日本年金機構から、国民年金の追納の促すハガキが届いたら…? ファイナンシャルプランナーの花輪陽子先生が、最新のマネートピックスを解説する連載、今回のテーマは年金。知っているようで知らないキーワードや、複雑でも私たちの暮らしに直結している制度について、サクッと整理して学びましょう。
猶予されていた国民年金保険料の「追納」は急ぐ必要はなし。余裕のあるときでOK
先日、30代女性からこんな相談をいただきました。
「学生時代に猶予されていた国民年金保険料の追納を促すハガキが日本年金機構から届きます。“追納したほうが将来受給できる額が満額に近づく”と書いてありますが、追納額が40万円など、けっこう大きいです。これで将来もらえる年金がどれほど増えるのでしょうか? もらえるかわからない年金に追納するより投資にでも回す方がいいのでは?と疑問に思っています」
今回は、学生であった期間に猶予されていた国民年金を追納すべきかを解説します。
国民年金の保険料は毎年度見直しが行われますが、令和3年分は月額1万6,610円です。2年間分で約40万円ですね。社会人になったばかりのころに学生時代の分の追納をするには、結構な負担になるかと思います。
猶予期間が2年間(24ヵ月)の場合、将来受け取れる年金額は年間で74万1,855円となり、満額(年間78万900円)と比較して3万9,045円少なくなります。追納することで、受給できる額が満額に近づきます。また、追納分は所得控除の対象になるので、節税メリットもあります。
しかし、お金の価値は、現在と将来とでは大きく変わります。国民年金も受給開始年齢が後ろ倒しになったり、受給額自体も下がる可能性も考えると、必ずしも追納したほうがいいと言い切れるわけではありません。
実は今すぐに追納をする以外にも、将来の年金を増やす方法があることをご存知でしょうか。納付猶予を受けた期間から10年以内であれば国民年金保険料をさかのぼって納めることができます。また厚生年金に加入していない人であれば、「任意加入制度」を活用する方法もあります。これは、60歳以上65歳未満の5年間、国民年金保険料を本人の申し出で納める(ただし納付月数は累計480月まで)ことで、65歳から受給する老齢基礎年金を増加できる制度です。
コロナ禍で家計が厳しいという人もいるでしょう。国民年金保険料の追納は、無理のない範囲で、余裕のあるときに納められたら納める、という理解でよいのではないでしょうか。現在の生活を成り立たせることが最優先です。
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