日ごろから“言葉”についてあれこれと思いを巡らせている壇蜜さんの連載『今更言葉で、イマをサラッと』第54回目。言葉選びと言葉遣いが、深く、楽しくなる。そして役に立つお話。どうぞお楽しみください!
その54『私だったら』
言った言わないのいわゆる 「水掛け論」すら出来ない時代になったと感じる。言動の録音、撮影、記録行為は様々な手段で末永く保管することが可能となり、その気になれば素材を駆使して噓の言動を作ることも出来るようになった。フェイクニュースなんて言葉は、もうすっかり世界に馴染んでいる。噓、とまではいかないが会話や発言、動作の切り取りをされて発信者の都合良く、目立つように加工された…なんて話も業界内ではよく耳にするようになった。
インターネットの記事を見ているとタイトルと内容が微妙にズレていたり、後に全容が分かるような続報が出てくると「上手く切り取るもんだ」と苦笑いする。いや、苦笑いする内容なら良いのだが…タレントはイメージ商売でもあるから、誤解でも広がった悪評や言いがかりはなかなか払拭しにくいので恐ろしい。
タレントに限った話ではない。皆が自分の言動に責任を持ち、妙な言動を投げられた際は対応や回避や撃退をしなくてはいけない。反撃が怖くて発言、発信しないのもおかしい。それに大人になるにつれ、厄介事は増えるものだ。
愚痴や悪口、噂話、解決の糸口が見えないような相談の輪のなかには極力入りたくないのだが、つい流れに呑まれてしまうこともあるだろう。そうですよね、分かります、私もそれ聞きましたよ、なんて対応していたらネガティブ会話連盟の一員とみなされ、益々拘束され周囲から誤解される確率も上がってよろしくない。出来れば「そうなんですか」とさらりとかわしたい。そしてちょっと理由をつけて離れる。トイレが近いヤツのフリをするのも手だ。
知人からの受け売りで申し訳ないのだが、「私だったら、そうされたら~しちゃいますよ」と一例挙げるのも上手く切り上げる手段として知っていた方がいいと聞いた。「~」に入るのはあくまで私の意見、だから後々トラブルに繋がりにくいという。何なら「私なら」に繋げるのは…「泣きわめく」「怒りでシャツを破る」「現実逃避してよだれが止まらなくなる」などのちょっとオトボケな回答で「この人変…」と思わせて逃げるのはどうだろうか。知人と私のコラボレーション一案として提供しておく。
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