映画にドラマ…各界からラブコールが止まらない原菜乃華さんの次の舞台は、とびっきりおかしな不思議の国! 劇場アニメ『不思議の国でアリスと -Dive in Wonderland-』が8月29日(金)より公開。深く共感したという「安曇野りせ」というキャラクターや声優にかける想いをインタビュー。
あの世界的名作が現代風にアップデート!

——今作のオファーをどのような気持ちで受け止めましたか?
初めて声優にチャレンジさせていただいたのが映画『すずめの戸締まり』だったのですが、そこで改めてプロの声優さんの凄さやアフレコの難しさを肌で実感しました。「きっともう声優をやらせてもらう機会はないだろう」と思っていたので、この作品のお話をいただいたときは驚きましたし、うれしかったです。と、同時に「自分で大丈夫なのか」という不安も大きかったです。
——その不安はどう取り除きましたか?
映画『すずめの戸締まり』でお世話になった音響監督の山田(陽)さんが、今回も担当されていたのですぐに連絡しました。「私に務まるか、とにかく不安です。どんな準備をすればいいんでしょうか」と言ったら、「原さんは大丈夫でしょう」とさらっと言ってくださって、良い意味で肩の力が抜けたんです。前作で「何ができて、何ができない」みたいなところを全てを見ている山田さんがそう言ってくださったので、すごく安心しました。
——原作となるのは、世界中で親しまれている『不思議の国のアリス』。原さんはどのような印象を持っていますか?
実家にルイスキャロルさんの『不思議の国のアリス』の飛び出す絵本みたいなものがあって、小さいころからすごく好きで、何度も繰り返して読んでいた記憶があります。ちょっと不気味で、ヘンテコで、でも色彩やキャラクターがかわいらしくて予想のつかない展開に、子どもながらに惹き込まれていました。
——幼少期から慣れ親しんでいる物語に原さんが携わることになりますが、脚本を読んだときの率直な感想は?
まず、「主人公がアリスじゃないんだ!」ということに驚きました。アリスではなく、安曇野りせという新しいキャラクターが主人公と聞いて、「普通の大学生?! 絶対面白い!!」と興味を惹かれました。私が演じるりせは同年代ですし、性格的にもとっても共感しやすいキャラクターでした。

——安曇野りせは就活がうまく進まない大学生。思うようにいかない日常に悩んでいる、ポジティブとはいえないキャラクターですが、理解できる部分があったのでしょうか。
りせと私はとても似ていると思いました。劇中で「みんなと同じようにやっているのに、うまくいかないんだよね」というセリフがあるんですが、言いながら深く頷きそうになったくらい(笑)。りせはSNSに囲まれて生きているので、いろんな人の意見を目にするうちに、自分の本当に好きなものが少しずつわからなくなってしまったり自分の意見がぼやけてしまったりする感覚は「分かるな〜」と思いました。また、周りに流されやすいところや、自分に自信が持てなくて人に合わせてしまうところも、とっても共感できますね。それはきっと私だけでなく、観てくださる方にとっても共感できるポイントなんじゃないかなと思っています。
——そんなりせが感情を爆発させるシーンは必見ですよね。
あのラップシーンはぜひ観ていただきたいです! 自分を抑えて抑えてっていうりせが、明るい音楽にのせて、本音を叫ぶようにラップするところは、私もアフレコしていてすごく気持ちよかったです。
——りせの声を務めるにあたって、前回の声優の経験を今作ではどのように活かしましたか?
1から10まで、基本的なことはすべて映画『すずめの戸締まり』で教えていただいたので、その経験を存分に活用しました! ワンダーランドでアリスとりせが体を動かすシーンが多いのですが、そのときの息遣いや喋るスピードは工夫したことのひとつです。篠原(俊哉)監督には「好きに演じてください」と、音響監督の山田さんには「前作とはまた違った原さんの声が聞きたい」というふうにお話があったので、時間が許す限りトライさせていただきました。私は地声が高くて早く話すクセがあるので、りせはできるだけ低いトーンでゆっくり話すことを意識しました。

——原作をアレンジした新しい“不思議の国”が描かれますが、今作の魅力をどんなところに感じていますか?
とにかく、ワンダーランドが可愛くて魅力的で大迫力なので、絶対に劇場で見ていただきたいです。ストーリーとしても、現代風にアレンジされているのでファンタジーの世界に感情移入しやすくなっていると思います。その入り口にりせが立ってくれていることによって、観てくださる皆さんをワンダーランドの世界にグッと引き込むことができます。ほかにもタイパを意識している白うさぎやVRゴーグルをつけている三月うさぎが登場し、現代の要素が詰め込まれた令和版アリスっていうのが新しいですし、この時代に寄り添ったアレンジが面白いなと思いました。そして、ハッとするような言葉や自分を見つめ直すような気づきをたくさんくれる作品なので、お子さんはもちろん、大人の方にも楽しんでもらえる名作ができたのではと思っています。
——本作のテーマ「本当の自分に出会う旅」にちなんで、原さんが周りの方から「意外!」と言われることを教えてください。
マネージャーさんにたまに「武士」って言われます(笑)。子役からこのお仕事をしていますが、お仕事という意識が芽生えてからは、どんな作品もシーンもすごく不安で怖くて、綿密に準備をするタイプ。直前まで追い詰められて「やるしかない!」となったときの思い切りの良さを武士にたとえられているんだと思います。覚悟が決まったあとの「いざ!」という飛び込み方はキレイなのかもしれません(笑)。
——女優としてはもちろん、声優としても評価されていますが、声優というお仕事にどのようにチャレンジしていますか?
物心がつく前からこのお仕事をしていて、カメラに囲まれてたくさんの人に見られているなかのお芝居は良くも悪くもストレスを感じていたんだと、声優のお仕事を始めて気づいたんです。アフレコは、目の前に台本とモニターがあるだけで、指示も別部屋からイヤホンで届く。密室のなかで、人の目を気にせず、自分のお芝居だけにひたすら向き合うアフレコが本当に楽しくて大好きなんです。表現のニュアンスの違いに気づいて、ああでもないこうでもないと調整していく作業が、言うなれば“陶芸”みたいで。細かいところまでこだわって一枚のお皿を作っていくように、大切に積み上げられていく感覚がすごく好きです。
——声優としてさらなる魅力を開花した本作ですが、今後も追求していくのでしょうか。
私はアフレコブースの心地が良すぎて、ずっといたいくらい(笑)。何よりも大好きなアニメの現場に携われることが幸せです。技術はまだまだですが、もしまたやらせていただける機会があったら、精一杯準備をして臨めたらなと思います。
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【8月29日(金)公開】劇場アニメ『不思議の国でアリスと -Dive in Wonderland-』

声の出演/原 菜乃華 マイカ ピュ ほか
原作/『不思議の国のアリス』(ルイス・キャロル)
アニメーション制作/P.A.WORKS
配給/松竹
sh-anime.shochiku.co.jp/alice-movie
X @alice_movie2025
Instagram @alice_movie2025
原 菜乃華(はらなのか)
2003年8月26日生まれ、東京都出身。『はらはらなのか。』(17)で映画初主演を果たし、以降、映画『罪の声』(20)、NHK大河ドラマ「どうする家康」(23)など話題作に次々と出演。ヒロイン「岩戸鈴芽」役に抜擢された興行収入100億円を突破したアニメーション映画『すずめの戸締まり』(22)で第18回声優アワード・新人声優賞、映画『ミステリと言う勿れ』(23)では第47回日本アカデミー賞・新人俳優賞を受賞。現在、NHK連続テレビ小説「あんぱん」、NTV「ちはやふる-めぐり-」に出演している。
Instagram @nanoka_hara_official
