今や日本人の多くが“沼ってる”韓国ドラマ。「ブームに乗り遅れた」「興味がない…」そんな人にもぜひ観てほしいイチオシドラマをプロが厳選! 今回は「韓国ドラマはもはや日常」と語る作詞家・小竹正人さんに韓ドラ愛を熱ーく語ってもらった。
涙活からハマった韓ドラ。今や役者、制作陣の本気っぷりに沼落ち。
そもそも韓国ドラマにハマったのは、年齢を重ねるごとに心が逞しくなってしまい、ちょっとやそっとでは泣けない人間になってしまったことかもしれません。涙活は最大のストレス解消と聞き「泣きてえ」と思っていたところ、当時のマネージャーから『ごめん、愛してる』(全16話)のDVDをドンと渡され、小泉今日子さんから「オダケが好きそう」と『天国の階段』(全22話)を渡された。まんまと両作品に溺れ、涙の海に溺れ、心底すっきりしたのです。
再び韓ドラ愛に拍車がかかったのは、コロナ禍の当初『愛の不時着』『梨泰院クラス』と名作が続いたこと。韓国はパルリパルリ文化といって、とてもせっかちなお国柄。私の性格と近いんです。韓国ドラマは1作品がだいたい16話と長いのですが、展開が早いから長さを感じさせない。パルリパルリ文化のドラマが、自分にすごく向いていると感じました。さらに沼落ち理由のひとつが、初回を見て「え、この顔の俳優が主役?」と違和感を覚えても、2話目を見ると「あれ、大丈夫かも」となり、5話目で猛烈に恋に落ちる…ってのが韓ドラあるある。そこからはメイキング映像を探し、俳優の名前を検索してYouTubeで経歴まで勉強してしまう恐ろしいオタク気質な自分。これはもちろん俳優本人の魅力もだが、脚本家、演出家ら製作陣のなせる技ではないだろうか…とも思ってます。
韓ドラ未経験の人は、最初に短めの作品を見てください。『ペーパー・ハウス・コリア:統一通貨を奪え』(全12話)、『39歳』(全12話)は短くて見やすい。でも許容範囲が広く、吸収力がある人には断然『私たちのブルース』(全20話)。こんな名作、久しぶりだから。今年の初め、それに加えて『結婚作詞 離婚作曲』(シーズン1~3)のシーズン3、『グリーン・マザーズ・クラブ』(全16話)や『私の解放日誌』と名ドラマが同時期に配信され「今、忙しくて…」といくつかの執筆仕事を断り、書く代わりに見ていたことを告白します。ごめんなさい。ふつうの人なら確実に仕事のモチベーションが上がる復讐劇『ヴィンチェンツォ』(全20話)を見て仕事に復帰しようと思ったけど、結果テレビにかじりついてしまった。
また忘れちゃいけないドラマの牽引役といえばイケメン。ナム・ジュヒョクの『二十五、二十一』(全16話)やソン・ガンの『わかっていても』(全10話)。このドラマでのハン・ソヒはじれったい女だなーってイライラ見ていたんだけど、その後の『マイ・ネーム:偽りと復讐』を見たら、プロ根性の鏡で、そんなちゃんと仕事に向き合っているのなら応援しますよって、すぐにインスタをフォロー。『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』(これまた最高)のパク・ウンビンとともに私の推しです。
日本と韓国は文化が似て非なる国だから、ドラマの中で文化を見るのも楽しい。まるでプチ海外旅行気分。さらに王道の財閥の御曹司と貧しい育ちの娘の恋も、描き方がぬるい少女漫画風ではなく、貧乏をとことん痛めつける。それでも惹きつける脚本力。私自身が何よりハマるのは、人情味あふれるヒューマンドラマ。素朴な地方都市を取り上げ、親の死や子供との関係の悩み、どんな家庭にも起こりうる日常のさりげない出来事を上手に描いているから、老若男女多くの人が共感し、感動するんだと思う。
『ごめん、愛してる』(全16話)
「私が書く詞が暗いせいか、マネージャーが“好きそう”と思ったみたい。たしかにとても好きでした。5年後にもう一度見てもまた号泣した」(小竹さん)
『天国の階段』(全22話)
「小泉さんに“オダケ、絶対好きだと思う”と勧められた作品。過去の韓国ドラマの鉄板である記憶喪失が話の鍵。クォン・サンウの涙も話題に」(小竹さん)
『ペーパー・ハウス・コリア:統一通貨を奪え』(全12話)
「スペインの人気ドラマのリメイク。韓国が再統一に向けての試みを始めるっていうのが、韓国ならではの展開。1シーズンが全6話という短さが初心者向け」(小竹さん)
『39歳』(全12話)
「“賢い医師生活”にも出ているチョン・ミドがとてもいい。あまり得意でない医療ものだけど、どちらかといえばヒューマンドラマ」(小竹さん)
『私たちのブルース』(全20話)
「今年配信の超名作で、初心者にもおすすめ。登場人物が丁寧に描かれ、しかもあらゆる世代とその悩みが描かれている。見るべき!」(小竹さん)
『結婚作詞 離婚作曲』(シーズン1~3)
「シーズン1のキャストが秀逸。制作陣がすごいし、韓国は脚本家が育っているな〜と感じさせるドラマ。ありえない展開になってきて、期待」(小竹さん)
『グリーン・マザーズ・クラブ』(全16話)
「韓国の受験戦争は、小学生のときから熾烈だというのをベースに、人間が抱える闇を描いている。女同士の見栄やいがみ合い、妬みが怖い」(小竹さん)
『ヴィンチェンツォ』(全20話)
「コロナ禍にイタリアでよくロケをしたなと思ったら、まさかのCG処理。すごいぞ、韓国。壮絶な復讐劇の合間にコメディ要素もあって夢中に」(小竹さん)
『二十五、二十一』(全16話)
「私自身は実生活での恋愛は卒業しましたが(笑)、GINGER世代はキュンキュンするはず。ナム・ジュヒョクが演技に開眼した作品とも言われた」(小竹さん)
『わかっていても』(全10話)
「恋愛が終わった私が、まるで現役気分で選んだ作品。ソン・ガンとハン・ソヒのじれったい恋愛にイライラしながらも、キュンとして」(小竹さん)
小竹正人(オダケマサト)
作詞家。新潟県出身。EXILE、三代目J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE、E-girls、中島美嘉、小泉今日子など、多数のメジャーアーティストに詞を提供している。著書に『空に住む』『三角のオーロラ』(ともに講談社)、『あの日、あの曲、あの人は』(幻冬舎)、『ラウンドトリップ 往復書簡(共著・片寄涼太)』(新潮社)がある。
▼韓ドラをもっと見たい!