複雑でやっかいだけど、でもどこか愛おしい。そんな一家をじんわりと広がるような優しさの視点で描いた映画『架空の犬と嘘をつく猫』が、1月9日(金)より全国ロードショー。高杉真宙さんは、押し付けがましさのない誠実さで主人公・山吹を演じる。高杉さんの家族観、そして30歳を目前にした現在に迫る。
嘘で固められた歪な家族

家族の誰もが“不都合な真実”から目をそらし、それでもなお一緒に暮らしている、機能不全の羽猫家。弟を失い、空想の世界で生きるようになった母のため、 長男の山吹は弟のフリをして“嘘の手紙”を書き続ける。積み重なった噓は、愛の裏返しなのだ。
高杉真宙さんは、羽猫家をこう分析する。
「ある種の“呪い”なのか“祝福”なのか。一族であることの難しさがあると思うんです。羽猫家の両親はすれ違ってしまうんですが、子供にとって親がいなくなることは絶対ない。近くにいても遠くにいても、そして家族に対する感情がどうであれ、血のつながりがあるので、“家族”という言葉以外では表現できないと思います。山吹が物語の中心にいますが、家族のひとりひとりに背景があって、それが大きく太い軸になっていると思います」
続けて、作品を通して「どこまでいっても家族は“他人”」だと感じたという。
「冷たく聞こえるかもしれませんが、家族だからといって何もかもが分かり合えるわけではない。たとえば、原始時代にさかのぼってみても、一緒に生き残るために生活していくのが家族というコミュニティじゃないですか。多くの時間を一緒に過ごしたとしても、考え方が違うから、すごくミニマムな世界のなかで、擦り合わせていくことが大事なんだろうなと思います」

家族の“嘘”に寄り添い、みなに合わせて生きてきた小学生の山吹。中学生、専門学生になっても母に嘘の手紙を書き続ける。初恋、就職、結婚と、本作は30年にわたる山吹の人生を静かに描き出す。
「山吹は家族の心情や行動を受けていく人物。僕自身、率先して動くタイプではないので、そういう意味では共通している部分もあると思います。演じるにあたって軸にしていたことは、彼の“優しさ”の部分。これは僕の推察ですが、彼は本来そんなに優しい子じゃなかったと思うんです。幼少期の出来事に対して罪悪感を背負って生きているだけで、側からは優しく見えるかもしれないけれど、本当は“優しい”という言葉が嫌いなんじゃないかと思って演じていました」
もうひとつ、大事にしていたのは、家族との距離感。
「僕は弟がふたりいるんですが、それぞれに個性がありますし僕との関係性も違うから、絶妙に言い方が違ったりするんです。だから作品のなかでも、お母さんに対して、姉の紅ちゃんに対して、それぞれの距離感を表現するためにやり取りの“間”をうまく出せたらいいなと思っていました」

幼少期の教えが大人になった今でも指針になっている、高杉さんも身をもって感じているという。
「学校終わりに母が家にいないときは、近くの祖父母の家に行っていました。そこで言われたことは、僕のベースになっています。『挨拶は大事にするんだよ』『いただきますってちゃんと言ってるか?』と大人になった今でも言われるんですよ(笑)。だから、ご飯を食べたときに『言ってなかったな』と思うと、言い直すことも。いろんな人に見守られながら育ったので、そこでの教えは自分の性格の根底になっているなと思いますし、そういう環境にいられてすごく幸せなことだなと思います」
高杉さんは小学生で芸能界入りを果たし、中学2年生の頃に単身上京をしている。家族への想いは年々深まるばかりだ。
「離れて暮らしているけれど、家族がいるってだけで、つながりを感じますし心強いなと思うことが多々あります。頻繁には会いに行けないけれど、年に1回は必ず顔を出すようにしていますよ。一緒に住んでいたときは近すぎて見えないこともあったけれど、いまはそのありがたみをすごく感じています」
そんな高杉さんは現在29歳。大きな節目が近づいてきているのを感じている。
「振り返ると、30歳に備えて生きてきたように思います。20代半ばから『あと何年だ』と思って過ごしてきて、今年29歳を迎えたときにふと焦りを感じたんです。『いよいよ目の前に…』と思ったんですが、今は先のことを考えて不安になっても仕方ないと思えるようになりました。自分がやってきたことを信じて、1日1日を大事に過ごすほうが重要ですよね」
【1月9日(金)公開!】映画『架空の犬と嘘をつく猫』

出演/高杉真宙・伊藤万理華・深川麻衣・安田 顕・余 貴美子・柄本 明 ほか
監督/森ガキ侑大
原作/寺地はるな『架空の犬と嘘をつく猫』(中央公論新社刊)
配給/ポニーキャニオン
※2026年1月9日(金)より全国ロードショー!
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高杉真宙(たかすぎまひろ)
1996年7月4日生まれ、福岡県出身。2009年に俳優デビュー。12年には映画『カルテット!』で初主演を務める。14年『ぼんとリンちゃん』で第36回ヨコハマ映画祭最優秀新人賞、17年『散歩する侵略者』で第72回毎日映画コンクール スポニチグランプリ新人賞を受賞。近年の出演作に、NHK大河ドラマ「光る君へ」(24)、TBS日曜劇場「ザ・ロイヤルファミリー」(25)、映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-/-決戦-』(23)、『TOKYO MER~走る緊急救命室~南海ミッション』(25) 、『盤上の向日葵』(25)などがある。
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