美容家・神崎恵さんの心の機微を綴る連載「Megumi's Mirror」。今回のテーマは「大きな買い物」。
vol.6 悔しいときほど、大きな買い物
今年の初め、2022年の始まりの思いも込めて、念願だったネックレスを作りました。
ティファニーのハートをモチーフにした、大ぶりのロケット。なんと、3人の息子が書いてくれたメッセージの刻印入り! 息子たち3人と一緒にお店へ行き、各自が入れたいメッセージを、その場で順々にiPadに書いていく。息子たちのわちゃわちゃしたやりとりを眺める、その時間も愛おしくて楽しくて。
ぷっくりとした大きな立体ハートのロケットは長めのチェーンをつけて、ちょっとアンティークのような感じにしました。ざっくりとしたニットやシンプルなトップスに合わせるなど、この冬、大活躍。息子たちの名前も入っているので、お守りのように大切に使っています。
昔から母は私に、人生の節目には、記念としてジュエリーをプレゼントしてくれました。そのせいか、ジュエリーや時計などは、私にとって単なるブランドアイテムではなく、その瞬間や思いを一緒に刻むもの。身につけるたびに、そのときの気持ちやシーンを思い出し、幸せな気持ちになるのです。
さて、ブランド品といえば、若いころは流行りのアイテムに憧れて、ちょっと高くても無理をして購入。当時みんなが持っていたバッグが欲しかったし、みんなが憧がれていた流行りのアクセサリーは、私もやっぱり欲しかった。その結果、自分自身に釣り合っていない、つまり、高価なバッグやアクセサリーや洋服に“着られちゃってる感”満載。中身が追いついていなかったんですよね。一方で、ブランドの持つ品や歴史は、若い自分に、自信や勇気をもたらしてくれていたのも事実です。
その後、欲しいと思ったら勢いとノリで、流行のアイテムを買っていた時期を経て、40代に入るとなぜか気分じゃなくなったようで、パタリとブランド熱が冷めてしまいました… 。ところが、ここ数年「やっぱり、いいものはいい!」と、ブランドアイテムへの愛と情熱がメラメラと復活しています。
ただ、昔と違うのは、その場の勢いや欲望で購入するのではなく、その手仕事の美しさやストーリーに触れ、じっくりと吟味して、“一生、一緒に歩んでいけるか”を考えてから購入しているという点。
年齢や経験を重ねたことで、やっと、ブランドの歴史や価値に負けない自分になれたというか、対等になれたような気がしています。だから今、買い物をするのがとても楽しいんです。
ちなみに、皆さんはどういうときに、いわゆる“清水買い”をしますか? 人生の節目や頑張った自分へのご褒美などでしょうか?
私はですね…、悔しいときほど大きな買い物をします(笑)。ふふふ。ちょっと変わってますでしょうか?
去年も、悔しいことがあって、「ここでへこたれるわけにはいかない! ここからまた頑張るんだ!」と、自分を奮い立たせるべく、あるブランドのそれはそれは美しい時計を“えいやっ”と清水の舞台から飛び降りる気持ちで買いました。お値段的にも自分を追い込みましたし、何より、その凛とした佇まいの時計を身につけると、パワーと勇気、前へ進むチカラをもらえます。悔しい気持ちが、美しい姿となって、私の背中を押してくれるんです。
ということで、もし私が、見かけないアイテムを身につけていたら、「さては…、神崎さん、悔しいことがあったんだな」と思ってください(笑)。
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