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TIMELESSPERSON

2023.11.09

生方美久がだいすきな脚本家の話。好きなドラマを突き詰めると…

令和の清少納言を目指すべく、独り言のようなエッセイを脚本家・生方美久さんがお届け。生方さんが紡ぐ文章のあたたかさに酔いしれて。【脚本家・生方美久のぽかぽかひとりごと】

写真協力/Yuri Iwatsuki

どうしようもなくテレビドラマと関わっていたい

すきな人の話をします。脚本家の木皿泉さん。すき。今回は、木皿泉さんがすきだ! というだけのエッセイです。

木皿泉さんは、和泉務さんと妻鹿年季子さんの二人による夫婦脚本家です。連ドラに単発ドラマ、アニメ映画の脚本も手掛けています。エッセイ集も出版されています。おもしろい。だいすき。今書いているコレをエッセイと呼ぶのがおこがましいほどおもしろい。だいすき。

お恥ずかしい話、でもほんとの話なので正直に言うと、わたしは木皿泉さんの存在を、脚本家を目指していくらか経ってから知った。まだ観たことのない名作連ドラを観ておこう、と思って『すいか』を観たのがきっかけだった。『すいか』が放送されたのは2003年7月期。10歳の夏。小4の夏休み。調べたところ、同クールで『WATER BOYS』や『Dr.コトー診療所』などが放送されていた。こういうの調べるの、ほんとたのしい。ドラマオタクがいちばん興奮する瞬間。さすがに小4女児は『すいか』を観ていなかった。20代後半の脚本家志望のわたしが初めて観た『すいか』の感想は「書きたいもの書かれちゃってる!」だった。なんとまぁ生意気な。でもほんとにそう思った。こういうのがつくりたいんだよ、と思って、ちょっと泣いた。脚本家を調べて、木皿泉さんの存在を知った。そして衝撃は続く。『野ブタ。をプロデュース』『セクシーボイス アンド ロボ』『Q10』……学生時代にだいすきでたいせつにしてきたドラマばかり。小6で『野ブタ』、中2で『セクロボ』、高2で『Q10』をリアルタイムで観ていて、その後もこの3作は何度も繰り返し観ていた。今思えば、いやいや脚本家さん確認しろや……と思うのだが、そのくらいドラマに夢中だったんだと思う。そういうことにしておく。

すきとかきらいとかに、理由はないと思ってる。感情だから感覚でいいと思ってる。でも、すきの理由を見つけるのはたのしい。(きらいはたのしくない)。なんでこんなに木皿泉さんのドラマに惹かれるのか、考えてみた。

ワンシーンに込める情報量が秀逸とか、自然な流れなのに思いもよらない結末に辿りつく構成とか、分析じみたことはいくらでも言えるけど、やっぱり突き詰めるところ「セリフとキャラがすき」だった。やっぱりドラマはセリフとキャラだよ。スマホをチラ見したって、ソファにコロコロかけながらだって、思わずテレビに視線を持ってかれるようなセリフがあって、そのまま目が離せなくなるキャラがいれば、愛されるドラマは生まれる、と、信じたい。

『セクシーボイス アンド ロボ』の一話で、とある人物が死んでしまう。主人公の中学生・ニコは「私のせいで」と自分を責める。もちろん彼女が直接殺したわけではない。ただ、彼女の行動が結果としてこの人物の死へ繋がってしまった。人の死を目の前に自分を責める中学生の少女。普通のドラマだったら、「あなたのせいじゃないわ」とか「あの人のぶんも強く生きるのよ」とかそんな励ましの言葉が続く。でもこのドラマは「そうよ」と。「あなたのせいで死んだのよ」と大人が少女に向けてはっきりと言うのだ。そして、「あなたはどうしようもなく、この世界と関わっているの」と。自分という個人は世界と繋がっている。だから、良くも悪くも他人に影響を与えるのだと。それはどうしようもないことだと。

言葉はなぜか、ポジティブかネガティブかで分けられてしまうことが多い。ドラマのセリフだと尚更。でもどうだろう。「あなたはどうしようもなく、この世界と関わっている」。「だからあの人は死んだ」というネガティブにも聞こえるし、「だから大丈夫。あなたは一人じゃない」というポジティブにも感じ取れる。この辺の素晴らしいセリフの変化と連なりはぜひ最終回までこのドラマを観て確かめてほしい。こういうセリフが書きたい。優しい言葉を優しく囁くのが「優しさ」ではない。

『すいか』に出てくる4人の女性はそれぞれ事情や悩みを抱えているけど、誰も特別な人ではないし、不幸のどん底のような人でもない。『野ブタ』の修二はクラスの人気者だし、『Q10』の平太はまさに平凡な高校生。『セクロボ』のニコはちょっと特殊な能力を持ってるけど中身は普通の中学生だし、ロボはオタクってだけの普通のサラリーマン。そしてみんな本気で悩む人たち。だからすきなんだと思う。みんななんかある。夢もあればトラウマもある。将来の不安もあれば、恋の悩みもある。平凡とか普通とかって言葉を使ってみたけど、平凡な人とか普通の人がほとんどの世の中でも、悩みのない人はいないってことは「なんか抱えてる人」がいちばん普通の人ってことだ。普通の人の普通の日常のなかで起きたスパイスをドラマにしてくれている。同僚が信用金庫の金を横領したり、さえないクラスメイトをプロデュースすることになったり、中学生とサラリーマンがスパイになったり、ロボットの女の子に恋をしたりする。視聴者の我々は彼らの人生を覗き見て、笑ったり泣いたり怒ったりする。彼らに会うために、また平凡で悩ましい一週間を生きようと思える。

ドラマの最後には大抵「このドラマはフィクションです」的なテロップが出る。『Q10』の最終回のそれが最高なのでぜひ観てほしい。だいすきなドラマが終わってしまうといつも寂しい気持ちになるが、『Q10』のそれを思い出すと晴れ晴れとした気持ちになる。わたしたちも、ドラマの住人たちも、みんなみんなどうしようもなく、この世界と関わっているのだ。

生方美久(うぶかたみく)
1993年、群馬県出身。大学卒業後、医療機関で助産師、看護師として働きながら、2018年春ごろから独学で脚本を執筆。’23年10月期の連続ドラマ「いちばんすきな花」の全話脚本を担当。

TEXT=生方美久

EDIT=GINGER編集部

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