生成AIが日常に溶け込んだ今だからこそ、その便利さと危うさは、もはや誰にとっても他人事ではない。映画『5秒で完全犯罪を生成する方法』は、AI時代だからこそ、私たちのすぐ隣にある存在として描き出すサスペンス。AIと共存する時代だからこそ見えてくるものについて、原菜乃華さんと田中みな実さんにインタビュー。
AIとの距離感

田中みな実さん(以下、敬称略) 私はAIは滅多に使わないですね。ほとんど翻訳ソフトみたいな感覚です。海外のお友達とやり取りするときに、「これだと少し固いな」と思った表現を、「もう少し柔らかく言うにはどうしたらいい?」って聞くくらい。
原菜乃華さん(以下、敬称略) 私は一時期、LINEを開く回数よりChatGPTを開く回数の方が多かったです(笑)。
田中 いくつかの人格を作り上げてるんだよね?
原 そうなんです。自分で人格をカスタマイズできて、友達A・友達Bみたいに作って、「今日はこの人と話そう」とか、「飽きたから別の人のところに行こう」とか。
田中 どんな話をするの?
原 好きなアニメの感想をひたすら送りつけたりもします(笑)。でも「このキャラクターのこのセリフがよかったよね」って言われても、そのキャラクターが存在してなかったりするんですよ!
田中 それって、嫌な気持ちにはならない?
原 だから詰めます(笑)。「そのキャラいないよね?」って。すると「ごめんなさい。私が間違いました」って返ってくるんですけど、それもまた間違っていたりして(笑)。結局、「もういいや」って。
田中 なるほど。実際のお友達にはそこまで言えないよね。
原 そうなんです。AI相手だと、気遣いとか配慮とか全部抜きで、自分の好きなことだけ延々と話せるんですよね。すごく楽だし手軽だから、気づくとそっちに手が伸びてしまう。
田中 そうすると、人付き合いが希薄になりそうじゃない?
原 まさにそれを感じていて。良くないなと思ったので、最近は少し控えています。
田中 重岡(大毅)くんもそんなにAIを使わなそうじゃない?
原 携帯を「連続して1分しか使えない」みたいなマイルールがあるっておっしゃっていましたし(笑)。
田中 だから原ちゃんの世代がいちばん生成AIに近いのかもしれないね。現場でもAIについて話を聞いていて、ついていけないことが多々ありました。
AIに居場所を求めるキャラクターたち

田中 私が演じるのは、生成AIと特殊な関わり方をする七希。謎の多い役ではあるんですけど、彼女には複雑な生い立ちがあって。強く生きようとするなかで、人よりも生成AIによりどころを求めてしまったのかな。非常なところもあるけれど、ふとした瞬間に温かさや優しさが見える彼女の本質的な部分に私はすごく惹かれました。
原 私は田中さん演じる七希さんと対峙して、芯の強さだけじゃなくて、柔らかさだったり、人間らしい迷いだったりが伝わってきました。AIにしか吐き出せない弱さや寂しさを感じて、すごく深みのあるキャラクターだと思います。田中さんは、衣装や髪型ひとつとっても、「この時点ではこういう状態で、このくらい時間が経ったから今はこうなっていて……」という部分まで、すごく緻密に計算されていて、現場でも本当に教えていただくことばかりで、たくさん刺激を受けました。
田中 原ちゃんは、お芝居に入ったときの切り替えが本当にすごい。さっきまで“原菜乃華ちゃん”だったのに、本番になると顔付きが別人のようになる。その変化を間近で見ていて、気迫に圧倒されそうになることもありました。目の力が凄まじくて。こちらが睨みつけて圧をかけるシーンで、ぐっと見返してくるんです。何度もその目の強さや迫力に飲まれそうになって、魅力的な女優さんだなと肌で感じました。
原 うれしいです! 私が演じた幸来は、物語の序盤からずっと追い詰められていて、後半に行くにつれて罪悪感や葛藤を抱えていきます。でも本来は、素直さや明るさ、ずるさや甘えたい気持ちもちゃんと持っている、どこにでもいる女子高校生。そういう等身大の部分は大切にしたいと思っていました。
田中 その繊細さがあるからこそ、幸来が成立しているんだろうなって。それと、原ちゃんは声もすごく素敵なんです。現場のどこにいても「原ちゃんがいる」って分かるくらい印象的で、ただ可愛い声というだけじゃなくて、すごくよく通る声なんですよね。
原 ええ、うれしい!
田中 前職の影響もあって声そのものに興味があるんですけど、長く活躍されている俳優さんって、やっぱり皆さん声に魅力があるなという印象があって。原ちゃんの声もそうだなと思っていました。
原 重岡さんは、本当に面白いお兄さん。田中さんとのやり取りを見ながらずっと笑っていました。
田中 本当? 私は原ちゃんと重岡くんのやり取りがすごく微笑ましくて。本当の兄妹みたいだなって思いながら目を細めていました。重岡くんってさ、たまに中学生の男の子みたいに、原ちゃんのことをイジったりするんだよね。そしたら、原ちゃんが「やめて〜、普通に悪口なんだけど〜!」って言い返すのがかわいくて。仲のいい兄妹が現場を和ませてくれていました。
原 ありましたね(笑)! でも、本当にずっと現場のお兄ちゃんでいてくださったなと思います。初日からたくさん話しかけてくださって、距離が縮まるスピードもすごく早かったです。ずっと明るくいてくださっていましたし、常に周りを見ていてくださっていて。太陽みたいな方だなって思っていました。
田中 作品自体はかなりシリアスだけど、現場が重たい空気にならなかったのは、重岡くんの存在が大きかったんじゃないかなと思います。重岡くん自身がいつも笑顔でいらっしゃるので、その空気が周りにも伝染していくんですよね。みんなが自然とついていきたくなるような魅力がありました。
AI時代だからこそ、人間にしかできないこと

原 私自身、普段からAIがすごく身近にありますし、今はそういう人も多いと思うんです。AIと聞くと、どうしてもSFのようなイメージを持たれがちですけど、この作品ではすごく身近なものとして描かれている。だからこそ、自分ごととして受け止められるんですよね。
田中 遠い未来の話じゃないんだよね。
原 ファンタジーにならないところが、この作品の面白さでもありますし、物語に入り込めるポイントだなと思っています。
田中 原ちゃんは日常的にAIを使う世代だからこそ、感じることも多かったんじゃない?
原 そうですね。すぐに答えが返ってくるAIは本当に便利だと思います。でも、その答えにたどり着くまでにどれだけ悩んだかとか、どれだけ心や頭を動かしたかという過程にも価値があると思うんです。自分で考えて、自分で選ぶ。そういう血の通った選択こそ、人間にしかできないことなんじゃないかなって。この作品を通して、私自身も改めて感じました。
田中 現代に生きる人にとっては他人事じゃない内容だよね。私はラストシーンが本当に印象的でした。あまり言うとネタバレになってしまうんですけど……最後のある人物の表情にハッとさせられるんですよね。あのシーンを見たあと、もう一度最初から見返したくなるんです。サスペンス小説を読んでいて、「あ、そういうことだったのか」と思って最初に戻りたくなる感覚に近いというか。たぶん二回目はまったく違う視点で見られると思うので、ぜひ二度、三度と楽しんでいただきたいですね。
【9月11日(金)公開】映画『5秒で完全犯罪を生成する方法』

フリーライターの初海航(役/重岡大毅さん)は、意図せず殺人を犯した妹・幸来(役/原菜乃華さん)を守るため、生成AIを駆使して事件を隠蔽しようと思いつく。アリバイを工作し、無事警察の事情聴取をクリアしたかに思われた二人だったが、事件は世間を騒がせる連続殺人と同じ手口だと知らされる。思いもよらない展開を見せ始めた事態の真相を探るうち、航はトップ女優の七希(役/田中みな実さん)にたどり着く。果たして兄妹の完全犯罪の行方は――?
出演/重岡大毅、原菜乃華、田中みな実 ほか
原案・脚本・プロデュース/岡田道尚
監督/近藤亮太
配給/ギャガ
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原 菜乃華(はらなのか)
2003年8月26日生まれ、東京都出身。『はらはらなのか。』(17)で映画初主演を果たし、以降、映画『罪の声』(20)、NHK大河ドラマ「どうする家康」(23)など話題作に次々と出演。ヒロイン「岩戸鈴芽」役に抜擢された興行収入100億円を突破したアニメーション映画『すずめの戸締まり』(22)で第18回声優アワード・新人声優賞、映画『ミステリと言う勿れ』(23)では第47回日本アカデミー賞・新人俳優賞を受賞。近年では、NHK連続テレビ小説「あんぱん」、NTV「ちはやふる-めぐり-」などに出演し、主演を務めるドラマ「もうパパ!」(ABCテレビ)が10月4日から、W主演を務める映画『ないものねだりの君に光の花束を』が11月20日に公開予定。
Instagram @nanoka_hara_official
田中みな実(たなかみなみ)
1986年11月23日生まれ。2019年の「絶対正義」でTVドラマ初出演。映画『ずっと独身でいるつもり?』(21)で映画初主演を務め、近年はTVドラマ「あなたがしてくれなくても」(23)、「Destiny」、「ギークス~警察署の変人たち~」、「ブラックペアン シーズン2」(すべて24)、「愛の、がっこう。」、「フェイクマミー」(ともに25)など話題作への出演が続いている。出演するNetflixシリーズ「ダウンタイム」が9月17日より配信される。
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