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TIMELESSPERSON

2023.08.16

生方美久の親心「たくさん呼んでほしい」

令和の清少納言を目指すべく、独り言のようなエッセイを脚本家・生方美久さんがお届け。生方さんが紡ぐ文章のあたたかさに酔いしれて。【脚本家・生方美久のぽかぽかひとりごと】

写真協力/村松成美

愛する我が子に“長男”と名付けてしまう仕事

名前のことをよく考える。名前を付けるということ、名前をもらうということ、名前とともに生きていくということ。名前は誰のもので、誰のためのものなのかということ。

ドラマ『Woman』のなかで、小学生の女の子・望海が母親になぞなぞを出す。「望海のものなのに、お母さんのほうがよく使うものは何でしょう?」。このなぞなぞを思いついた娘と、自ら正解を導き出した母親。すきすぎる。正解はぜひ『Woman』をご覧ください。ほとんど答え言っちゃってる気もするけど、それはさておきドラマが最高なのでご覧ください。

子供の頃にお気に入りのぬいぐるみに名前を付けたり、ペットに名前を付けたり、学校の友達にあだ名という第二の名前を付けたり。きっと誰しも一度はそんな経験があると思う。わたしにはわんさかある。仕事でわんさか名付ける。ありがたいことにオリジナル脚本(小説や漫画などの原作のない脚本)を書かせてもらっているので、登場人物の名前は基本的に自分で自由に付けることができる。

世に出てるものはまだまだ少ない拙作たちだが、コンクールに応募するために書いていたものを合わせればこの5年で数十本ある。ちょっとめんどくさいから数えないけど、すべて合わせたら名前の付いている登場人物はすごい人数になりそう。音の響きや漢字の意味、他の登場人物からなんて呼ばれているか、子供の頃のあだ名は何か、親からはどう呼ばれるか、苗字と名前のバランスは……といろいろ考えて決めている。これしかない!と、運命みたくスコンッと音を立ててキャラクターに名前がハマることもあるし、めちゃくちゃ悩み抜いて最終的に姓名判断まですることもある。どちらにせよ名前を付ける作業はとてもすき。ドラマや映画の“登場人物”から、“生きている人”になる瞬間だと思うからすき。

とか言っといてアレなのだけど、名前のない登場人物というのもいる。セリフがあったとしてもワンシーンのみの店員とか歩行者とかクラスメートとかだと名前を付けないことがある。名前が必要ないからわざわざ付けない。それだけのことなんだけど、いざできあがったドラマを観たとき、なんともいえない申し訳ない気持ちになった。俳優さんが役を演じている。その世界の人として存在している。なのに、脚本のセリフの鍵括弧の上に書かれている名前が【店員】や【歩行者A】だったりする。出生届を出し忘れた気持ち。我が子に「長男くん、ミルクの時間だよ~」って言ってる感じ。親としての不甲斐なさ。

自分で生み出したキャラクターは、自分の子供みたいな感覚がある。嫌なセリフをあえて言わせたり、悪い態度をあえてとらせたり、物語をつくるうえでそんなことが当たり前にあるんだけど、どこかで「ごめん……ほんとは君が良い子だってこと、お母さんはわかってるから……」みたいなことを思ってしまう。自分でもちょっと気持ち悪いなと思う。ドラマの感想で「××のあの発言はひどい!」とか見ちゃうと、「××ちゃんは悪くない! 言わせたわたしが悪い! いじめないで!」というおかしなテンションになってしまう。やっぱりちょっと気持ち悪い。

その感覚を加速させているのは、やっぱり名前を付けているからなんだと思う。助産師をしていた頃、お腹の子や生まれたてほやほやの子の名前について語ってくれる妊産婦さんの顔はみんな朗らかだった。周りで妊娠や出産の知らせがあれば「名前決めた?」の話になるし、まだ悩んでるの顔も、ようやく決めたの顔も、どれも隠しようがないほど幸せそうなのだ。

一生で一番多く書くのは自分の名前だと、どこかで聞いたことがある。たしかに、と思う。でも、自分の名前を口にする回数より、呼ばれる回数のほうが絶対に多い。「はじめまして。生方美久です」というのは、はじめましての人に一度言うだけだが、その後その人に会うたび最低でも一回は「生方さん」とか「美久ちゃん」とか呼ばれるわけで。その積み重ねで自分は「生方美久」になっているんだと思う。誰が最初に言い出したかもわからないような子供の頃からのあだ名も、それで呼ばれることで子供の頃の自分に戻れる感覚や親しみを感じてホッとできる瞬間があったりする。ちなみに親しい友人には「みくっぴ」と呼ばれている。かわいいので気に入ってるけど、いざ文字で打ってみると普通に恥ずかしい。でもそれも呼ばれ慣れているので、みくっぴと呼ばれるたびに「恥ずかしい!」とは思わない。みくっぴ呼びしてくる友人の前では、わたしは当たり前にみくっぴってことなんだと思う。文字面にも慣れようと思ってあえてたくさん打ってみたけど、うん、恥ずかしいのでこれくらいにしておく。

俳優さんは役名で声をかけられることがある、なんてことをよく聞く。自分の付けた名前がそんなふうになってたら嬉しい。(俳優さん自身が嫌だったら話は別だけど 笑)。そして、呼んでくれた人にお礼したい。名前は呼ばれるたびその人に馴染んでいく。その名前らしい人になったり、その人らしい名前に聞こえたりするんだと思う。脚本の中で名前のない登場人物は……そうか、呼ばれないからだ。「あら! 歩行者Aさん、お買い物?」ってセリフがあるなら名前を付けるに決まってる。そっか、呼ばれることが大事なのかもしれない。

名前は自分だけのもので、自分のためのもの。でも、自分に名前を馴染ませ、その名前で生きている実感を与えてくれるのは、名付け親以上に“名前を呼んでくれる人たち”なのかもしれない。

生方美久(うぶかたみく)
1993年、群馬県出身。大学卒業後、医療機関で助産師、看護師として働きながら、2018年春ごろから独学で脚本を執筆。2022年10月期の連続ドラマ「silent」の全話脚本を担当。

TEXT=生方美久

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