日ごろから“言葉”についてあれこれと思いを巡らせている壇蜜さんの連載『今更言葉で、イマをサラッと』第50回目。言葉選びと言葉遣いが、深く、楽しくなる。そして役に立つお話。どうぞお楽しみください!
その50 『またまた』
木の葉のように平たい体をしたエクアドルやコロンビアの水辺に棲む亀の名前でもあり、「またまた難儀なことがおきたものだ」のように「また」を重ねて強めた副詞としても使用されるが、感動詞としても使われる。名詞、副詞、感動詞としてさまざまな意味を持つ言葉…それが「またまた」だ。ちなみに亀のマタマタは本当に木の葉そっくりさんの形をしており、なかなかの忍びの者っぷりなので、ぜひ検索して見て欲しい。
感動詞としての「またまた」の話に戻る。相手が言ってきた謙遜や冗談をたしなめたり、「そんなこと言っても通じませんよ」とやんわり伝えるときに使うことが多いだろう。「ちっともモテないんですよ、このまま生涯ひとりかもってデイホームのパンフレットを眺めてますよ」「またまた(ご冗談を)、女の子たちがいつも噂していますよ」とか、「うちの夫は本当に頼りなくて、ちゃんと仕事してるのか心配です」「またまた(ご謙遜を)、部下の皆さんはいつも助けられているみたいですよ」とか、相手の言い放った自虐ネタや身内ネガティブネタをフォローする前のクッション材のように言えば、空気はやや緩みフォローもしやすくなるが、自虐ネタを出すときは自己完結のオチに持っていっていただくのが一番ありがたい。相手に「またまた」とフォローさせるのは気を遣わせてしまったような雰囲気になるので注意が必要だ。「モテないんですよ、あ、でも人間はからきしですけど鳥カフェではモテますね何故か」と言われた方が「何で鳥!?」と食いつきたくなる。
「またまた」は、水商売の接客や営業的な「お金が発生しそうなやりとり」に気力をすり減らしながら使うことにして、普段の暮らしでは出来るだけ封印したい。フォローするされる会話を繰り返していたらきっと疲弊する。謙遜やネガティブな冗談を言われたら、「そんなー、でもどうしてそう思うんですか?」と相手に話して貰うのも新しい交流術として提案したい。フォローより、深い話が聞けそうな予感がする。
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