本当は興味津々なのに、決して踏み出せない――芸人 紺野ぶるまさんの自分観察。【連載「奥歯に女が詰まってる」】
少し遅れてノノガにハマる女

最近YouTubeショートを観ていると結構な頻度で流れてくるのがガールズグループオーディション企画「NoNo girls」の切り抜き動画である。SKY-HI主催、ちゃんみな(さん付けをして業界にいます感出したいのはやまやまなのですが、一ファンとしてあえてお二方とも呼び捨てでいかせていただきます)がプロデューサーを務めたこの企画はそらもう大バズりのまま幕を閉じ、「HANA」というグループとしてもデビューして大ヒットを打ちながら半年近く経っている。
周りの人から観た方がいいと念を押されながらも、なんだかんだで「まだ観ていない」というひとも結構いるのではないかと思う。
じゃあファイナルステージだけでもみてみようかと思ったが最後、参加者のパフォーマンスに感動し結果1話から見始め、すっかり朝である。完全に沼、ファンミまで行くと決めた私なりに、「ここが面白いよ、NoNo Girls」をまとめたので、みていただきたい。きるだけ簡潔にと思ったが少し長くなってしまった。(今更感は否めないので、もう観たよ!という方にも共感していただけるように努めたい。)
1 : プロデューサーであるちゃんみながロジカル!
まずそこである。
冒頭にも書いたがこの企画をみるきっかけはちゃんみなが参加者の女の子たちを指導するYouTubeのショート動画だった。
歌やパフォーマンスをする際の喉の使い方や表情の作り方のレクチャーがめちゃくちゃわかりやすいのだ。一瞬で成長を見せる参加者を見て、歌にもダンスにも無縁な私ですらちょっと歌ったり踊ってみたくなるほどだ(爆)。
私たちが知ってる奇抜でセクシーなちゃんみなからは想像しえない姿であったと同時に、やはり根底にはわかりやすく言語化できるほど何度も同じことを練習し、血を滲むような努力があったのだと紐解かれる映像である。
(そしてオーディション企画特有の、プロデューサー以外の先生たちのキャラの強さも見どころである。厳しいが愛情たっぷりで、観ていてファンになる!)
2 : オーディション参加者がとにかく魅力的
まず募集事項が、身長体重年齢不問なのだ。
「細すぎる」とか「太すぎる」「デカすぎる」「チビすぎる」という言葉のあとに「死ぬ」という言葉が連呼され「女が死ぬ」と続く。これはちゃんみなの「NG」という歌の歌詞に出てくる。「デカすぎる」とよく言われる私も大好きな歌詞である。
ちゃんみな自身が見た目や体型ではじかれるなど「ルッキズムと戦ってきた」と各メディアで語っているが、参加者たちもまた実力をつけ、地道な努力をしてもどこかで落とされデビューできずにいたと語る。
言葉どおり、歌やダンスがすでにだいぶ仕上がっているのに、どこか自信がなさそうなのだ。
オーディションのステージの際、どんなに良いパフォーマンスをしても結果発表の時には「また落とされるのではないか、自分は真っ当な評価をされるような人生ではない」と言わんばかりにビクビクと怯えている。
このオーディションを通してちゃんみなの言葉で次第に自信を取り戻し、これまでの怒りが乗った自作のリリックを披露する姿を見て、この子達の今日まではこのオーディションを受けるためだったのでは?と必然性を感じずにはいられないのだ。
いくら努力をしても足りない気がするのが「NO」と言われても負けなかった人間の強みである。
毎回「ええ! こんな歌い方みたことねえ! こんな体の動きあったんだ!」と知らなかった「かっこいい」を教えてくれる。
3 : 掲げてるポリシーが誰もが救われるものである!
順番が前後してしまったが、そもそもちゃんみなが掲げたNo No Girlsの企画のポリシーとしてあげた「3つのNo」に啓発されずにはいられない。
まずは「No FAKE(本物であれ)」
「No LAZE(誰よりも一生懸命であれ)」
そして「No HATE(自分に中指を立てるな)」だ。
オーディション中、参加者が周りのと自分を比べて私は無理かもしれないと自信をなくす場面があった。ちゃんみなは「やってきたこと、乗り越えたことを讃えてほしい、中指を立てちゃだめ、過去の自分に」と伝えたが、これは歌やダンス関係なく一度でも努力をしたことがある人間なら誰しも刺さるものかと思う。
それでいて個性を追い求める参加者には「自由なことをするには型にはまらなければいけないことがある。自分の表現を取るなら死ぬほど頑張ってズバ抜けなければ認めてもらえない」と基本の大事さも説くのだから、観ているこちらも姿勢を正す次第である。
4 : ちゃんみなが参加者たちに「ちゃんみな」を超えることを許している!
ファイナルのパフォーマンスはとんでもないことになっている。終わった後にちゃんみながはっきりと「みんな私のことを超えていた」と語っていた。
が、そうだろうか。素人の私に細かいことはわからないが、誰かがちゃんみなを超えるということは実際のところはないように思う。
このオーディションでは、人間の美しさとは、人の数だけあるというのが軸になっているかのように思う。だから既存の表現などは一切評価されない。横にいる人と比べる他人軸ではなく、自分軸をいかに縦に伸ばせるかが求められていた。「この見た目が正解で、私を表現をするために生まれてきた」という領域に達したものからでる美しさや表現は、誰かと比べようがないのだ。それを知っているちゃんみなだからこそ、彼女たちの本質を引き出し成功に導けたのだと思う。
最後に
「No」と言われても負けなかった人とかけまして
今回のオーディション企画と解きます。
その心はどちらも何度も再生するでしょう。
紺野ぶるま(こんのぶるま)
1986年9月30日生まれ。松竹芸能所属。著書に『下ネタ論』『「中退女子」の生き方 腐った蜜柑が芸人になった話』『特等席とトマトと満月と』がある。
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