2022年の年末に初の人間ドックを受けてきたという田中みな実さん。その一部始終とは。【連載「田中みな実のここだけ話」】
今回のテーマ:はじめての人間ドック
クリスマスイブの朝は検尿、検便、痰の採取に始まった。
35歳を過ぎたらどこかで人間ドックに行かなければと思っていたのに、気付けば持ち越しになっていたので事務所と相談して秋ごろ病院に電話して予約をとったら、年内は12月4週目の土曜日しか空いていないとのこと。仕事のオフの確約をもらい、予定を書き込もうと手帳を開くと、ほーなるほど、クリスマスイブじゃない! 特に予定はないけど、わざわざ世の中が浮足立っているこの日でなくてもと自嘲する。「いいネタになりますね」と笑ってくれるマネージャーくんのカラッとした明るさにどこか救われて、ラジオやらインタビューで散々ネタにしたら当日を迎えるのが待ち遠しくなってきた。
それにしても、会社員でなくなってからというもの、ろくに健康診断も受けていなければ、区の検診にもタイミング的に叶わず行けずじまい。これだけ税金を払っているのに自腹を切ってドックへ行くのが少しばかり不服だが、ともかく久しぶりに自分の体を調べてもらえる機会を得られて安堵した。
学生の頃は身体測定が近づくとダイエットをして少しでも体重を軽くしようと目論んだものだけど、この歳になるとそんなことより何より健康を願う。不摂生することなく、美と健康を意識した(おそらく)模範的な生活をしている私にとって、日頃の生き方に点数をつけてもらえるのはむしろ喜ばしい。
如何せん初めてのことだらけで、心配ごとも多く、当日は早めに起きて入念に提出物を確認して向かったのだけど、病院に到着するとスイスイスイーっと何項目もの検査が流れるように済んでいった。自慢の視力は変わらず両目ともに1.5、エコーは寝てしまうほど心地よく、痛いと噂のマンモグラフィーも難なくクリアした。おっぱいが横から縦からオヤキのようにぺっしゃんこになる様子をじーっと観察する余裕っぷり。
大したことではないじゃないと呑気に最後の検査を待っていたら、やはりただでは済まなかった。ラストにこんなにも耐え難い苦痛が待ち受けていたとは。初めての胃カメラは想像の10倍つらくて嗚咽して泣いた。静脈麻酔なんかに頼らずに、その痛みを体験してみたいと周囲に語っていた自分を呪った。チョーつらい、もーやだ、二度と御免。管が出たり入ったりするたび何度も嘔吐いて、苦しくて気持ち悪くてたまらなかった。これが一瞬の我慢ではなく、5〜6分程度続くのが地獄。次のドックまでに、どうにか医学が進歩して、この管が半分くらいにならないものかと夢想しながら拷問に耐えた。
半日かかると見込んでいた検査は11時前にあっけなく終わった。長時間かかることを想定していたから予定もなく、せっかくだから近くの豊川稲荷を参拝して、とらやでお年賀に最中やら羊羹やらを買い込み帰路につく。詳しい検査結果は後日と言われたけど、「数値の異常は見られず、胃も粘膜も非常にキレイな状態で、現在わかっている範囲では、ほぼパーフェクト」との医師の診断が腑に落ちない。パーフェクトではなく、“ほぼ”…とは? どのあたりが“ほぼ”なのかをちゃんと聞けば良かった。こんなところでも負けず嫌いを発揮している私は来年ちょっとはマシなクリスマスを過ごせるだろうか。