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LIVING仕事

2021.08.20

会社を辞めることで開いた扉。「Matcha サードウェーブ」の仕掛け人

自分が主役の人生を、自分らしい働き方で歩んでいくことができたら――それこそ究極の幸せな未来かもしれません。50代で長年勤めた会社を退職し、茶会プロデューサーとしてあらたな道を歩み始めた長尾千登勢さん。人形町にできた抹茶カフェオープン秘話と、理想を形にするためのヒントを伺いました。

長尾千登勢

長年の想いが形に!ATELIER MATCHAオープン

約25年間、趣味として茶道を続け、いつか抹茶カフェをオープンさせたいと考えていた長尾千登勢さん。2021年8月、縁が重なりスペシャルなコラボレーションとともにその夢が実ることになる。

「抹茶ラテや、抹茶スイーツなど、抹茶好きな人はたくさんいても、意外とストレートの抹茶を飲んだことがない人が多くて、日ごろからもったいないと思っていました。
私がお茶をやっているので、お茶会に誘ったりしていたけれど、着物が…とか、作法がわからない…と気にされる方が多くて、行きたい!という人がたくさんいるわけでもなく、残念だなと。

仕事を辞めて、新しいことを始めるにあたって、いつか抹茶を楽しめるカフェを出したいな~と思っていたときに、この場所のオーナーから、『カフェを作ろうと思っている。長尾さん、抹茶のカフェを出したいと言っていたよね?』とお声がけいただいて、オープンする運びになりました」

やるからには、徹底的にという気持ちで、提供する抹茶にもこだわった。「美味さ、ありき。」を信条に茶の製造卸に専念し、販売は全国の茶小売店・茶道具店に任せているため、知る人ぞ知る製茶問屋でもある山政小山園とタッグを組んだ。

ATELIER MATCHA

ATELIER MATCHAで小倉山を販売。30g ¥1,500

「山政小山園さんの小倉山という抹茶が大好きで、もっと多くの人に飲んでもらいたいと思っていました。でも、山政小山園さんのお茶は茶道をしていないとなかなか飲む機会がなくて。お茶を通じて、取締役でもある小山雅由さんと知り合っていたので、カフェの話があることをお話したら、ぜひやりたいと言ってくださって、話を進めました」

江戸時代初期より自園を持ち、創業160年を誇る山政小山園。これまで茶小売店・茶道具店以外で小売販売をしてこなかったことにも、それなりのこだわりがあるはず。今回、とんとん拍子に話が進んだのは、長尾さんの熱い想いがあったからこそ。

「小山(雅由)さんはやりたい、と言ってくださっても、会社の皆さんを説得しないといけないので、口説きに行きました。今振り返っても、あなた誰?って感じだったと思います(笑)。でも、どうしても実現させたかったので、熱量だけは持って、いかに小倉山を愛しているか、20年以上飲み続けていることなどを一生懸命プレゼンしたら、『そこまで言うのだったらうちの抹茶を使っていいよ』と許可を出してくださいました」

長尾さんの熱意が伝わり、ATELIER MATCHAでは、小倉山の小売販売まで実現。

「今、飲み物としての抹茶は、甘味処で飲むというか、甘味とセットで楽しむイメージが定着していますよね。抹茶をメインにして楽しめる場所がないのです。なので、あえて今回はスイーツメインではなくドリンクメインで、飲み物としての抹茶を楽しんでもらう、というコンセプトで、店をオープンしました」

抹茶

1. MATCHAショット¥220 2. MATCHAラテ¥495 3. MATCHAグリーンティー¥330 4. MATCHAわらび餅しるこ¥748

「山政小山園さんは、日本でも有数の自社の茶園を持っている茶問屋です。そこから手摘みし、自社工場で加工まで行っているので、品質管理もしっかりとされています。どの銘柄を飲んでもそれぞれの良さがあり美味しい。小倉山は、茶道業界ではメジャーな銘柄。美味しさと価格のバランスが取れていて、あまり好き嫌いがでない、万人に愛されるようなお茶です。それもあって、メニューは小倉山を中心に開発しています。

お茶室で飲むような美味しい良い抹茶を、気軽に。会社に行く途中や、ちょっと休憩したいときなど、コーヒーを飲みにカフェに行くような感覚で親しんでもらいたいですね」

Matcha サードウェーブ、始動!

〈左〉長尾千登勢さん、〈右〉小山雅由さん

抹茶と聞いて、何を思い浮かべるかは世代によって異なるよう。
30歳前後であれば、お茶室でいただく飲み物としての抹茶、もしくはカフェやコンビニなどでよく目にする抹茶スイーツに分かれるかもしれない。

「サードウェーブという言葉は、コーヒーで聞いたことがある人も多いと思いますが、それを抹茶に置き換えてみました。

  • ファーストウェーブ…お茶室の抹茶
  • セカンドウェーブ…アイスやラテなどの抹茶スイーツ
  • サードウェーブ…本格抹茶をカジュアルに楽しむ

というイメージです。ATELIER MATCHAでは、リーズナブルで枠に囚われない抹茶メニューを、茶道の作法もなく楽しめます。ただ、吟味した上級の良い抹茶を手で立てる、というところは譲りません。

しかしながら、抹茶を手で立てるのは熟練が必要です。人によって味にムラが出しまうので、誰が作っても同じ味になるよう、電動茶筅を導入しました。

この電動茶筅があれば、自宅でも美味しい抹茶が立てられます。抹茶茶碗がなくても、マグカップで立てたってOK。抹茶って茶殻が出ないので、実はとてもエコな飲み物なんです。カフェインも多く含まれていて、朝の飲み物としてもおすすめです。コーヒーよりもカフェインの効果が長続きするので、スッキリして仕事もはかどりますよ」

電動茶筅

電動茶筅。今秋には、受注販売をスタートする予定。

幼い頃から抹茶アイスや抹茶ラテなどを目にし、“セカンドウェーブ”から抹茶を認識している世代にとって、お茶室で飲むような“本物の抹茶”は、新鮮に映るよう。
カフェのアルバイト募集では、「抹茶」という響きから、少し高めの年齢層からの応募があるかと思いきや、10代、20代の応募がほとんどだったというから驚きだ。抹茶にとても興味を持ってくれているという。日本が誇る抹茶の、新たなムーブメントに期待したい。

スケッチブック

抹茶の提供スタイルやメニュー開発は、小山さんが担当。アトリエという店名だけに、実験するようなイメージでさまざまな飲み方やメニューにトライしているそう。スケッチブックにアイデアを書き溜めて、抹茶のさらなる可能性を模索している。

行動の源は「やらずに後悔したくない」という思い

小学生頃までご両親の仕事の関係で、南アフリカのヨハネスブルグで育ったこともあり、和の世界に憧れを持っていたという長尾さん。茶道を始めたきっかけは、ある“家”の存在だった。

「日本に帰ってきてすぐ、日本文化にのめりこんでいたかというとそうでもなくて。茶道を始めたのは、就職してからです。
通勤経路にとっても素敵な和風の家があって、中に入ってみたいとずっと思っていたんです。ある日その家を見ていたら、木の看板で『裏千家教授』と書いてあることに気が付いて。そこで、裏千家に電話して聞いてみたら、先生を紹介してくださり、お稽古に通うようになったのが始まりです。素敵な先生で、ご近所だったこともあって渋皮煮を作るから来なさい、とか、お客さんが来るのに花を生けるから来たら?とお声がけいただいて。交流も楽しく、長く続けられたと思います」

長尾千登勢

海外からも注目を集めたVR茶会「茶空会 sakue 」プロジェクトのメンバーたちと。

電話をかけてみる、という行動もなかなかすぐにできるものではない。その行動力はどこからくるのだろうか。

「すべてにおいて“待っていても何も起こらない”という気持ちを持っています。裏千家に電話して、紹介できないと言われたら、インターホンを押したと思います。そのくらい、その家に入りたい気持ちになっていたので(笑)。

性格的に謙遜がないのかもしれないですが、後悔したくないという気持ちが強いですね。あのとき行っておけばよかった、あの人に会っておけばよかったって思うのが嫌で。恥ずかしい気持ちがあったとしても、トライした方が自分としては納得がいきます。
失敗したらどこがいけなかったか検証できますが、やらないと何がダメだったかもわからないですから」

思い描く未来を実現させるために

長尾千登勢
「私はライフスタイルを、ある程度自分で決めてきました。というのも、20代前半は本当に忙しくて、出張や残業でほとんど家に帰らない生活をしていて。このままだと、一生独身で、気づいたら40代になっているんだろうな、でもそれは嫌だと思って、24歳のときに決めたんです。絶対結婚したいし子供も欲しいから、20代で結婚して、35歳までに子供を産む、と。

結果、28歳で結婚して、34歳で娘を産みました。こういうふうになりたいと決めてしまうと、それに向かって行動できますよね。

例えば、27歳のときにお付き合いしている人と結婚すべきか悩むじゃないですか。でも、自分が決めたライフプランでは、このタイミングで結婚しないと35歳までに子供が産めないかもしれない。だから、まあいいか、この人が運命の人だと思おう、みたいな(笑)。そういう判断もできたりします。

自分の中のマイルストーンみたいなものを作るといいのかなと思います。10年後、20年後のありたい姿を、頭の片隅においておくだけでも違います。今の自分ではできそうにないことだっていいんです。忘れてはいけないのは、マイルストーンは人に与えられたものではなく、自分で決めること」

さらに、夢があるならばそれを周囲に話すことも大切、と語る。

「やりたいことは周囲に伝えることですね。人に話すことでつながる縁があります。

今回のATELIER MATCHAのオープンも、この場所のオーナーに抹茶カフェをやりたい、と話したのを思い出してくれてお話をいただいたのがきっかけです。もし話していなかったら、別の人に声がかかっていたかもしれない。

すぐにはつながらなくても、人をまたいでつながったり、関係性の高い人を誰かが紹介してくれたりすることもあるので、意志を伝えることはとても大事だと思います」

とはいえ、夢や想いを人に伝えることは、簡単なことではない。バカにされるのではないか、反対されるかもしれない、など考えてしまい、勇気が必要なこともある。周囲に話すのは、想いが結晶化してからの方がいい、とも長尾さんは続ける。

「周囲の反応は、熱量によっても変わると思います。自分の想いがダイヤモンドのように固く結晶化していて、熱量をもって話せたら、ほとんどの人は応援してくれるのではないでしょうか。

それに、やりたいことについて勉強したり、体験したり、一生懸命考えて話せば、たとえバカにされたとしても、傷つかないと思います。でも、その想いがダイヤモンドぐらいまで結晶化してないと、何か言われたときにボロボロになってしまう可能性はありますよね。

ごく親しい人には話していいと思いますが、それ以外の人に話すときは、気持ちが固まってから話したほうがいいかなと思います」

やりたいことが何もなければ、何かやってみる

ATELIER MATCHA内観

ATELIER MATCHA内観。

理想像はあっても、やりたいことが見つからないという悩みが多いのも事実。そんな相談をうけたとき長尾さんは、とにかく何かやってみて、とアドバイスするそう。

「なんでもいいから興味のあることを始めて、しばらくやり続けてみるといいと思います。そうすると案外つながっていくことがあります。

私も、『お茶やってるんです』というところからつながる縁も多いです。共通点があると、今度一緒に行こう、という話ができたりしますよね。

ヨガでもいいし、お料理教室でもいい。講座などもいいですね。
知り合いに、45歳くらいでソムリエ検定の講座に通い始めた人がいて。そこからジョージアワインにハマり、ジョージア人の方々と仲良くなり、コロナ前はイベントやツアーに行ったり、とても楽しそうにしています。

何かしたいけれどやりたいことがない…と思っているなら、なんでもいいからまずは1年やってみる、など決めてみましょう。すごいことをやらないと、と思うと『何も見つからない…』とまた悩んでしまうかもしれないので、手軽に始められることから。もし、それが合わなければやめればいいのです。仕事でも家庭でもない居場所、自分のサードプレイスを作ってみてください」

50代で独立し、次々に想いを形にしていく長尾さん。熱意をもって行動をすること、そしてそれを周囲に語ることが、夢を叶える近道であることを教えてくれました。まずは、興味を持っていることから何かを始めてみると、新たな扉が開くかもしれません。

長尾千登勢(ながおちとせ)
茶会プロデューサー、TZEN株式会社 代表取締役 CEO。電通でのグローバルクリエーティブ・PRディレクター及び伝統文化発信プロジェクトJapan Culture Hub代表を経て、2021年にTZEN株式会社を設立。VR茶会「茶空会」、マルチアングル能楽「すまほ能」など、日本の伝統文化を世界に発信する事業開発及びコンサルティング事業を行っている。
https://www.tzen.jp/

ATELIER MATCHA
東京都中央区日本橋人形町1-5-8
03-3667-7277
https://ateliermatcha.com/

※撮影のときのみ、マスクを外しています。

PHOTO=阿萬泰明(PEACE MONKEY)

TEXT=GINGER編集部

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