を育てる一児の母。
日本大学国際関係学部在籍中、イギリスへ留学した後、タンザニアに渡航し子供が退学する理由を調査。大学3年時に妊娠・出産、その後3年間シングルマザーを経験する。2020年に株式会社ボーダレス・ジャパンに新卒起業家入社し、再エネ供給事業、技能実習生向け日本語教育事業の立ち上げを経験。2021年にBorderless Tanzania Limitedを設立し、若年妊娠で退学したタンザニアのシングルマザーが働ける場所を作るために生理用品の製造・販売を行うLUNA sanitary productsを立ち上げた。

TEXT=菊池モアナ

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