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TIMELESSPERSON

2023.09.06

「あー寒い」生方美久がカフェで仕事をする理由

令和の清少納言を目指すべく、独り言のようなエッセイを脚本家・生方美久さんがお届け。生方さんが紡ぐ文章のあたたかさに酔いしれて。【脚本家・生方美久のぽかぽかひとりごと】

写真協力/小林久井

仕事場は今日も寒くてあったかい

寒い季節になりましたね。凍える毎日です。外が暑いからそう言い聞かせて夏に打ち勝とうとしているわけではありません。店という店、すべてが寒すぎるんです。

家で仕事をするのがとにかく苦手。狭くて物が多い部屋でパソコンを開いても気が散ってまったく集中できない。なので、カフェや喫茶店、ファミレスなどでよく仕事をしている。長居してすみません。ある程度時間がたったら店を変えたり、追加注文したり、席が埋まってきたらお店を出るようにしています。だから今後も使わせてください。お願いします。そんなわたしにツラい季節になったのです。夏です。夏と聞いてなにを連想しますか? 海ですか? スイカですか? わたしは冷房です。夏は冷房で風邪をひく季節。

このエッセイも第6回。半年。あっという間。これまでそれなりに脚本家っぽいこと書いてきたと思ってる。でも今回は、カフェで「次のエッセイなに書こうかなー。寒いなー。良い題材ないかなー。寒いなー。まだまだカッコつけてたいなー。寒いなー」ってなっちゃってもうだめだった。寒いなーだった。寒いなー。もういいやー寒いって話書こー。寒い寒い、が今です。寒い。

寒い寒いうるさいな、家で仕事しろって声が聞こえてくる。わたしもそう思ってる。ただ、単純に家だと集中力が持続しないという理由以外にも、カフェで仕事をする利点が他にもあるのです。なにより他人の話を盗み聞きできるってこと。これがほんと素晴らしい。みなさんのおしゃべりから何度もセリフが生まれました……いつも提供ありがとう。一人ひとりにお名前を聞いて“脚本協力”でクレジットを入れたいくらい。わたし自身は30代・女性・脚本家でしかないけど、作品のなかでは男子高校生とか、シングルマザーとか、男性保育士とか、女性政治家とか、自分のパーソナリティや経験では想像できない人たちを描く必要が出てくるわけで。そんなとき、たまたまカフェで出会った他人の会話はとても参考になる。見た目以外の情報がない状況で、会話の内容から「会社の先輩後輩なんだな」とか「カップルかと思ったけど姉弟か」とか「たくさんバイトして大変だね、身体大事にしてね」とか「もう離婚しなよ」とかとか。徐々に情報が浮かび上がってきて、こっちが感情移入したり突っ込んじゃうような会話。参考になる。聞いててワクワクする。

実はそれってドラマや映画の登場人物を見ているのと同じ。この超情報社会、物語のあらすじとか登場人物のキャラ設定を知ったうえで作品を観ることがほとんどだと思うけど、初対面って見た目の情報しかないからね、ふつうはね。アオサギのポスタービジュアルの情報だけで観たジブリの新作。ワクワクした。キャラクターも時代設定も展開どころかあらすじも知らずに入り込む世界。たのしかった。人生ってそうだもんね。今後の人生、あらすじも出会う人のキャラも知らずに生きていくんだもんね。

……危ない、ジブリにエッセイを乗っ取られるところだった。カフェが寒いっていう史上最高(最低?)につまらない話してたのに……さすが三鷹に森を持ってるだけある……。以前わたしは三鷹に住んでいたのに「いつでも行ける」と思って行かぬまま引っ越してしまった。離れた今はあの森が恋しくてたまらない。入口でトトロがドーンっている、あの前の通りをチャリでせっせと通勤してた。「コンクールで大賞とったよ!」とか「木10の脚本書くことになったよ!」とか、あのトトロにいつも報告してた。チャリに乗りながら。トトロ、報告遅れたけど、GINGERでエッセイを連載してるよ。

ジブリでいちばんすきなのが『となりのトトロ』で、もう何度も繰り返し観てるけど、初めて観たのがいつかはまったく覚えていない。公開時は生まれていないので、たぶん幼稚園くらいにVHSで観たんだろうな。それか金曜ロードショーかな。そんなこと考えてて気付いたけど、子供の頃ってアニメにしろ漫画にしろ、前情報なく物語を楽しむのが当たり前だった。だから子供の頃に触れたお話はあんなにワクワクしたのかもしれない。

映画『怪物』もそうだった。ありがたいことに初見が試写だったので、ネットの反応が一切ない状態で作品を体感できた。あんなに幸せなことはない。他者の意見が不要というわけではない。ネット社会だからこそ、口コミで作品の良さが広がるケースも多々ある。素晴らしいことだと思う。ただ、映画だからこそ、フィクションだからこそ、作品を観て得たものは自分だけのものであってほしい。制作者の意図よりも、頭の良さそうな文章で書かれた他人のレビューよりも、あなたが作品から感じ得たものをなにより大切にしてほしい。それが絶対にあなたの正解だから。……なんてことを、ネットでレビューを読むたびに思う。

今もカフェでこれを書いている。近くにいる男子大学生(会話から大学生だと判明!)二人組にもう一人男の子が合流した。二人掛けの席だったので、一人が「あーどうしよ。店変える?」と言ったら、横にいたお姉さんが「もう帰るのでどうぞ」と席を譲ってくれ、四人掛けの席をつくることに成功。「ありがとうございます!」と三人とも爽やかにお礼を言い、お姉さんも素敵に微笑んで帰って行った。無事三人で席に着いたのち、大学生の一人が独り言みたいに「東京、優しい人いっぱい……」と言った。あったまった。これだからカフェ仕事はやめられない。寒いけど。

生方美久(うぶかたみく)
1993年、群馬県出身。大学卒業後、医療機関で助産師、看護師として働きながら、2018年春ごろから独学で脚本を執筆。2022年10月期の連続ドラマ「silent」の全話脚本を担当。

TEXT=生方美久

EDIT=GINGER編集部

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