本当は興味津々なのに、決して踏み出せない――芸人 紺野ぶるまさんの自分観察。【連載「奥歯に女が詰まってる」】
夢の国で自分の癖に気づく女

先日2年ぶりに夢の国に行ってきた。
インパというやつである。
もともとかなり疎い私だが、プリンセスになりたいという三歳の我が子を楽しませたいと思い立ったのだ。
最近のシステムはすごい。
200分待ちのアトラクションでも一人二千円前後払えば待ち時間なしで乗れてしまう。
チケット代を払ってるのにまだ金取るんかい!という感情は否めないが、10分待ちですら危ういプリンセスを連れて行くのだからありがたい気持ちが勝る。
フードも同様、モバイルオーダーをすればその時間にすぐに受け取ることができる。
腰の重い私はどうせしばらく行かないのだからとことん楽しみたい。
前日の夜中までYouTubeでアプリの使い方と周り方を一から勉強した。
開演少し前から並んだのに人気の有料パスは売り切れてしまったが予習した甲斐あって、その後キャンセル待ちなるものを取れ、目当てのアトラクションはすべて乗ることに成功した。ショーも有料席をゲットし、人気のレストランで期間限定のフードも食べれた。
にわかにしては信じられないくらい無駄のない動きができた。
が、問題は気分が上がりきらなかっったことである。私は終始イライラしていたのだ。
もちろん随所で感動して涙をするシーンもあったが、あまりにやることが多くて忙しすぎた。
この焦燥感が嫌だから、インドア派と言っても過言ではない。
ここを楽しめる人と私とで何が違うのだろう。
それは無事家に帰り安心感もひとしお、「次はいつ行けるかなあ」と考えたときに気がついた。
「またすぐ行けばいいじゃないか」と。
楽しそうにしていた人たちの限定のカチューシャや小慣れたぬいぐるみの持ち方を思い出した。きっと年に何度も来ているのである。
「しばらく来ないから」という前提は楽しみを半減させるのだ。
向こう数年はこれらの景色を拝めないという虚しさと、やり残したことがあるのではないかという焦りが物事をつまらなくさせる。
楽しみきるぞというプレッシャーがストレスなのである。
なんだって、そうなのかもしれない。
好きな人に会うときや大事な仕事だって、「こんな機会は二度とないかもしれない」という気合いはとても疲れる。
全部話しておかなくちゃ、自分の力を出し切らなくちゃと空回りさせる。
もう大人なのだからいつだって「無理して今日全部やっちゃわなくても」という余裕と、ためらわずに限定のカチューシャを買う経済力を身につけておきたい。
最後に
子連れのテーマパークとかけまして
山登りと解きます
その心はどちらも
三歳(山菜)は無料でしょう。
紺野ぶるま(こんのぶるま)
1986年9月30日生まれ。松竹芸能所属。著書に『下ネタ論』『「中退女子」の生き方 腐った蜜柑が芸人になった話』『特等席とトマトと満月と』がある。
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